第384回 日本企業のカスハラ対策

この記事について 税金や、助成金、労働法など。法律や規制は、いつの間にか変わっていきます。でもそれは社会的要請などではないのです。そこには明確な意図があります。誰が、どのような意図を持って、ルールを書き換えようとしているのか。意図を読み解けば、未来が見えてきます。

第384回「日本企業のカスハラ対策」


安田

カスハラ対策が10月に義務化するそうですね。

久野

はい。そもそも会社には安全配慮義務というのがありまして。昔はお客さんからクレームをつけられても「お前が悪い」「謝ってこい」って感じだったじゃないですか。

安田

お客様は神様でしたからね。

久野

日本は特殊なんですよ。海外ではそもそも接客のスタンスが違います。従業員が接客しないでずっとスマホを見ていたり。

安田

それはそれで問題ですけど(笑)でもそういう環境ではカスハラは起きにくいんでしょうね。

久野

店員に文句を言ったら逆に殴られたりするから。

安田

そういう動画をYouTubeで見たことがあります(笑)店員も銃を持ってたりするし。

久野

店側も「お前なんかに売るか」という態度じゃないですか。

安田

そういう接客もどうかとは思いますが。日本の場合はちょっとやり過ぎなんでしょうね。おもてなしのやり過ぎというか。

久野

店員に土下座させるのなんて日本ぐらいじゃないですか。

安田

カスハラには「厳正に対処します」という会社がようやく出てきましたね。「うちは社員を守ります」みたいな。

久野

ちゃんと守ってあげないと従業員がみんな辞めちゃいますから。それでなくても人不足で大変なのに。

安田

でもそんな会社はまだ少ないですよ。クレームがあったらとりあえず従業員に謝らせて。

久野

そうですね。まだまだお客さんに寄っている会社が多いし、そもそも日本企業の特徴として2割ぐらいしか積極策は打たないんですよ。

安田

たった2割ですか?

久野

ここにも「2・6・2」の法則があって。2割はすぐに対応する会社。もうすでに動いています。6割は言われたらやろうという会社。残り2割は全くやる気がない会社。

安田

法律が施行されたら6割は動くんでしょうね。

久野

はい。法律が施行されたらやると思います。それが日本の会社の特徴なので。

安田

ルール化されると渋々やる感じですよね。ハラスメント対策ってそんなに大変なんですか?

久野

いえ、そんなに難しい話じゃなくて。要は緊急対応のマニュアル作りとか指針作りですね。従業員も現場で指針がなければ判断ができないので。

安田

その程度のこともやらないんですね。

久野

顧客に対して線引きすることに抵抗があるんでしょうね。

安田

なるほど。でもそこが明確じゃないと現場は困りますよ。正しいクレームなのか単なるカスハラなのか区別できないので。

久野

そうなんですよ。その線引きは最低限会社がやるべきことなんですけど。

安田

「このラインを超えたらハラスメントだから専門部署に回しなさい」というルールを決めればいいだけじゃないですか。

久野

そうなんですけど。今でもほとんど整備されていないですね。

安田

なんと。そりゃあ現場の人は辞めますよね。

久野

裁判になった時も大きな損害賠償が発生したりします。安全配慮義務を満たしていれば起きてしまった場合でも損害賠償額が低いんですけど。

安田

この人不足時代にそんな手も打っていないのは信じられないですけど。

久野

たとえば歯医者さんも人不足なんですけど、そういう対策をしている医院はほとんどなくて。患者は先生には文句言わないんですよ。受付で文句を言うんです。

安田

確かに。受付が大変だって聞いたことがあります。予約時間通りに来てくれているのに先生の手が空かなくてクレームになったり。

久野

間に挟まれている現場の人がいちばん大変なんですよ。

安田

先生がひと言謝ればいいのに。

久野

先生が謝らないから問題になるんだと思います。

安田

確かにそうですね。受付の人に謝られても実感湧かないし。

久野

もしくは中国企業やAmazonみたいに割り切ってルール化すること。「商品が壊れていました」ってクレームをつけても「新しいものを送ります」以上、みたいな。

安田

ドライだけど安いし新品と替えてくれるから「いいかな」と思っちゃいます。

久野

そうなんですよ。要するに企業スタンスの問題で。対応を明確にして従業員教育もちゃんとやればいいだけなんです。

安田

なぜ出来ないんでしょうね。

久野

お客さんを失いたくないという思いが強すぎるから。企業側も「売りたくない人には売らない」って決めないと。そこがいちばん大事ですよ。

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久野勝也 (くの まさや) 社会保険労務士法人とうかい 代表 人事労務の専門家として、未来の組織を中小企業経営者と一緒に描き成長を支援している。拠点は愛知県名古屋市。 事務所HP https://www.tokai-sr.jp/  

安田佳生 (やすだ よしお) 1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

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