このコラムについて
「担当者は売り上げや組織の変革より、社内での自分の評価を最も気にしている」「夜の世界では、配慮と遠慮の絶妙なバランスが必要」「本音でぶつかる義理と人情の営業スタイルだけでは絶対に通用しない」
設立5年にして大手企業向け研修を多数手がけるたかまり株式会社。中小企業出身者をはじめフリーランスのネットワークで構成される同社は、いかにして大手のフトコロに飛び込み、ココロをつかんでいったのか。代表の高松秀樹が、大手企業とつきあう作法を具体的なエピソードを通して伝授します。
本日のお作法/白黒になるポテチさん
カルビーさんが「ポテトチップス」や「かっぱえびせん」など主力商品のパッケージを“白黒基調へ切り替える”――そんなニュースが話題になっています。
背景にあるのは、中東情勢の緊迫化による“ナフサ不足”。印刷インクの原料となる溶剤や樹脂の供給が不安定となり、同社は“供給継続を最優先”として、パッケージの色数を減らす判断を下したようです。
通常、食品メーカーにとってパッケージは「売り場で目立つため」の重要な武器。特にスナック菓子の世界では、赤、黄、緑といった強い色彩が購買行動を左右すると言われています。だからこそ今回の“白黒化”は、一見するとかなり“大胆な決断”に見えます。
ですが、興味深いのは、こうした制約が、逆にブランドを際立たせる可能性もあることです。
店頭には、色で溢れた商品が並んでいます。その中で、もし“カルビーの商品だけ”が“急にモノトーン”になったらどうでしょう。人はむしろ、その「違和感」に目を奪われます。
広告業界では昔から、「ノイズの多い場所では、静かなものほど目立つ」と言われます。今回の白黒パッケージには、結果的にそれに近い効果が生まれるかもしれません。
同社がそれを狙ったかどうかは存じませんが、今回の本質は、サプライチェーン危機への対応です。ただ、ここに大手企業らしい強さも見えます。
多くの企業は、有事の際にも「普段通り」を守ろうとして判断が遅れます。デザイン変更は売上への影響も読みにくく、社内調整も大きい。しかし、“カルビー”は、“見た目”より“供給責任”を優先した。
これは単なるコスト対応ではなく、「ブランドとは何か」を深く考えている企業の判断にも見えます。
本来、ブランドの信頼は「いつもの色」にあるのではなく、“ちゃんと店頭に並び続けること”によって作られるからです。
さらに今回の件は、単なるパッケージ変更のニュースではなく、「日本の当たり前」を見直す出来事なのかもしれません。
日本は、世界的に見ても“便利さ”の密度が高い国です。24時間営業のコンビニ、自動販売機、過剰とも言われる包装文化。私たちは長い間、「いつでも」「綺麗に」「不足なく」を当たり前としてきました。
それは日本企業が磨き続けてきた強みでもありますが、その便利さは、大量のエネルギーや資源、そして複雑な供給網の上に成り立っています。
だからこそ、今回のように資源供給が不安定になった時、「どこまでが本当に必要なのか」を考える機会にもなります。
面白いのは、カルビーが“色を減らした”ことで、逆に存在感を増していることです。
私たちは普段、「足すこと」が価値だと思いがちです。色を増やす、情報を増やす、サービスを増やす。ですが、成熟した市場では、ときに“引き算”のほうが人の目を引く。
危機対応として始まった白黒パッケージが、「静かな強さ」を生んでいる。そこに、これからの時代の「ブランドのあり方」が少し見えている気がします。
…ところで、「白黒で愛される存在」といえば、“パンダさん”がおりますが、気づいたら日本にいなくなってしまっているのですね、、なんてことも思い出したニュースだったのであります。


















