「すべての人は、すごい可能性を秘めている」と信じる大野と、「多くの人は目的などなくただ存在しているだけ」と断ずる安田。人間の本質とは何か。人は何のために生きているのか。300文字限定の交換日記による言論バトル。
120通目/大野からの返信
「人生はいつだって自分が記述している以上の何かがそこにある」
僕は二回離婚している。是れはあまり自分からは言わない。僕を守る為ではなく、妻やその親族に軽々しい前提を持ってもらいたくないからです。誰の真ん中にも悲しみがある。これは僕が最も敬愛する石井裕之さんが言った言葉です。人生が想像を絶する局面を僕に与えてきたとしても、それでも僕は人生にYesと答えたい。人生はいつだって自分が記述している以上の何かをそこに残してくれている。にもかかわらず僕たちは現実の全てを正確に格納していると思い込む。それは決して避けられないしそれでいい。但し人生との共同作業である事を忘れさえしなければ。人生が意図することを彫刻家にして、自分は粘土になるくらいが丁度いいように思います。
前回119通目/安田「挫折体験とは何か」
離婚したこと。会社が倒産したこと。このふたつは人生において最も大きな挫折でした。それがあるから今の自分があるとも言えます。でも同じ体験をしたからといって同じことを学ぶとは限りません。私がこの体験から学んだのは人を失った喪失感です。離婚したことではなく、離婚して家族を失ったこと。会社が倒産したことではなく、会社が倒産して仕事仲間を失ったこと。正直これはかなりキツかったです。今の自分があるのはそこから立ち直れたからではありません。今でもその傷を引きずっているからです。本当にきつい体験は回復できない傷を心や体に残します。でもそれでいいのだと思います。人は傷つき挫折しながら前に進んでいくものだから。
ー安田佳生より
前々回118通目/大野「コーチとして最も大切な事は何か?」
その通りですね。どうやら結論が見えてきましたね。コーチとして最も大切な事は何か?を今尋ねられたら、僕はコーチングが一切通用しない場面がビジネスにも人生にもあるって事を体験として持っているかだと答えるでしょう。〝その時〟コミュニケーションスキルとか心理学とか、どんなに立派な理論や考え方もクライアントには役に立ちません。
〝その時〟はただそばにいて一緒に泣くことしかできない。一緒に悲しむことしか。そばにいることが精一杯。でもテクニックやスキルに溺れている人は多い。コーチの足下に何があるか?ハンマー持たせたら全て釘に見立てたりする。同じ人間しかし完全に違う人間。コーチの足下にそれがあるかだと思う。
ー大野より
交換日記をする二人
●火曜日
安田佳生(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。
2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。
●金曜日
大野栄一(おおの えいいち)
株式会社一番大切なこと 代表取締役
https://ichibantaisetsunakoto.com/
https://www.sugoikaigi.jp/coach/eiichiono/