繰越欠損金のある会社を節税対策で事業売却するスキームは成り立つのか?という、自称腹黒おじさんからの質問に答えます。顧問税理士さんにはなかなか質問しづらい、頭のキレた質問。税法と照らし合わせながらこんなことあんなことを解説します。(音声はこちら)
>>>大久保圭太氏のプロフィール
めちゃめちゃ頭いいですね。
ね。俺に直接言ってくれたらいいのにね。
「一緒にやるか」みたいな?(笑)これはどうしましょう、ちょっと整理しますか?
そうですね。
要は知人の会社が……
知人の会社で、もう事業をやめたんだよね。何業かわかんないのがあれなんだけど、とにかく資産と現金があって、何もしてませんよっていう会社なんだと思うんだよね。
ですね。工場、建屋、構造物など…。
従業員引き取ってもらってるから。
何か製造業なんじゃないですかね。
でも事業やってないんでしょ?
いまはもうやってないです。
ああ、製造業か。
はい。
で、7,000万欠損金がありますよと。
で、直近で1,000万ずつなんで、ここ7年前ぐらいからずっと赤字が1,000万繰り越されてたんでしょうね。
そうね。
で、いま7,000万あって。ただ、以前の内部留保あるので、なんとか大丈夫だったと。で、現時点で1,000万の現預金が残ってると。
そうですね。だから、おバカおじさんではありません。いいところに目をつけたと思いますが、国税庁がそんなところを見逃すと思いますか?っていうことですね。
やっぱりそうなんですか。
そうなんですよ。これはやっぱり、かなり言われる。この腹黒おじさんの場合は、気づいてないのに安く買おうとしてるからさ、あれなんだけど。
あだ名(笑)
ただ、これ、休眠会社になっちゃってるっていうのがひとつポイントで、休眠会社で欠損法人を買っても、その欠損金はもう使えませんよっていう規定がある。なので、残念ながらできません。だから、もし可能性があったとするならば、たらればだけど、他で見つけたらぜひ一緒にやりましょうってことだけど、たとえばこのおじさんが事業をやってて閉めようと思ってたと。その会社を買って、その会社で同じビジネスをやると。毎年1,000万赤字になってたから微妙かもしれないんだけど、たとえばそこに、製造業っていうくくりの中で、そこを改善した、たとえば、それは使える。
そのまま引き継いで再生して。
うん。従業員をそんなに変えずに、いろんな、ややこしいんだけど。
細かく言うとね。
細かく言うと借入の5倍とか、いろんなのがあるけど、だいたい同じ事業をやってて、それに付随してちょっと何か「このラインも増やそうか」とかぐらいのやつでプラスにするとするじゃん?それは使える。だけど、いまある事業を移してとかは使えない。
なるほど。
基本的にはこんな会社はゴロゴロあるわけだよ。ここはいいからいいけど、ゴミみたいな会社でもマイナスのところを買ってきて使えば使えちゃうじゃん?銀行借入じゃなければ。だけど、それをさせないために欠損金の控除は基本的には使えない。
やっぱそうなんですね。
そう。だから、その前に、動いてるときにしらっとちゃんと変わって、M&Aをすれば、きちんと、そしたら価値はある。その価値はもしかしたら、その7,000万の税効果の価値で、でも実際資産があるからよりプラスだろうけど、普通に売る価格プラス税効果っていうのは十分に考えられる。
ただ、M&Aしたときに、その事業をそのまま続けなきゃいけないっていうのが。
続けなきゃいけない。だから基本的には難しい。
そうするとつらいとこですね。
プラスだったらいいんだけど、いま足下が。なので難しいっていうのがひとつなんだけど、もうひとつ……
裏道が。
なんで悪そうな回なの今回(笑)でも、このことを知らない税理士、結構いるからね。
「このこと」というのは、いまのこの話?
そう。その規定を知らない。57条の2なのかな、法人税。
最近法律出てきますね(笑)
法律家ですから、ハハハハハハ(笑)
笑うとこじゃないでしょ本人が(笑)
ああ、そうかそうか(笑)いつ引退しようかと思ってるんで。いや、調べたんだ。セカンドオピニオン入ったときに「それで大丈夫だって言ってますよ、顧問税理士が。大久保さん、もうちょっとアグレッシブだと思ったのに」みたいなのを送られたからさ、「『57条の2調べろ』って言っといて」って言ったら「すいませんでした」みたいな(笑)知らなかったんかい!みたいな。まあ、知らない人も多いんじゃない?むかし、それこそやったときに、これ、結構10年前じゃないか、もっと前にやったときに、税務署から問い合わせ来たもん、「なんで使わないんですか?」って。自分で否認したのね。使わなかったの、引っかかると思ったから。横浜の田舎のほうの税務署だったけど、ぜんぜん知らなくて、その規定。
税務署が知らない?
税務署が知らない。
へぇ~。
「なんで欠損金あんのに減らさないで利益で税金払ってんですか?」って来て、「いや、こういう規定がありますよ」って。
ホントに?
ホントホント。
そんな話あるって面白いですね。
ただ、もう1個あって、合併しようっていうことがあるわけですよ。その会社使えねえんだったら、その会社を買ってくっつけると。合併したら使えんじゃないかっていうアイデアもあるじゃないですか。
合併っていうのは、M&Aとは違うんですか?
いまのこの話だと、会社を買って、その会社に事業をくっつけてとか、そこで売上を作るようにいまのこの会社を使おうとしてるけど、これは使えないと。そしたら、いまのその製造業の会社自体を、いまの利益出てる会社とくっつけて、その欠損金を合わせて使っちゃおうというのが普通考えることだよね。
ああ、なるほど。
でも、これも5年間使えない。
逆に言うと5年は使えるんですか?
5年間は使えないの。だから、いま7,000万引き継いでも5年間は使えない。
2年間は使える?
そう。鋭いね。そんな鋭かったっけ?
いやいや、7引く5じゃないですか。
いや、だけど普通5年だったらやらないんだよ。だからこれ止まってんだけど。そうなの、5年待ってたらいけんのよ。ただ、繰越欠損金の……えー、今日だめだな、かむな。
大丈夫です。気づいてないです。
繰越欠損金使えるのは9年間なんですよ。5年が7年になって、9年になって、これ、銀行の不良債権処理の中で税効果でやってたんだけど、まあそんな話はいいんだが、とにかく9年間使えるわけですよ。ってことは、5年制限されても、今回のケースでいうと5年間は使えないんだよね、合併してから。だから5年間は使わないで放っときますよと。そのうちに、7年前から1,000万ずつたまってた欠損金が5年間のうちに3年分は消えんのか。
買ってから5年間は使えないんですよね。
買ってから5年間は使えない。
で、いま7年間たまってる分があると。
7年間たまってるので、5年後に残ってる分は使える。だから、ごめん、4,000万か。
そういうことか、4,000万ですね。
うん、4,000万だよね。5年達したときに、初めの、だから3年分は消えてるよね。だから、7年前足す……ごめん、鋭くなかったね。
ですね、ぜんぜん違いましたね。ぜんぜん違うこと言ってた。
いま翻弄されたわ。計算合わねえなと思って。計算おじさんなのに合わねえなと思って。で、7年前のは5年後に11年なってるから消えるじゃん?で、6年前のは5年後に10年だから……えーと、ああ、11年で……そうだよね、だから7年前が12年、6年前が11年、5年前が10年前で、ここまで3年間使えない。だけど、4年前からのは使えるじゃん。変動があるから微妙かもしれない、3,000万4,000万は使える可能性があると。だから、そこの価値を訴えて売るならできるかもしれないけど、まあ結構ハードル高いよね。だから、仕込みで買っといてもいいんだろうけどね、そういう意味じゃ。
5年越しのために仕込んでおくっていう形になるっていうことですか。
だから、M&Aで誰かに売却するために価値があるというよりは、この2代目おじさんが買収して合併しちゃえばいいんじゃん?でも、この顧問税理士、優秀そうだから相談は堂々として、その欠損金をやれないかって、一般論だからね、いま話してんのはね、それで取り込んで3,000万ぐらいマイナス仕込んどくというのはなくはないよね。建物とかがマイナスになんのかどうかはわかんないけど。
なるほど。そういうことですか。うーん、じゃあ、この方がおっしゃってるやり方そのままはできないか。
「ちょっとこれ、言っていいのかな」っていましゃべってて思ったんだけどさ(笑)結構微妙。でも、制限されますよの話だもんね。
大枠そういうことできるけど、細かく言えば、いろいろいまの話の中でも条件で無理だったりするのはあるはずですよね。
それはもちろんある。
それはいったん脇に置いて。
でも、誰もそれ言ってないかなと思って。9年と5年だったら4年使っていいって言ってねえけど、言っちゃっていいのかなと思って、いまちょっと後悔をしてる(笑)
声が(笑)
まあ、たぶん大丈夫だと思います。やったことないけど、さすがに。
じゃあ、この放送は一応ありということでよろしいですか?
ありでしょう。
ありということでいただきましたので、配信させていただきたいと思います。というわけでね、やってまいりました。この方は非常に面白い方ですよね。
難しいね、これ。
直接大久保先生に会っていただいてほしいなというのがなんとなく私の希望と、また楽しい、面白い、こういった悪巧みの質問お待ちしております。
俺は悪巧みしてない、いま。
いや、この方です。
ああ、そう。悪巧みおじさんね。
自分で言ってますからね。頭いいから面白い。おバカおじさんですから。
いや、おバカではない。
頭いいですね。というわけで、また質問お待ちしております。
はーい。
ありがとうございましたー。
ありがとうございまーす。