第354回「焼肉という業態について」

この記事について

2011年に採用ビジネスやめた安田佳生と、2018年に採用ビジネスをやめた石塚毅による対談。なぜ二人は採用ビジネスにサヨナラしたのか。今後、採用ビジネスはどのように変化していくのか。採用を離れた人間だけが語れる、採用ビジネスの未来。

前回は 第353回「シニア層のリゾートバイト」

 第354回「焼肉という業態について」 


安田

「焼肉屋さかい」って全盛期に200店舗あったそうですが。なんと56店舗まで減っちゃったみたいです。焼肉店ってどんどん増えているイメージですけど。

石塚

いろいろありましたからね。ユッケの食中毒とか。狂牛病とか。そもそも焼肉ビジネスって難しいんですよ。

安田

焼肉ってお客さんが調理するから、うまくやれば儲かりそうですけど。

石塚

逆に言うと出店しやすいってことでしょ。競争が激しすぎますよ。

安田

なるほど。

石塚

高級店でもすごく競争が激しくて。娘がバイトしてる代々木の高級焼肉店もアルバイトがカットされてシフトに入れない。

安田

それは予約が入らないから?

石塚

そう。芸能人も来るような高級業態だけど、それでも売り上げが一定しなくて。

安田

大きなチェーン店は競争が激しそうですけど、高級店でも厳しいんですね。

石塚

個性的な店もどんどんできるじゃないですか。参入しやすいが故に競争が激烈。あとは調理器具の進化もあるし。ちょっといい肉卸店で買って自分たちで焼いた方が安い。

安田

確かに。記事にも焼肉マーケット自体が縮小しているって書いてありました。家で食べる人が増えたんでしょうね。

石塚

そうなりますよ。お店をやるなら素人じゃ手に入らないような美味しい肉の仕入れにこだわらないと。

安田

安さにこだわる店は難しいですか?

石塚

安さだけなら家でやりますよ。だからチェーン店が厳しいんです。それと焼肉屋ってバイトを集めるのが難しくて。大久保にあるコリアン系焼肉なら集まりますけど。

安田

新橋に「ふたご」という焼肉屋さんがありまして。そこは新卒が何人も入ってますよ。

石塚

ふたごさんは独自のポジショニングを作ってますから。

安田

新橋に店があるのに大阪焼肉というブランドで。でも大阪には店がなくて。

石塚

「大阪の焼肉を新橋で食べる」というコンセプトでしょうね。で、値段の割には美味しいってやつですよ。OLとサラリーマン向けですね。

安田

元気な若い子がいて焼いてくれるわけです。それがまたおじさんたちには楽しい。

石塚

楽しいでしょうね。

安田

だけど狭い上に、椅子やテーブルや食器も安物ばかりで(笑)

石塚

お店にはお金かけない戦略なんでしょう。

安田

マッコリなんてへこんだやかんで出てくるんですよ。お酒を飲む器もアルミ製の安っぽいやつで。だけどそういうのをひっくるめて楽しんでる感じ。

石塚

高級店ではない路線ですね。逆にそこで原価を落としてるんでしょう。新橋ならではのビジネスモデルですよ。

安田

今後どうですか?焼肉ってまた盛り返してきますか。

石塚

もちろん無くなりはしないと思うんです。けど競争がものすごく激しいから。次から次へと新規参入してくるじゃないですか。

安田

そうですね。

石塚

ある程度エリアと店舗数を絞って、面白いコンセプトがあればいけると思う。1人焼肉に徹底した焼肉ライクみたいな。

安田

焼肉ライクも店は狭いですよね。

石塚

そこでは勝負してないってことでしょう。だけど焼肉で勝ち抜くのは難しいんじゃないかな。

安田

焼肉って昔は行く店が決まっていましたけど。今は選択肢がいっぱいありますもんね。

石塚

美味しい店がいくらでもありますよ。その中で勝ち残らないといけない。産地の病気で一気に止まるリスクもあるし。

安田

動画を見ていると肉の仕込みも大変そうですね。筋を取ったり、脂を減らしたり。

石塚

今のご時世、食ビジネスには必ず健康って要素を入れなきゃいけないし。焼肉でヘルシーって難しいですよ。

安田

赤身肉とか、鶏の焼肉とか、そういう方向に行くでしょうね。

石塚

それもかなり増えてきたから。ふたごさんみたいに「焼いて出す」っていうひと手間をかけるとか。提供の仕方をちょっと変えないと。

安田

そうなるとまた採用の問題が出てきますよ。人件費も高くなってるし。

石塚

ちなみに安田さんは10年通ってる焼肉屋ってありますか?

安田

ないですね。

石塚

僕もそうなんですよ。移り変わりをするじゃないですか。ラーメン屋との違いはそこですよ。ラーメンは通うけど焼肉はいろいろ食べたい。やはり生き残るのは並大抵じゃない。

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石塚毅
(いしづか たけし)
1970年生まれ、新潟県出身。前職のリクルート時代は2008年度の年間MVP受賞をはじめ表彰多数。キャリア21年。
のべ6,000社2万件以上の求人担当実績を持つ求人のプロフェッショナル。

安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

 

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