第18回 優秀な人材が集まる会社になるために必要なこと

この対談について

大阪・兵庫を中心に展開する、高価買取・激安販売がモットーの『電材買取センター』。​​創業者である株式会社フジデン代表・藤村泰宏さんの経営に対する想いや人生観に安田佳生が迫ります。

第18回 優秀な人材が集まる会社になるために必要なこと

安田

前回の対談では、「優秀な人材を口説くことも社長の仕事」だという話をしましたね。ただもう少しマクロな視点で考えると、ピンポイントに口説くだけじゃなく、より多くの人に「この会社で働きたい」と思ってもらうための活動も重要ですよね。


藤村

仰るとおりですね。今朝のミーティングで「これからどんどん君らの給料上げていくぞ」と宣言したところなんですけど、視点を変えればそれも1つの採用力アップのための動きで。

安田

まさに仰るとおりですね。外向きの発信だけキレイにしても意味がなくて、一番重要なのは既存社員の給料を増やしたり、働きやすい環境を整えること。社内の土台を固めていくことこそが、何よりの採用ブランディングなんですよ。さすが藤村さん、しっかり実践されていますね(笑)。


藤村

ありがとうございます。僕もそう思って頑張ってます。でも社長仲間は「給料上げるなんて、藤村さんのとこだからできるんでしょ。ウチは儲かってないからムリムリ」って言うんですよね。

安田

うーん、最初からそう思い込んじゃってる部分もあると思うんですけどね。


藤村

まさにそうなんです! そもそも「儲かったら給料アップしよう」というのが間違っていて、「まず給料をアップするから社員のモチベーションが上がり、やがて儲かるようになる」んだと思うんです。まぁこれ、安田さんの受け売りなんですけど

安田

確かに言っていました(笑)。そもそも「儲かったら給料アップ」は当たり前のことで。儲けるための投資として給与アップは効果的、という話なんですよ。給与設定が高い方が優秀な人が集まりやすいですしね。


藤村

そうですよね。それなのに人件費を抑えることで利益を残そうとしている社長さん、多いですよね。

安田

ええ、本当に。それにこれは数字だけの問題じゃなくて、「なんとかして社員の給料を上げようと頑張ってくれている社長」と「社員の給料を抑えて利益を出そうと思っている社長」のどっちに人が集まるのか。そんなの明白じゃないですか。


藤村

ええ。だから僕は前者であろうと努力しています。とはいえ、ただ給与を上げれば全部うまくいくかと言われたら、そこまで甘くもないんですよね。例えば知り合いの社長さんが「ウチは何年も給料は変えてなかったけど、藤村さんの話を聞いて5万円アップさせたんだよ」って言っていたんですけど。

安田

ほう。それでどうなりました?


藤村

最初は「社員みんな大喜びでテンション上がってました!」と。ところが半年後「あれからどうや?」って聞いたら「全然儲かってない。赤字ですわ…」と(笑)。

安田

あぁ…私が体験したことと全く同じじゃないですか(笑)。確かに社員は給料が倍になればめちゃくちゃ喜ぶんですけど、だからといって社員の能力が倍になっているわけではないんですよね。


藤村

そうそう。ちゃんと売上が伴わないと、単に人件費が上がっただけで終わっちゃうんですよね。そりゃ赤字ですわ(笑)。

安田

ですよね(笑)。つまり、先ほどの話とちょっと矛盾するようですが、社長は「まず社員の給料を上げる」だけではダメで、「それ以降も上げ続けられる仕組みをどう作っていくか」も考えなければならないんですよね。


藤村

確かに確かに。もっとも、それが一番難しいところなんですけどね。

安田

ええ、それが簡単にできればどの会社も儲かっちゃう(笑)。ただ1つ言えるのは、「社員の給料を上げたい気持ちが根底にある社長」と「給料アップなんて会社が儲からなきゃできないと考えている社長」とでは、人材の集まり方が全然違う。


藤村

そりゃそうですね。「人件費を抑えるために給料は安くしとこう」なんて思ってる社長のところに、わざわざ転職してくる人なんていませんから(笑)。

安田

そうそう。そもそも「今いる社員が同じ給料のままでいつまでも残ってくれる」と思うこと自体が甘いんですよね。転職した方が給料が上がるなら、皆どんどん辞めていきますよ。


藤村

そういえばお取引のある地銀の支店長さんが「最近、ウチの給料が一気に上がったんですよ」って言ってましてね。「へぇ、なんで上がったんです?」って聞いたら「あまりにも離職者が多いから」って。

安田

なるほど、そうでしょうね。今の銀行は、採用に関しては間違いなく「負け組」になっていますから。新卒の採用も難しいし、採用できても優秀な子は数年で見切りをつけて転職していく。


藤村

その支店長曰く、「逆に私のような40代、50代の中堅層になると、給料はほとんど上がらないんです」って。「ここまできたら、辞めるわけがない」って高を括られているから。

安田

ははぁ、なかなかリアルな話ですねぇ。もっとも、実際「元銀行マン」って別業界に行ってもなかなか活躍できないんですよね。銀行独自の仕事の進め方やルールの中でガチガチに育てられてるから、一般の会社で身につくようなスキルが全く育たない。つまり転職市場では非常に不利な状態で。


藤村

逆に言えば、そういうつぶしの効かない先輩たちを見ているから、若い人たちは早めに見切りをつけるんでしょうね。ところで安田さんに聞きたいんですが、給与を上げること意外に採用力を上げる方法って何があると思います?

安田

ああ、それで言うとズバリ「社員の市場価値を高めてあげること」だと思います。


藤村

ほう、社員の市場価値を高める、ですか。会社の、ではなく?

安田

ええ、社員のです。「この会社で5年10年働けば、次に転職するときに間違いなく市場価値が上がった人材になれる」と感じさせられるかどうか、ですね。それができる会社には、若くて優秀な人材が集中するはずです。


藤村

うーん、なるほど。でもそれって、つまり最初から「いずれは転職されてしまう」ことを前提に採用するわけですよね?

安田

ええ。そう聞くと特に年配の経営者は抵抗があると思いますけど、そもそも「新卒で入社した会社で一生勤め上げる」なんて時代じゃないんですよ。つまり遅かれ早かれ皆転職していくんです。だったら「この会社で必要なスキルはしっかり教えます。その上で、あなたの市場価値が上がるようなフォローもしっかりします」というスタンスを取った方がずっとお得です。


藤村

なるほど! ウチの会社の内定式でもそういう話をしていました! 「君たちは5年で卒業や。それまでの間に君たちがどこにいっても通用できるようなスキルをお渡しする。それは約束する」って。

安田

素晴らしい! まさに今私が言ったことそのままじゃないですか(笑)。あとはどうやってその「スキル」をつけてあげるか。それを考えていくだけですね!


藤村

そうですね。それも安田さんに教えてもらわないと(笑)。

 

 


対談している二人

藤村 泰宏(ふじむら やすひろ)
株式会社フジデンホールディングス 代表取締役

Facebook

1966(昭和41)年、東京都生まれ。高校卒業後、友禅職人で経験を積み、1993(平成5)年に京都府八幡市にて「藤村電機設備」を個人創業。1999(平成11)年に株式会社へ組織変更し、社名も「株式会社フジデン」に変更。代表取締役に就任し、現在に至る。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

Twitter  Facebook

1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

感想・著者への質問はこちらから