121通目/安田からの返信 「私の人生目標」
私は言ってしまうほうですね。離婚経験も会社を潰したことも。軽く見ているわけではないし、克服したわけでもありません。ネタとしてうまく使ってると思われがちですが、本当のことを言うとなかなか辛いです。それをあえて表に出しているのは隠すのが嫌だからです。一生の愛を誓ったのに前言を撤回して離婚した。世間に偉そうに言っていたのに会社を倒産させた。それが事実です。だから私は事実を背負って生きていきたい。しんどいけどそのほうが心地よい。気が楽なのではなく本当の自分でいられるということ。ありのままの自分を受け入れて、そんなに嫌いにならず、できればちょっと好きになって死んでいく。それが私の人生目標なのです。
前回120目/大野「人生はいつだって自分が記述している以上の何かがそこにある」
僕は二回離婚している。是れはあまり自分からは言わない。僕を守る為ではなく、妻やその親族に軽々しい前提を持ってもらいたくないからです。誰の真ん中にも悲しみがある。これは僕が最も敬愛する石井裕之さんが言った言葉です。人生が想像を絶する局面を僕に与えてきたとしても、それでも僕は人生にYesと答えたい。人生はいつだって自分が記述している以上の何かをそこに残してくれている。にもかかわらず僕たちは現実の全てを正確に格納していると思い込む。それは決して避けられないしそれでいい。但し人生との共同作業である事を忘れさえしなければ。人生が意図することを彫刻家にして、自分は粘土になるくらいが丁度いいように思います。
ー大野より
前々回119通目/安田「挫折体験とは何か」
離婚したこと。会社が倒産したこと。このふたつは人生において最も大きな挫折でした。それがあるから今の自分があるとも言えます。でも同じ体験をしたからといって同じことを学ぶとは限りません。私がこの体験から学んだのは人を失った喪失感です。離婚したことではなく、離婚して家族を失ったこと。会社が倒産したことではなく、会社が倒産して仕事仲間を失ったこと。正直これはかなりキツかったです。今の自分があるのはそこから立ち直れたからではありません。今でもその傷を引きずっているからです。本当にきつい体験は回復できない傷を心や体に残します。でもそれでいいのだと思います。人は傷つき挫折しながら前に進んでいくものだから。
ー安田佳生より
交換日記をする二人