第81回 合理化で切り捨てられる「無駄」

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自覚して生きている人は少ないですが、人生には必ず終わりがやってきます。人生だけではありません。会社にも経営にも必ず終わりはやって来ます。でもそれは不幸なことではありません。不幸なのは終わりがないと信じていること。その結果、想定外の終わりがやって来て、予期せぬ不幸に襲われてしまうのです。どのような終わりを受け入れるのか。終わりに向き合っている人には青い出口が待っています。終わりに向き合えない人には赤い出口が待っています。人生も会社も経営も、終わりから逆算することが何よりも大切なのです。いろんな実例を踏まえながら、そのお話をさせていただきましょう。

将棋解説者の仕事は、
AIによって変わりました。
これまでは、定石の解説が主な仕事でしたが、
今はAIの指し示す最善手を説明したり、
対戦者の心情を推測したりすることに時間を割きます。
その証拠に、
AIが導いた次の最善手を、
解説者が「これは指しづらい手です」
と言う場面が時々あります。
なぜなら、
今の局面になる前に指した手が、
無駄になるからだそうです。
一番強い名人であれ、考え抜いて指した手ほど、
それを否定する手を選ぶのは難しいというのです。
正解を知っている人からすれば、
名人でも指せない手があるのは、面白い。

私たちは
過去の判断や経験を肯定的に見るとともに、
それを否定するのを嫌がります。

よくよく考えてみると、
私達の普段の行動においても、
そんなことが散見されます。
受験で志望校に行けなくとも、
卒業するときには愛校心はめばえてくるものですし、
仕事において、コストをかけて仕入れた商品は、
コスト以上に売上げようと努力します。
自分の過去を正当化したいのです。

実際のところは、
これらの判断や心のあり方は合理的ではありません。
現在のおかれている状況を
フラットに評価することができずに、
良い思い出やかかったコスト、時間が
判断の要素となっているからです。
しかし、
その間違ったところにドラマが生まれ、
面白さが凝縮しているのがわかります。

将棋AIはその局面においての最善手を指します。
その局面からの勝利への最短距離を、
ゼロリセットで再計算するので、
かかったコストや時間や愛着は計算しません。
すこぶる合理的なのです。

おそらく、
商売においても、現在や将来価値を合理的に
算出できるAIが開発されれば強い味方になりそうです。
いつしか、商売のメインストリームは、
いずれAIが仕切ることになるかもしれません。

そう考えていくと、
世の中の合理的でないものを
「無駄」と指摘するのがAIならば、
商売の面白さというのは
切り捨てられた「無駄」にあるともいえます。

切り捨てられた「無駄」が
私達の心を豊かにするのかもしれません。

 

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- 著者自己紹介 -

人材会社、ソフトウェア会社、事業会社(トラック会社)と渡り歩き、営業、WEBマーケティング、商品開発と何でも屋さんとして働きました。独立後も、それぞれの会社の、新しい顧客を創り出す仕事をしています。
「自分が商売できないのに、人の商品が売れるはずがない。」と勝手に思い込んで、モロッコから美容オイルを商品化し販売しています。<https://aniajapan.com/>
売ったり買ったり、貸したり借りたり。所有者や利用者の「出口」と「入口」を繰り返して、商材を有効活用していく。そんな新規マーケットの創造をしていきたいと思っています。

出口にこだわるマーケター
松尾聡史

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