第119回 「メイド・イン・ジャパン」神話の崩壊

この対談について

“生粋の商売人”倉橋純一。全国21店舗展開中の遊べるリユースショップ『万代』を始め、農機具販売事業『農家さんの味方』、オークション事業『杜の都オークション』など、次々に新しいビジネスを考え出す倉橋さんの“売り方”を探ります。

第119回 「メイド・イン・ジャパン」神話の崩壊

安田

家電や自動車など、かつては世界を席巻した日本のメーカーがどんどん海外勢に追い抜かれていますよね。ソニーのウォークマンのように、世界を変えるような製品を生み出してきた歴史があるのに、なぜこうなってしまったんだろうかと。


倉橋

うーん、難しい問題ですね。本来、日本はイノベーションの才能に溢れている国だとは思うんです。ソニーに代表されるように、研究開発が非常に得意な国民性だったはずですし。

安田

そうですよね。でも今はその力が失われてしまっている。それは研究開発にお金と時間をかけられなくなったことが原因の一つじゃないかと思うんです。大学でも論文の数が減っていて、「すぐに商売につながる研究」ばかりが求められるようになっているそうです。


倉橋

そうなんですか。儲かるか分からない未知の領域にこそ価値があるはずなのに。

安田

ええ、まさに。「お金儲けから逆算する時点で、それはもう研究ではない」と嘆く研究者の方も多い。昔は採算度外視で自分の興味をとことん突き詰められたのに、国の経済的な余裕がなくなって、そうした土壌が失われてしまったのかもしれません。


倉橋

う〜む。確かに今の日本からは、世界を代表するようなIT企業や小売業がなかなか生まれてこないですよね。非常に残念な状況だと思います。

安田

日本のアニメやゲームも、元々は一部のオタク文化から生まれたものじゃないですか。「大人が漫画を読むなんて」と世界から笑われていたものが、今や世界を代表する文化になった。作り手たちが、ただ「好き」という気持ちで突き詰めてきたからこそ、独自の文化が育まれたんだと思うんです。


倉橋

すごくわかります。それが今では、「売れるからこれを作ろう」という発想が主流になってしまったのかもしれませんね。

安田

そうそう。結果として、昔のようにワクワクするような面白い製品が生まれにくくなっている気がして。


倉橋

そうかもしれません。僕が子どもの頃は第二次ベビーブームの真っ只中で、日本中が活気に満ち溢れていて。少年ジャンプの漫画やファミコンなど、新しい遊びが次から次へと生まれるエキサイティングな時代でした。

安田

駄菓子屋なんかも、創意工夫に溢れていて面白かったですよね。当時は人口も増え続けていたので、子どもが喜ぶような面白いものを作っていればビジネスが成り立った。人口が減少するようになって、どんどんつまらなくなってしまったような気もして。


倉橋

それはあるかもしれませんね。子どもの頃、親に連れられて行ったダイエーは、今のスーパーの5倍くらいの在庫があったような気がします。それくらい、物も人も活気に溢れていた。

安田

わかります。昔のダイエーは行くだけで楽しかったですもんね。

倉橋

そうそう。でも今はどこのお店も在庫を極力持たなくなってますから。閉店間際の百貨店のお惣菜売り場のように、商品がほとんどない状態も珍しくない。

安田

確かに。品切れを恐れずに、むしろ廃棄ロスを減らすことを優先しているように見えますよね。でも爆発的に売れるヒット商品って、必ずある程度の無駄の中から生まれてくるものじゃないですか。

倉橋

ええ。売れ残りを出してはいけない、という考え方が強すぎるんでしょう。無駄を許容して挑戦できる環境が、今の日本にはないのかもしれません。

安田

この状況を打破し、かつてのお家芸だったイノベーションの力を取り戻すには、どうすればいいんでしょうね。

倉橋

うーん、難しいところですよね。人口が減少し続けている中で、多くの経営者が海外に目を向けざるを得ない現実がありますから。

安田

品質に対する意識も変わってきてますよね。「日本の製品は壊れない」という神話も、今や昔の話で。最近の日本の家電は1〜2年で壊れるという話をよく聞きますから。

倉橋

競争の中で安さを追求した結果、品質が犠牲になってしまったんでしょうね。昔は中国製や韓国製の製品は、日本製に比べて品質が劣るイメージでしたけど、今や完全に逆転してしまった。もう家電は韓国メーカーの勢いがすごいですからね。

安田

ああ、そうみたいですね。最近の若い人は皆、テレビはわざわざ韓国製を買うなんて聞いたことがありますよ。

倉橋

ええ。「韓国の冷蔵庫を一度使うともう日本の製品には戻れない」なんて言う人も増えてますから

安田

へぇ〜、冷蔵庫も。でも韓国も日本と同じく人口減少の問題を抱えているはずですけど、なぜそんなに強いんでしょう? 

倉橋

最初から世界市場をマーケットとして捉えているのは大きいと思います。韓国人ビジネスマンと日本人ビジネスマンとでは、仕事に対する覚悟が全く違いますから。東南アジアでビジネスをしていると痛感しますよ。

安田

なるほどなぁ。どこかサラリーマン的な気質が、仕事に対する甘さにつながっているのかもしれませんね。

倉橋

多くの日本の駐在員は数年で帰国することが前提ですが、韓国から来ている人たちは、皆「片道切符」で来ている。そのハングリー精神の差は大きいですよ。

安田

うーん。これはもう個人の意識だけでなく、国全体の構造的な問題という気がします。そう考えると、立て直すのは容易ではないでしょうね。

 


対談している二人

倉橋 純一(くらはし じゅんいち)
株式会社万代 代表

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株式会社万代 代表|25歳に起業→北海道・東北エリア中心に20店舗 地域密着型で展開中|日本のサブカルチャーを世界に届けるため取り組み中|Reuse × Amusement リユースとアミューズの融合が強み|変わり続ける売り場やサービスを日々改善中|「私たちの仕事、それはお客様働く人に感動を創ること」をモットーに活動中

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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