第4回 “不健康を活用”する生き方

この対談について

健康人生塾の塾長にしてホリスティックニュートリション(総括的栄養学)研究家の久保さんと、「健康とは何か」を深堀りしていく対談企画。「健康と不健康は何が違うのか」「人間は不健康では幸せになれないのか」など、様々な角度から「健康」を考えます。

第4回 “不健康を活用”する生き方

安田
前回は「不健康だけど幸せ」「健康だけど不幸」というような話をしましたね。結局はそのバランスが大事なんだと。

久保
そういう結論になっちゃいますね。バランスってだいぶ曖昧な言葉ではありますけど。
安田
どうなんですかね、「10回中2回くらいは不健康でもいいよ」なんて言ってもらえたらわかりやすいですけど(笑)。

久保
そうですね。でも、健康って体だけじゃないですから。心の健康もあって、そういう意味では「楽しい一日を過ごす」というのも本当に大切なんですよ。
安田
本当にそうですね。とはいえ、体も心も100%健康なんて状態があるんですか? 私にはどうも想像がつかないんです。だって、睡眠時間を削ってまで働くってどう考えても不健康ですけど、人生にはそういうこともないと……

久保
確かにそういうことがまったくないと、生きがいみたいなものが失われていく気もしますね。
安田
そうそう。例えば恋愛なんかもね、最初からしなければ振られる心配もないし、喧嘩するストレスもないわけです。でも、まったくないとそれはそれでつまらない人生になっちゃう。

久保
そういう意味では人間って、ある程度の不健康を許容しないと、生きがいというものを感じられない生き物なのかもしれませんね。
安田
そもそも人間の生き方そのものが、動物とかと比べればすごく不健康ですよね。でも、じゃあ動物みたいな生活、原始時代に戻るかと言われたら、誰もそんなの選ばない。

久保
それはもう人間の性(さが)みたいなものですよね。
安田
私は「どの程度命を削って生きていくか」という、覚悟の問題だと思ってるんです。本当にあなた命を削ってまでマラソンしたいんですか? 命を削ってでも誕生日ケーキを食べますか? っていう(笑)。

久保
なるほど(笑)。そういう覚悟あるのかを自らに問うべきだと。
安田
あと、ストレスの問題がありますね。何かストレスを感じて医者に行くと、「自律神経失調症です。ストレスかかるようなことは全てやめてください」なんて言われるんですけど、それができたら苦労しないと(笑)。

久保
本当に(笑)。お医者さん自身だってストレスを感じながら生きているはずで。
安田
まさにそうなんです。じゃあストレスって何かと言われれば、結局人間との関わりが全ての原因だなんて言われている。じゃあ人間が1人もいないところで生きていきたいかと言われたら、よっぽど変わった人じゃないと無理でしょう?

久保
というより、人間はそもそも1人では生きていけないんでしょうね。そういう意味ではストレスも「必要悪」なのかもしれません。むしろストレスがないと人間生活が送れないという。
安田
重力だってストレスと言えばストレスですもんね。重力があるから筋力がついたり、骨が丈夫になったりするわけで。

久保
そうですねえ。草食動物にとって肉食動物に襲われるなんて究極のストレスですけど、そういう時ほど「火事場のクソ力」というか、リミッターが外れて普段出ない力が出たりする。放射能も極微量であれば細胞を活性化すると言われていますし。
安田
そもそも太陽だって放射能みたいなものですからね。でも太陽があるから体が活性化され生きていける。

久保
不健康を上手に活用しながら生きていくってことなんでしょうね。
安田
でもね、健康診断に行って「病気じゃなかったから自分は健康だ!」って言う人って、0か100かで考えがちじゃないですか。健康か不健康かの二択しかないというか。

久保
わかります。例えば腸内環境の話に「善玉菌悪玉菌」って出てくるでしょう? でも、じゃあ悪玉菌を排除すればいいかっていうとそうじゃないわけです。
安田
そうなんですか。

久保
ええ。善玉菌悪玉菌の両方がいいバランスを取れて初めて、すばらしい機能を発揮するんです。善玉菌だけになっても、悪玉菌だけになってもよくないんですね。
安田
殺菌とかもそうですよね。あんまり殺菌しすぎると菌がゼロになって逆に抵抗力が落ちる、みたいな。

久保
そうそう。免疫力なんてまさにそうですからね。
安田
前に仰っていた最高レベルの健康「オプティマルヘルス」っていうのも、善玉菌悪玉菌みたいに、健康と不健康がある程度は入り混じっている状態なんですか?

久保
はい、そう考えています。もっとも、そのバランスっていうのは一定じゃなくて、1人1人違っていていいんですけどね。
安田
なるほど。野球選手を目指す人の健康バランスと、マラソン選手の目指す健康バランスは違うと。

久保
ええ。どんな人生を目指すかによって全然違ってくると思いますね。
安田
例えば、病院でたくさんの管に繋がれてでも長生きしたい、って人もいれば、それだったら短い方がいいって人もいるじゃないですか。そのあたりも人によって違うんでしょうね。

久保
先ほど安田さんが仰っていた「生きがい」っていう話もありますよね。人によって何に生きがいを感じるかは様々で、そのための体のベース、土台についても必要な能力が変わってくるわけですから。
安田
だから結局、その人が納得していればいいって話ですよね。……でも、すごく太っちょの人が「俺は不健康でもいいから食べたいものを食べたいだけ食べるんだ」なんて言うのを見ると、それはちょっと違うんじゃ、と思っちゃうんですよ。大きなお世話なんですけど。

久保
そういう人に限って、いざ病気になったら急に節制し始めたりして(笑)。
安田
そうそう(笑)。ともあれ、やっぱり健康というのは奥が深いですね。

久保
深いですねえ。こうして話していると、生物学的な意味での「健康」と、生きていくための「健康」って、ちょっと違うものなんだと思えてきます。

 


対談している二人

久保 光弘(くぼ みつひろ)
健康人生塾 塾長/ホリスティックニュートリション研究家

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仙台出身、神奈川大学卒。すかいらーくグループ藍屋入社後、ファンケルへ。約20年サプリメントの営業として勤務後、2013年独立し「健康人生塾」立ち上げ。食をテーマにした「健康人生アドバイザー」としての活動を開始。JHNA認定講師・JHNA認定ストレスニュートリショニスト。ら・べるびい予防医学研究所・ミネラル検査パートナー。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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