第95回 人はいつ「大人」になるのか?

この対談について

人は何のために働くのか。仕事を通じてどんな満足を求めるのか。時代の流れとともに変化する働き方、そして経営手法。その中で「従業員満足度」に着目し様々な活動を続ける従業員満足度研究所株式会社 代表の藤原 清道(ふじわら・せいどう)さんに、従業員満足度を上げるためのノウハウをお聞きします。

第95回 人はいつ「大人」になるのか?

安田

最近「境目研究家」として探求しているテーマがありまして。「人はどうなったら大人なのか」ということなんですが。


藤原

ほう、大人の境目ですか。面白いテーマですね。私たち自身、果たして本当に大人になれているのか、という話でもありますが(笑)。

安田

そうなんです(笑)。法的には年齢で区切られますけど、年齢を重ねたからといって自動的に大人になるわけではない。よく「自分の子どもができたら大人になる」なんて言いますけど、親になっても精神的に未熟な人はたくさんいますし、 逆もまた然りで。


藤原

それは間違いないですね。ちなみに安田さんは自分は大人だと感じます?

安田

50歳を過ぎるまでは実感なかったですねぇ(笑)。でも最近、特に今の子どもが生まれてから、「自分もようやく大人の境地に立てたかもしれない」と感じるようになりました。


藤原

ほう、安田さんの中で何が変わったんでしょうね。

安田

「自分」と「自分以外」の比率の変化なのかなぁと。人間、誰だって自分のことが一番大事じゃないですか。でも生きていく中で、子どもや家族のような「自分より大切な存在」ができてくる。そっちの割合が増えていくことを、大人になると言うのかもしれません。


藤原

ああ、なるほど。自分より他人を優先できるかどうかが、大人と子どもの境目だと。

安田

ええ。自分と自分以外の存在を天秤にかけて、自分以外が50%を超えた瞬間に、人は大人になるんじゃないかと。


藤原

なるほどなぁ。「自分を犠牲にしてでも誰かのために尽くしたい、守りたい」と思えたところが、大人の入口というわけですね。子どもが生まれた時にそう感じる人が多い、というのも頷けます。

安田

そうなんです。自分の子どもが車に轢かれそうになったら、身を挺して助けるじゃないですか。それはやっぱり大人の行動だという気がします。もっとも、他人の子どもでも同じように体が動くだろうか、と考えると、なかなかイエスとは言えない。私の「大人度」はまだそれくらいなんです。


藤原

ああ、大人と一言で言っても、そこには「どれくらい大人か」という尺度があると。

安田

そうそう。まぁでも、世の中すべてを自分事として受け止めていたら心が持たないですけどね。遠い国の紛争のニュースを見て本気で心を痛めていたら、毎日が辛くて仕方ないわけで。


藤原

確かにそうなんですよね。そこのバランスをどう取るかという。

安田

そうそう。だからまずは自分の手の届く範囲で、困っている人にどれだけ親身になれるか、ですよね。たとえ自分にメリットがなくても、自分の時間やお金を使って手を差し伸べられるか。


藤原

ははぁ、なるほど。安田さんはそこを意識されているわけですね。

安田

会社を一度潰してからですけどね。人のために時間やエネルギーを使うことを意識するようにしないと、すぐに自分のことばかり考えてしまいますから。いろんな人から相談を受けますが、真摯に話を聞くようにしています。


藤原

以前から続けられている「こだわり相談ツアー」も、その一環なわけですね。

安田

ええ。周りからは「何のためにそんなことを?」なんて不思議がられますが、私にとっては「大人だから」というのが答えなんです(笑)。それが私の見つけた、大人としての在り方ですね。

藤原

素晴らしい。それを自分自身で決めてやっているということも、大事なポイントですよね。いくらいいことをしていても、「他人に言われて仕方なくやっている」ではあまり意味がないというか。

安田

ああ、確かに。要は自責思考を持てるかどうかですよね。

藤原

そうそう。子どもが「ママのせいだ!」と泣くのは仕方ないとして、いい歳をした大人が国や会社のせいにしていちゃ駄目だよと。

安田

でもそういう人いっぱいいますよね。40歳にもなって親のせいにしていたりとか。

藤原

そうですねぇ。そういう人はまだ大人になれていないんでしょう。逆に言えば、若くても物事を自分事として捉えられる人は大人びて見えます。

安田

確かに確かに。そう考えてみると、「自分以外のことを考えられる」ことと「自責である」ことは、根っこの部分でつながっているのかもしれませんね。

藤原

そう思います。年を重ねて逆にわがままになったり、怒りやすくなったりするお年寄りもいますが、あれは一種の「赤ちゃん返り」なのかもしれません。

安田

なるほどなぁ。肉体は衰えても、心は成熟した大人のまま最期を迎えたいものですね。

 


対談している二人

藤原 清道(ふじわら せいどう)
従業員満足度研究所株式会社 代表

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1973年京都府生まれ。旅行会社、ベンチャー企業を経て24歳で起業。2007年、自社のクレド経営を個人版にアレンジした「マイクレド」を開発、講演活動などを開始。2013年、「従業員満足度研究所」設立。「従業員満足度実践塾」や会員制メールマガジン等のサービスを展開し、企業のES(従業員満足度)向上支援を行っている。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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