世界は顧客で溢れている

スマホが普及した事によって、世界は劇的に変化した。
一人ひとりがスマホを持ち歩いている、
ということは、起きている時間の半分は、
ネットに接続されているということである。
つまり、人と人とが繋がっているということ。
それも何千万人、何億人、という単位で繋がっている。

ではこの繋がりは、どのような変化をもたらすのか。
情報のやり取りや、商品の売買という分野においては、
既に劇的な変化が起きている。
私たちはもはや、新聞やテレビで情報を収集する必要がない。
お店まで出かけて買い物をする必要がない。

手の中に収まるスマホをちょっといじるだけで、
世界中の情報にアクセスする事が出来る。
米や水を自宅に届けてもらう事が出来る。
飛行機や旅館の予約をする事まで出来てしまう。
それは、消費者としての私たちに起きている変化。
次に起きる変化、いや既に起きつつある変化は、
供給者としての変化である。

日本人の多くは会社員である。
つまり、会社に時間を供給することによって、
報酬を得ている人たち。
情報収集も、商品の購入も、旅行の手配も、
何でもスマホで済む時代において、
彼らはなぜか仕事をするためだけに、会社に通い続けている。

なぜ仕事はスマホで済ませる事が出来ないのか。
それは、仕事とはそのようなものだと、
思い込んでいるからである。
だがこの常識も、あっという間に変わるだろう。
もちろん、お店やテレビが無くならないように、
会社も無くなったりはしない。
そこに通勤し続ける人は一定数存在し続けるだろう。

だが、テレビを見ない人、
お店で買い物をしない人が増えたように、
会社に行かずに仕事をする人も間違いなく増える。
それはもはや、確定した未来なのである。
スマホによる個人と個人の繋がりは、
人間の働き方、いや、仕事というものの概念そのものを、
根底から覆してしまうだろう。

料理が好き、漫画を描くのが好き、そばの食べ歩きが好き。
好きだけれども、お金を稼げるレベルではない。
その場合、好きは単なる趣味であり、仕事にはならなかった。
それは既存のマーケットにおいて、
お金を払ってもらうほどのニーズが無かったからである。
だがこれからは、その環境が変化する。

既存のマーケットで売れないのであれば、
新たなマーケットを自ら創り出せばいいのである。
まずは自分の「好き」を商品に変える。
料理そのものを売るのか、料理のレシピを売るのか、
あるいは料理に使う食材を売るのか。
全ては自由である。
自分で価値があると思う商品を作り、
それに共感してくれる顧客を集めるのだ。

規模を大きくする事は簡単ではないが、
個人が生きていく程度のマーケットを創り出すことは
十分可能である。
自分だけの小さなマーケットを創り、
自分だけのお客さんを育てていけばいい。
そこに本気の「好き」や「こだわり」があれば、
必ず共感し、買ってくれる人が現れる。
なぜなら世界は消費者で満ちているからだ。
全ての消費者と、私たちは繋がっているのである。


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