第93回 人生の豊かさを決める「余白」の作り方

この対談について

人は何のために働くのか。仕事を通じてどんな満足を求めるのか。時代の流れとともに変化する働き方、そして経営手法。その中で「従業員満足度」に着目し様々な活動を続ける従業員満足度研究所株式会社 代表の藤原 清道(ふじわら・せいどう)さんに、従業員満足度を上げるためのノウハウをお聞きします。

第93回 人生の豊かさを決める「余白」の作り方

安田

子育てをしていて感じるのは、子どもの教育って「人生の選択肢を増やしてあげるためのもの」だなぁと。ただね、選択肢が多ければ多いほどいいのかと言われると、それも違うような気がして。


藤原

ああ、仰る意味はわかる気がします。

安田

友達の数みたいなもので、もちろん友達は大事なんですけど、何百人何千人もいらないじゃないですか。


藤原

確かにそうですよね。我が子にはたくさんの可能性を与えてあげたいと思いますけど、「選択肢の数を増やすこと」自体が目的ではないわけで。

安田

そうそう。最終的に「ベストな選択肢」がいくつかあるくらいでいいんだろうなと。ただ、そのベストな選択肢を手に入れるためには、一見無駄に見えるような経験もいっぱい必要じゃないですか。


藤原

同感です。回り道に見えるような体験が、後々すごく重要になったりするんですよね。

安田

そうなんです。例えば「この友達は本当に大切だな」と感じるためには、そうじゃない人付き合いも経験する必要がある。最初から必要なものだけを選び取るのは難しいんですよね。


藤原

ええ、本当にそう思います。それに「選択する」ってけっこうパワーがかかるじゃないですか。私自身「どんな可能性もある」という風には常々考えるようにはしていますが、かといってあらゆる選択肢を眼の前にズラッと並べて「さあ、どれにしようか」みたいなことはしませんし。

安田

確かに確かに。私なんか、その日に着る洋服を選ぶだけで疲れちゃったりします(笑)。ちなみに藤原さんはそういうことありませんか?


藤原

すごくわかりますよ。だから私はある程度スタイルを決めてしまっていますね。それをずっとローテーションしているというか。

安田

ああ、私も一緒です(笑)。とはいえ新しい服を買ったりすることもあるじゃないですか。そうなるとそのローテーションが崩れてまたストレスになってしまう(笑)。藤原さんは何かルールを決めていたりするんですか? 「1着買ったら1着捨てる」みたいな。


藤原

いやぁ、それができれば理想なんでしょうけど、なかなか難しいですよね(笑)。じわじわと服が増えていって、やがてクローゼットに収まらなくなってしまう。そうなって初めて仕方なく断捨離をする、って感じです(笑)。安田さんはどうされてるんですか?

安田

私は「このクローゼットからはみ出すほど服は持たない」というルールだけ決めてまして(笑)。だから新しい服を買ってしまったときには、一番心が躍らない服を捨てるんです。仮にそれが買って半年も経っていないものでもね。


藤原

は〜、いいですね、その基準。ちなみに私も本当は、クローゼットは少しスカスカなぐらいがちょうどよくて。8割9割と埋まってくるとだんだん息苦しくなっちゃうんですよ。結果、一気に整理して無理やり「余白」を作るんですけど。

安田

ああ、その「余白」という感覚、すごくわかります。詰め込みすぎると何が入っているのかも把握できなくなりますし。


藤原

まさにそうなんですよ。奥の方にしまい込んで忘れてしまう、みたいなことが嫌なんです。そういう意味でも「見える収納」を心がけたいなぁと。

安田

あとはこんまりさんの片付け術じゃないですけど、「ときめくかどうか」も大事ですよね。最近買った高い服ほど捨てにくい、みたいな心理が働きますけど、ときめかないなら新しいものでも手放した方がいい。


藤原

本当にそうですよね。私もいらなくなった服はヤフオクで売ったりしています。

安田

へぇ、ただ捨てるわけじゃなく誰かに売るんですね。

藤原

そうそう。でも別にお金が欲しいわけでもなくて。だから私は全部1円スタートで出品するんですよ。ゴミ箱に捨てるより、誰か次に使ってくれる人がいると思うだけで、気持ちがずいぶん楽になりますから。

安田

ああ、なるほど。その考え方って、洋服だけじゃなく、ビジネスにも通じるものがありそうですね。「儲かる・儲からない」という基準ももちろん大事だけど、それだけを追求すると心が苦しくなるというか。

藤原

そうなんですよね。社員に給与を払うために当然利益は必要なんですが、会社の理念に反していたり、スタッフが疲弊してしまったりするような仕事はするべきじゃない。そういう仕事は服と同じように手放すようにしています。

安田

自分たちの価値観に合わない仕事はやらないってことですね。横柄なクライアントとは取引しない、みたいな側面もありそうですが。

藤原

まさにまさに。会社を立ち上げたばかりの頃はお金のために我慢して受けたりもしてたんですけどね。今はおかげさまで素敵なお客様ばかりになって。

安田

つまり嫌なお客さんを「捨てて」いったわけですね(笑)。ちなみにどうやって関係を終わらせるんです?

藤原

もちろんいたずらに関係性を悪くしたいわけではありませんから、「今は少し立て込んでまして」と丁寧にお断りするだけですよ。

安田

ああ、スマートですね。仕事も洋服も、そうやって整理していくのが良さそうです。

藤原

そう思います。自分にとってベストなものだけを残していくようにすれば、最終的には最適な数に落ち着くでしょうから。

安田

人生のクローゼットに適度な「余白」を作っておく、と。そうすれば、本当に価値のある新しい仕事や出会いが舞い込んでくるスペースが生まれるわけですね。

 


対談している二人

藤原 清道(ふじわら せいどう)
従業員満足度研究所株式会社 代表

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1973年京都府生まれ。旅行会社、ベンチャー企業を経て24歳で起業。2007年、自社のクレド経営を個人版にアレンジした「マイクレド」を開発、講演活動などを開始。2013年、「従業員満足度研究所」設立。「従業員満足度実践塾」や会員制メールマガジン等のサービスを展開し、企業のES(従業員満足度)向上支援を行っている。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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