第347回 安価な労働力に頼る経営者の末路

この記事について 税金や、助成金、労働法など。法律や規制は、いつの間にか変わっていきます。でもそれは社会的要請などではないのです。そこには明確な意図があります。誰が、どのような意図を持って、ルールを書き換えようとしているのか。意図を読み解けば、未来が見えてきます。

第347回「安価な労働力に頼る経営者の末路」


安田

外国人技能実習制度は奴隷制度だと言われています。

久野

そうですね。何があっても3年間は移れないとか。そもそもグレーなところがあって、本来は実習させて本国に戻す前提なんですよ。

安田

でも実際は違うと。

久野

戻る前提なら本国で役に立つ業務じゃないといけないですよね。それなのに本国に戻ってもニーズがない作業ばかりやらせていたり。

安田

やらせてもいい仕事のカテゴリーが決まってませんでしたっけ?

久野

無理やり当てはめて何でもかんでもやらせてるのが現状ですね。

安田

非難されて当然ですね。結局は人不足の現場を補うために、安い人件費で来てくれる外国人を入れる制度になっていたと。

久野

しかも辞められないので途中で失踪する外国人がいっぱい出てきて。中には犯罪にまで繋がったり。

安田

もちろん犯罪する人が悪いんですけど。日本側にも問題ありますよね。

久野

あると思います。騙されたような環境でひどい仕打ちを受けたら、人間なので感情的にプチンと切れちゃうこともある。

安田

その制度を抜本的に見直して新たな制度ができると。

久野

はい。外国人育成就労制度に変わります。転職まで3年だったのが2年になりました。

安田

暴力やハラスメントのような「やむを得ない事情」があれば、もっと早く転職できる。まあ当たり前な気もするんですけど。

久野

そうなんですよね。前がひどすぎただけで。だから奴隷制度と言われたわけです。

安田

パワハラがあっても辞めれなかったってことですね。

久野

そうなんですよ。そうすると、もう失踪するしか方法がなくなっちゃって。結構な借金を背負ってきてるから自暴自棄になって、違法な労働やグレーな労働に手を染める。

安田

新たな制度でも2年間は転職できないんですね。

久野

育てる側からしたら先行投資ですからね。すぐに辞められたら元が取れない。ただ私は半年ぐらいで選べるようにした方がいいと思います。

安田

そこで選んでもらえるように企業側も努力すべきだと。

久野

はい。外国人労働者が来たくなるようにしないと。

安田

そうですよね。国をあげて来たくなる条件にしないと。「日本はやめて他の国に行こう」ってなっちゃいますよ。

久野

いま韓国がめちゃくちゃ力を入れていまして。みんな韓国に行きたがってます。

安田

韓国は条件が良いんですか。

久野

日本みたいに「最低賃金で雇う」という無言の縛りがなくて。ちゃんと労働力として受け入れて相応の報酬を払います。

安田

まあ当然と言えば当然ですけど。

久野

そうなんですよ。当たり前のことを当たり前にやっているだけ。「外国人だから安い」という発想自体がもう間違ってるってことです。

安田

日本人がやらない仕事を外国人に安い給料でやらせようっていう。経営者として恥ずかしい。

久野

給料が上がっていけば「私がやります」という日本人も出てきますよ。そもそも日本人が採れない理由は低賃金ですから。

安田

そうですよね。労働環境が悪くて給料が安いところから人が離れていってるだけ。

久野

不人気業種とか関係ないんですよ。外国人なしでやっているタイル製造会社があるんですけど、そこは条件もいいし見せ方もブランディングも素晴らしいです。

安田

飲食店も同じですよ。時給2000円出して集まらないお店もあるし、1500円でたくさん応募者が来るお店もある。

久野

労働環境も大事です。DX化が進んでいるとか。飲食店だと何でもかんでもやらされる店は人気がないですね。

安田

労働環境を良くして給料も高くしていかないと、外国人も来ないし日本人はもっと来ない。

久野

日本人がいないから外国人っていう発想はもうダメってことです。とにかく報酬を増やそうという発想じゃないと。

安田

社員の給料を抑えて社長だけベンツに乗っているとか。会社の経費で飲みに行ってばかりとか。もう無理ですよね。

久野

そういう会社からどんどん人が離れていってますね。社員はみんな気づいてるんですよ。こんな会社にいてもしょうがないって。

安田

気づいていないのは社長だけですね。

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久野勝也 (くの まさや) 社会保険労務士法人とうかい 代表 人事労務の専門家として、未来の組織を中小企業経営者と一緒に描き成長を支援している。拠点は愛知県名古屋市。 事務所HP https://www.tokai-sr.jp/  

安田佳生 (やすだ よしお) 1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

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