読解力の正体

日本語の読解力がないと算数の問題が解けない。これが昨今の私立中学受験の傾向である。公式を覚えて解くだけの算数力は評価されなくなっているのだ。求めているのは長い文章から数式を導き出す力。すなわち抽象的な問いを具体化できる力である。とはいえ計算の速さや正確さが不要なわけではない。

正しい答えを早く導き出す力。これは変わらず求められる。だがその前にもっと重要なものが求められる。それは正しい問いを導き出す力だ。なぜなら社会で求められる能力が急激に変化しているから。社会が求める能力が変われば名門中学が求める能力も変わる。彼らの事業目的はとても明確なのだ。

私立中学が提供している価値は「社会で活躍する人材」になるための育成力である。一定レベルの私立中学までは「社会で活躍する力=有名大学に入学する力=有名大企業に就職する力」という図式で考えているだろう。だが突き抜けたトップ校はもっと普遍的な能力育成を目的としているように見える。

なぜならそのレベルの学校に通う子供達にとって「有名大学への進学」や「有名企業への就職」はできて当然の通過点だからである。そこをゴール設定しても魅力を感じられないのだ。では彼らが定義する「社会で活躍する人材」とは何か。それは「多くの人の役に立ち、社会を変えていく力」である。

当然のことながらそこには経済的な成功も含まれる。大金持ちになることが目的ではないが「お金に困るような人材」には絶対にならないという確信がある。この図式が理解できている親にとって、上位の私立中学はとても魅力的な育成機関なのである。いや、私は別に有名中学を推薦しているわけではない。

社会で成功し、目の肥えた親が選ぶ上位校。そこで求められている基本能力が読解力であるということ。ここが非常に重要なポイントなのである。現代人の多くは文字を読まなくなっている。そんな面倒なことをしなくても動画がある。AIもある。要約された「答え」だけを手っ取り早く手に入れればいい。

答えが簡単に、そして限りなく無料で手に入る時代。そこで価値を発揮するのは答えではなく問いである。問いを立てるには読解力が不可欠だ。社会という複雑で長い文章をどのように読み解いていくのか。その中からどのような法則や疑問を発見していくのか。そこに求められる読解力の正体がある。

 

 

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