地元国立大学を卒業後、父から引き継いだのは演歌が流れ日本人形が飾られたケーキ屋。そんなお店をいったいどのようにしてメディア取材の殺到する人気店へと変貌させたのかーー。株式会社モンテドールの代表取締役兼オーナーパティシエ・スギタマサユキさんの半生とお菓子作りにかける情熱を、安田佳生が深掘りします。
第104回 人生で味わえる「感動の総量」は決まっている?

いかにして人生の感動値を高めていくかみたいなことを考えると、「毎日あまり感動的なことをやらない」っていう逆説的な答えが出ちゃうんです(笑)。とはいえ全く感動がない日々に慣れてしまえば、それはそれで感動センサーが錆びちゃいそうですけど。

ああ、まさにそうかもしれません。だからやっぱり、普段慎ましい生活をしているところに、たまにすごい感動的な出来事が入るっていうのが、人生の感動量を最大にするための秘訣なんじゃないかと思うんですよ。

ふ〜む、なるほど。そういえば、「食べログ4.2だから絶対美味しいだろうと期待して入ったら、意外とそうでもなかった」みたいな事、ありますもんね(笑)。逆に何も期待せずに入ったお店がすごくよかったりするとめちゃくちゃ感動する。

でもそれは、逆に感動センサーが精密だということかもしれませんよ。普通の人は食べログ4.2とか値段が高いとかっていう情報だけで感動できちゃうんですから。味自体はどうでもいいというか、情報に感動しているだけ。つまり感動センサーが狂っているわけです。

ふ〜む、それでいうと僕の奥さんがすごく感動屋なんです。他の学年の子どもの運動会を見て泣いたり、犬を飼い出したら他の動物も全部かわいく思えたりと、感受性がどんどん上がっていっていく。僕なんかはそれを見て羨ましくて。何でもかんでも感動できるのってすごいなと。

女性の方が感情移入が上手というか、共感力が高いから感動の総量も多いのかもしれませんね。感動ってやっぱある意味共感ですから。一方で、「わびさび」みたいなものに感動できる感覚も持っていたいですよね。

そういうことです。昔の日本人は、虫が鳴いただけで感動したり、ススキが夕焼けに揺れてるだけで詩を詠んだりするような「儚いものに対する繊細な感性」を持っていたわけですよ。そういう情緒豊かな部分が現代では薄れちゃっている気がします。

そうなんですよ。「これは感動的だ!」っていうものを色々やっていると、感動がだだ漏れになっちゃって繊細な感動ができなくなる。想像力を持って、「なんか今生きてるって感動するな」みたいに、ありのままの小さなことに感動できる感受性が大事なんです。
対談している二人
スギタ マサユキ
株式会社モンテドール 代表取締役
1979年生まれ、広島県広島市出身。幼少期より「家業である洋菓子店を継ぐ!」と豪語していたが、一転して大学に進学することを決意。その後再び継ぐことを決め修行から戻って来るも、先代のケーキ屋を壊して新しくケーキ屋をつくってしまう。株式会社モンテドール代表取締役。現在は広島県広島市にて、洋菓子店「Harvest time 」、パン屋「sugita bakery」の二店舗を展開。オーナーパティシエとして、日々の製造や商品開発に奮闘中。
安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。


















