銀行と会社経営

地銀の9割は、もうなくなる
のではないかと言われている。
いや、都銀だって安泰とは言えない。
これまでのビジネスモデルが
もう通用しなくなっているのだ。
それは言うなれば手堅い金貸し。

担保のあるところに金を貸したり、
財務基盤のしっかりとした企業に金を貸したり。
たった2%の金利でも、
1兆円融資すれば200億円の利益が出る。
だがもはや、その2%の金利すら難しい。
そもそも銀行が金を貸したがるのは、
借りる必要がないほど健全な会社である。

そんな会社に借りてもらうためには、
さらに金利を下げるしかない。
限りなく0%に近い金利。
これでは収益が賄えない。
物件を担保に過剰に融資し続けたスルガ銀行などは、
一時の高収益と引き換えに破綻の危機を迎えている。

何が問題なのか。
銀行の姿勢。不景気。少子高齢化。
原因は様々考えられるが、
要するに環境が変化したのである。
まず、お金の価値が低下した。
莫大な資金を投資しなくても、
アイデア次第で事業を立ち上げることができる。

アイデアがよければ資金は後からついてくる。
クラウドファンディングもあれば、
有望な出資先を探している経営者もたくさんいる。
本来ならば銀行には、
事業アイデアと経営者の資質を見極める眼力が必要だ。
だがそんなものはどこにもない。

決算書を定型分析し、
その数値に見合った金を貸し、
型通りに運営して管理する。
そんなビジネスはもう存在しないのである。
これは単に銀行だけの話ではない。
まったく同じことが、
いま企業経営にも起きているのだ。

儲かってそうな事業を選び、
金を出して人を雇い、
きちんと管理して収益を上げる。
この当たり前の構造が、通用しなくなっている。
ちょっとでも儲かりそうな事業には競合他者が殺到する。
あっという間にそこはレッドオーシャンへと変わる。

金を出しても人が集まらない。
せっかく採用した人材が辞めていく。
残った人材もぜんぜん育たない。
徹底管理してもわずかな利益しか出ない。
管理しすぎれば辞めていく。
しかも有給休暇、残業規制が厳しい。
ルールを守っていたら赤字になってしまう。

これが現状なのである。
経営者は銀行のことを
笑っている場合ではないのだ。
金を出す。人を雇う。管理する。
この常識を捨てなくてはならない。
人を雇わず、管理せず、まったく新しい
アイデアによって事業を創り出す時代。
経営者に求められる資質は根底から変化した。

 


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