第117回 「老衰」は100点満点の死に方か

この対談について

人は何のために働くのか。仕事を通じてどんな満足を求めるのか。時代の流れとともに変化する働き方、そして経営手法。その中で「従業員満足度」に着目し様々な活動を続ける従業員満足度研究所株式会社 代表の藤原 清道(ふじわら・せいどう)さんに、従業員満足度を上げるためのノウハウをお聞きします。

第117回 「老衰」は100点満点の死に方か

安田

先日、落合信彦さんが84歳で亡くなられましたよね。死因が「老衰」と発表されたんですが、それを聞いて、老衰とは何なのかと改めて考えてしまいまして。


藤原

落合信彦さんといえば、我々の世代にとってはカリスマ的な存在でしたよね。84歳ですから日本人男性の平均寿命は上回っていますが、確かに「老衰」と聞くと特別な印象を受けますね。

安田

そうなんです。同じくらいの年齢で亡くなっても、肺炎とか食道癌とか病名がつくこともあるじゃないですか。でも老衰と聞くだけで「天寿を全うされたんだな」と、何かみんなで祝福するような、100点満点の死に方みたいなイメージが湧いてくる。


藤原

確かに。「病気で亡くなった」と聞くのと「老衰で亡くなった」と聞くのとでは、受け取る側の感覚が全然違いますよね。

安田

そうそう。ただ結局、老衰って特定の病名がつけられなかったというだけの話なんですよ。もし3年後に新たな病名が作られたら、落合さんも老衰じゃなくなるかもしれない。そうなると途端に「まだ若いのに」という話になるわけです。


藤原

なるほど。老衰で死ぬ人が減っていけば、その分だけ新しい病名が増えるだけだと。何歳で亡くなっても「まだまだこれからだったのに」と言われてしまう世の中になりかねませんね。

安田

そういうことです。だからもう60とか70を過ぎたら全部老衰でいいんじゃないかと思うんですよ。


藤原

以前「50を超えたらもう老衰でいい」みたいな話もしましたよね。まぁ、一般的な感覚だと50代で老衰と発表する人はまずいないでしょうし、違和感はあるかもしれませんけど、私も本質的には同感です。

安田

やっぱりそうですよね。


藤原

老いて衰退していくと書いて老衰ですから。何かしら体が衰えることでがんになったり病になったりする。わざわざ老化現象に別名をつける必要があるのかなと。白髪になったり髪が薄くなるのも正常な老化現象の一つですよね。

安田

そうなんですよ。もちろん老化とは関係ない病気もあります。30代でがんになったら治療して長生きさせてあげたいと思いますし。でも老化が原因で発生する病気って、要するにそれは「老化の一部」でしょという感じがするんです。


藤原

白髪の原因を医学的にとことん解明していったら、食べ物がとか生活習慣がとかいう人はいるんでしょうけど、それよりも「老化現象」の一言の方がずっと自然な気がしますよね。

安田

そうそう。70歳になってもポリープを先に摘み取ってがんを防ごうとか、どうにも違和感がある。20代30代なら未然に病気を防ぐ意味はわかるんですけど、老化そのものは防ぎようがないと思うんですよ。


藤原

防ぎようがないですよね。抗おうとはしますけど、結局はそれも自然現象の一部ですから。安田さんご自身は60を超えてから、その辺りの感覚が変わったんですよね。

安田

めちゃくちゃ楽になりました。50代までは理由もなく体が痛むと「何か変な病気じゃないか」と不安になっていた。でも60を超えたら「いや、だって60だもの」と思えるようになって。むしろ「自分は正常だ」と安心するんですよ。


藤原

正常な老化現象が来たんだなと安心材料になっているわけですね。それは一つの理想的な心の持ち方かもしれませんね。

安田

ええ。健康的に生きる努力は必要だと思うんですけど、病気にならない努力ってちょっと違う気がしていて。


藤原

そこは私も考えさせられるところで。正直に言うと私は検診もちゃんと受けるタイプなんです。でも父は全く逆でして。今81歳ですけど検診には一切行かない。何かあったら「お迎えが来た」という感覚で、趣味の旅行を楽しみながら緩く仕事も続けています。

安田

お医者さんは万能だと思ってる人が多いですけど、結局は人間が自分の体の機能で治ろうとするのを手助けしているに過ぎない。年をとるとその機能自体が落ちてきて、自然と死に近づいていく。これはもう自然現象だと思います。

藤原

死のうとしているわけではないけれど、ただ緩やかに衰えていく。それを受け入れるかどうかは、その人の死生観次第ということですよね。

安田

だから私は死んだ後に勝手に解剖して「死因はがんでした」みたいにするのはやめてほしい。痛みがあれば医者に行きますけど、長生きのための医療じゃなくて、痛みを取る医療でいい。希望は老衰です。頼むから老衰と発表してくれと(笑)。

藤原

なるほど(笑)。私もそれは一つの理想だと思いつつ、最近は「がんも悪くない死に方なんじゃないか」と思うようになりまして。残された寿命がある程度見えるというのが大きいんです。

安田

確かに、見通しが立つのは大きいですよね。

藤原

それともう一つ、脳にできた場合を除いて、多くのがんは末期まで頭がしっかりしているらしいんですよ。体は蝕まれて動かなくなっても、脳がクリアだから人とコミュニケーションが取れるし、頭を使う仕事は晩年まで続けられる。

安田

寿命が見えていて、最後まで頭がしっかりしている。それは確かに理想的な死に方かもしれませんね。

藤原

ええ。がんって聞くと恐ろしい敵のように思われがちですけど、自分の中ではだいぶ見え方が変わりました。

安田

要するに細胞のミスコピーですからね。70年80年コピーを続けてきたら、だんだんかすれてくるのは当然で。自然な劣化に病名をつけたような病気だという気がしますね。

 


対談している二人

藤原 清道(ふじわら せいどう)
従業員満足度研究所株式会社 代表

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1973年京都府生まれ。旅行会社、ベンチャー企業を経て24歳で起業。2007年、自社のクレド経営を個人版にアレンジした「マイクレド」を開発、講演活動などを開始。2013年、「従業員満足度研究所」設立。「従業員満足度実践塾」や会員制メールマガジン等のサービスを展開し、企業のES(従業員満足度)向上支援を行っている。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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