第102回 幸福の鍵は「内的報酬」にある

この対談について

人は何のために働くのか。仕事を通じてどんな満足を求めるのか。時代の流れとともに変化する働き方、そして経営手法。その中で「従業員満足度」に着目し様々な活動を続ける従業員満足度研究所株式会社 代表の藤原 清道(ふじわら・せいどう)さんに、従業員満足度を上げるためのノウハウをお聞きします。

第102回 幸福の鍵は「内的報酬」にある

安田

藤原さんは最近、メルマガで「豊かさの定義」について書かれていますよね。「豊かさは所有している物の量ではなく、関わりの質で決まる」という話にすごく共感したんです。


藤原

ありがとうございます。もちろん生きていく上で最低限の物は必要ですが、物を所有することの延長線上に、本当の豊かさはない気がしているんです。

安田

広い庭付きの家を持っていたとして、所有すること自体も楽しいでしょうけど、それだけだといつかは慣れてしまう。でも休日に奥さんと庭の手入れをしたり、「ここに新しいテーブルを置こうか」と相談して買い物に行ったりする時間は色褪せないんですよね。


藤原

ええ。そこにテーブルという「物」が増えることよりも、そのプロセスや共有する時間そのものに豊かさを感じます。

安田

一人でも豊かに生きられるでしょうけど、価値観を共有できる誰かがいることで、豊かさはより増幅していくんでしょうね。


藤原

そうそう。もちろんそれは家族や夫婦でなくてもよくて、友達でも同僚でもいい。要するに信頼できる誰かとのつながりが人を豊かにするんだと思うんです。

安田

確かに仕事でもそうですよね。私もね、現場を社員に任せて社長業に専念していた頃は、なんだか虚しかったんです。でも会社がなくなって全部自分でやらなくてはいけなくなって、一気に変わった。自分で必死で稼いだお金で食べるご飯は、同じ1万円、2万円のものでも格段に美味しく感じて。


藤原

わかります。そう考えると、お金はただ口座にあればいいわけではないんですよね。それを得るプロセスや使うプロセスが、豊かさと密接に関係しているんだと思いますよ。

安田

ええ、本当に。そもそも仕事の本質って、結局は「誰かの役に立って喜ばれること」で、お金はその対価に過ぎませんから。


藤原

そうなんです。お金という「外的報酬」も生きるためには不可欠ですが、それと同じかそれ以上に幸せを感じるために必要なのが「内的報酬」だと思います。

安田

絶対そうですよ。例えば専業主婦の奥さんに旦那さんが給料を渡すのは「外的報酬」。それとは別に、家事や育児という仕事に対して感謝したり、褒めたりすることが「内的報酬」ですよね。


藤原

「仕事頑張ったね」と声をかけるだけでもいいし、ただ相手の話を聞いてあげるだけでもいい。何か壮大なことをしなくても、相手の存在や行動を肯定するだけで「内的報酬」になります。

安田

金銭的なリターンだけを得るなら金融投資でも十分ですけど、そういう心の報酬は人間からしか得られませんからね。


藤原

ええ、まさに。夫婦のような人間関係でもそうですし、自分が「消費者」になった場合も、サービスを提供してくれる人には「内的報酬」を与えられる人でいたいなと思います。

安田

ああ、確かに。自然に感謝の言葉が出たり、温かい料理は温かいうちに食べたりね。私も料理をするのでわかりますが、一生懸命作ったのに冷めるまで放置されたらガッカリするんですよ。


藤原

わかります。そういう意味では、飲食店でマスターにこだわりを聞いてみるのもいいですよね。「これ、どうなってるんですか?」と聞くだけで、作り手は「興味を持ってくれたんだ」と嬉しくなりますから。

安田

そう考えると、仕事も趣味も本質的にはあまり差がないんでしょうね。趣味の仲間が集まって話を聞き合うのが楽しいのと同じで、仕事もお金が介在するだけで、基本は人と人との関わり合いなわけで。


藤原

そう思います。ただ、そうやって「関わりの質」に豊かさを見出す我々とは対照的に、最近は結婚や子育てを「コスト」と捉えてしまう若者も多いと聞きます。「自由なお金や時間が減る=豊かじゃなくなる」という計算式になってしまっているんでしょうね。

安田

確かに。その辺はもっと若いうちから考える機会があったほうがいいんでしょうね。若い頃はどうしても「自由と所有」が豊かさだと捉えがちです。それだけではないと気づくのに、私自身もだいぶ時間がかかりましたから。

藤原

そういった「定義」の掛け違えが、生きづらさにつながっているのかもしれません。豊かさを感じ取る感性を磨いていくことが、人生の醍醐味なんだと思います。何より、そこに気づかないまま人生を終えてしまうのはもったいない。

安田

本当にそうですね。自分なりに豊かさの定義を考え続けることが、豊かになるための必要条件なのかもしれません。

 


対談している二人

藤原 清道(ふじわら せいどう)
従業員満足度研究所株式会社 代表

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1973年京都府生まれ。旅行会社、ベンチャー企業を経て24歳で起業。2007年、自社のクレド経営を個人版にアレンジした「マイクレド」を開発、講演活動などを開始。2013年、「従業員満足度研究所」設立。「従業員満足度実践塾」や会員制メールマガジン等のサービスを展開し、企業のES(従業員満足度)向上支援を行っている。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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