さよなら採用ビジネス 第120回「レイヤーをあげる方法」

この記事について

2011年に採用ビジネスやめた安田佳生と、2018年に採用ビジネスをやめた石塚毅による対談。なぜ二人は採用ビジネスにサヨナラしたのか。今後、採用ビジネスはどのように変化していくのか。採用を離れた人間だけが語れる、採用ビジネスの未来。

前回は 第119回「一流人材の活用法」

 第120回「レイヤーをあげる方法」 


安田

人材系の営業マンってたくさんいますけど、ほんとに売れる人は一握りですよね。

石塚

はい。1割くらいじゃないですか。

安田

もし石塚さんが「できるやつに育ててやってくれ」って言われたら、どんなことやりますか。

石塚

おそらく9割方の人たちは、プロダクトアウト手法だから売れないんですよ。

安田

プロダクトアウト?

石塚

つまり商品をかついで売るから駄目なんです。たとえば求人広告の会社だったら求人広告の商品、人材紹介だったら人材紹介という商品を、売ろうとする。

安田

普通はそうですよね。そのためのトークを磨いたり。

石塚

商品説明をいくらロープレで磨いても売れない。

安田

商品説明がうまくても売れないってことですか?

石塚

売れない。マーケットインという発想に切り替えることが、成功への1歩目。

安田

具体的に言うと、どういうことをやればいいんですか。

石塚

何を聞けばいいのかってことですよ。

安田

相手に?

石塚

はい。何を聞きながら、どのキーワードで、どういう印象を残していくのか。これは相手によって違いますよね。

安田

相手の立場によっても変わります。採用の話となると、なかなか経営トップ自らが会ってくれませんし。

石塚

はい。採用の話しかできない人は現場の担当者に振られます。

安田

「担当者に言っておいてよ」みたいな。担当者も社長から言われた通りやってるだけなので、商品以外の話ができません。

石塚

それはレイヤーを上げなきゃ駄目なんですよ。

安田

レイヤー?

石塚

忙しい社長に実務までは無理なので。担当者のメリットになるティーアップをしながら、要所要所では経営層を巻き込んでいく。この手法を覚えないと売れない。

安田

やっぱそうですよね。とくに中小企業はトップしか決裁権を持ってませんし。

石塚

そうなんです。

安田

でも担当の方に「社長に会わせてください」と言ったところで、なかなか会わせてくれないですよ。どうやったら会わせてもらえるんですか?

石塚

そういう状況をつくり上げるってことですね。

安田

状況をつくりあげる?

石塚

はい。「この人を社長に引き合わせなきゃいけない」っていう状況。

安田

どうやって?

石塚

たとえば僕がよくやったのはお金の話。予算を超えてしまう話って「直接社長に聞いてもらわないと分からない」ってことになるので。

安田

予算を超えてたら、そこで断られないですか?

石塚

採用コストだけの話だけじゃなく、「御社の利益率をどう向上させるか」という、生産性アップの話にもっていく。

安田

なるほど。

石塚

検討してもらいたい良い案があるので、これに関して社長にぜひ話を聞きたいと。

安田

それで会ってくれますか?

石塚

社長という人種は「業績アップ」「生産性向上」という話に必ずビビッと来ます。

安田

確かに。

石塚

「石塚っていう人が社長に会わせろと言ってます」「何だそれ」「うちの売上や利益率を調べてきて、もっと採用で上げられるって言うんですよ」「あ?面白いヤツだな、ちょっと1回会うよ」って。

安田

そんなトントン拍子に行きますか。確かにそのネタは社長にはうけると思いますけど。「そんな余計なことはしなくていい」っていう担当もいるじゃないですか。

石塚

そういう場合は「よくそうおっしゃるんですよ。私、いろんな会社さんをお手伝いしてますけど、これやったら絶対にあなたに対する社長の評価が良くなりますよ」って。

安田

なるほど。その人にとってのメリットを語ると。

石塚

「これやって社長に評価された人はいるけど、評価されなかった人、私見たことないです」って。

安田

そこまで言っちゃいますか。

石塚

トドメは「大丈夫です。私が悪者になりますから」「もし形勢が悪くなったら、石塚にそそのかされたって言ってください。絶対に評価させます」って。

安田

すごいトークですね(笑)

石塚

僕ならそれぐらい言いますけどね。

安田

なるほど。つまり「この人を社長に会わせたら自分の評価が上がるな」って感じさせると。

石塚

そうです。言い切るってことが大事。ロープレやるときにも言い切る練習をしないと。

安田

とは言え、担当者がネックになってるケースもあるでしょ?

石塚

ありますね。人事部長を信用してない社長もいっぱいいますし。

安田

そういう場合はどうするんですか?

石塚

その情報が分かったってだけで、もうビジネスチャンスしかないわけで。「社長、私が御社の人事部長になります」って。

安田

そんなこと言ったら、その人事部長の仕事がなくなっちゃいますけど。

石塚

そこはうまく。「人事部長を私が影で支えます」という感じで。

安田

現場の担当者をすっ飛ばして、昔はよく怒られました。採用担当者を敵に回すことも多かったです。

石塚

右手で握手しながら、左手でボディブロー入れ合うような関係が健全でいいと思う。

安田

なるほど。何れにしても、社長が会いたいと思わないような人は駄目だってことですね。

石塚

そうです。いきなり社長じゃなくても、大きな会社であれば担当の本部長とか。担当の役員とか。しっかりと経営目線から落とした採用の話をする。

安田

レイヤーを上げようと思うと、自分の視点も上げないといけないですよね。営業マン3人採れって言われて、この広告がいいですよみたいのじゃ話にならない。

石塚

おっしゃる通りです。経営課題を採用で解決する提案をしないと。

安田

たとえばどのような?

石塚

たとえば「ウチは何でこんなに成約率が低いのか」「ウチの商品はなんでこの層に売れないのか」という課題に対し「それ採用で解決しましょうよ」っていう置き換え。

安田

採用という手段を使って解決する方法を考えると。

石塚

それができればもう受注したも同じ。そういうふうに考えられる営業マンが今ほとんどいないですから。

安田

多くの営業マンは、出てきた案件に対して広告スペースの説明をしてるだけですね。

石塚

そうなんですよ。インサイドセールス5人ほしいという要件なら「いや、分かりますけど、なんでインサイドセールスなんですか。ちょっと営業プロセスを聞かせてください」って。

安田

経営の上流にどんどん登っていくわけですよね。

石塚

もっていき方次第です。いきなり「社長の話を聞かないとわかりません」とか言ったら、そりゃカチンとくる。「他社さんもそうなんですけどね」って他社事例を必ずかませる。

安田

事例は効きますよね。

石塚

効果てき面です。「あそこの新商品って、じつは去年採用した人が考えたんですよ」「あの集客考えたのって今年入った人ですよ」って。

安田

それは効果ありそう。

石塚

重要なのはその会社のキーパーソンを見極めること。社長とは限らないので。

安田

確かにそうですね。

石塚

もっと大事なのは顧客にしたい企業を自分で決めること。引き合いを待ってるようでは話にならないです。

安田

おっしゃる通り(笑)

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石塚毅
(いしづか たけし)
1970年生まれ、新潟県出身。前職のリクルート時代は2008年度の年間MVP受賞をはじめ表彰多数。キャリア21年。
のべ6,000社2万件以上の求人担当実績を持つ求人のプロフェッショナル。

安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

 

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