第103回 流行りの家具を買っても「満たされない」正体

この対談について

人は何のために働くのか。仕事を通じてどんな満足を求めるのか。時代の流れとともに変化する働き方、そして経営手法。その中で「従業員満足度」に着目し様々な活動を続ける従業員満足度研究所株式会社 代表の藤原 清道(ふじわら・せいどう)さんに、従業員満足度を上げるためのノウハウをお聞きします。

第103回 流行りの家具を買っても「満たされない」正体

安田

以前藤原さんが「美しいと思わないもの、役に立たないものを家に置いてはいけない」と仰っていたのが印象に残っていて。


藤原

ああ、ウィリアム・モリスという19世紀イギリスのデザイナー・思想家の言葉ですね。産業革命による大量生産の時代に、労働や生活の中に美しさを取り戻そうとした人で。すごく共感して、よく使わせていただいています。

安田

藤原さんが仰っている意味としては、別に「高価な美術品を置け」という意味ではなく、自分の家にあるものはすべて「自分が選んだもの」であるべきだ、ということなんだろうなと。


藤原

その通りです。家の中にあるものは、その人の価値観そのものですから。

安田

これって意外とできていない人が多いですよね。無自覚になんとなく家具を揃えたり、「ここが空いているから棚でも置こうか」と適当に埋めてしまったり。


藤原

よくある話です。世間一般で「美しい」とされているものや、誰かが「役に立つ」と言っているものを基準に選んでしまいがちなので。

安田

「流行りの機能がついた冷蔵庫」とか、「ゴージャスなブランド物のソファ」とかね。


藤原

そうそう。インフルエンサーが「このスタイリッシュな家具がいい」と言えば、自分が本当に美しいと思っているわけではないのに「そうかも」と思って買ってしまう。それは自分の価値観ではなく、他人の判断基準を家の中に持ち込んでいることになります。あくまでも主語は「自分」でなければいけないんです。

安田

ああ、その考え方は仕事選びにも通じますよね。その仕事が世間的にどう評価されているかではなく、自分が「美しい」「役に立っている」と思える仕事かどうかが重要で。


藤原

そうそう。そういう意味では今の若い人たちは、給料や知名度よりもそういう感覚で仕事を選んでいる人が増えているように感じます。

安田

確かに。我々より上の世代は「有名な会社で肩書きを持つこと」こそが美しいと信じ込まされてきましたよね。それが行き過ぎて、定年退職してからも地域の集まりで現役時代の名刺を出す人がいるらしいですよ。「元〇〇商事の部長です」って。


藤原

それはちょっと悲しいですし、虚しさすら感じますね。まぁ、過去の肩書きを確認し合うことがコミュニケーションになっているコミュニティもあるのかもしれませんが。

安田

人の価値観や世間の基準に振り回されすぎると、そうなってしまうんでしょうね。そうではなく、「職業は安田佳生です」と言えるくらいになればいいのに、と思ってしまいます。


藤原

ああ〜、いいですね。それが理想なのかもしれない。職業は役割、つまり自分の魂をどう使うかという指針なわけで、そこを意識していないと、無自覚に誰かの判断基準が自分の中に入り込んでしまう。どんなにお金をかけてもどこか満たされないのは、判断基準が自分のものではないからかもしれません。

安田

そうかもしれませんね。そういえば15年くらい前に誕生日祝いでロイヤルコペンハーゲンの小さなゾウの陶器をもらったことがあって。あまり興味が湧かなかったんですが、1年くらい前に「なぜゾウをくれたんだろう」とふと気になって調べてみたんです。


藤原

確かに、他の動物でもよさそうですよね。

安田

でしょう? で、わかったのが「絶滅危惧種をモデルにしている」というコンセプトだったんです。そのシリーズの「サイ」の陶器も売っていたりして。一つ一つ手作りだから微妙に表情が違うんです。


藤原

へぇ、なんだか並べて置きたくなりますね。

安田

ええ、まさに。1個2万円くらいするんですが、迷った結果自分で買って並べたんですよ。そしたら今まで何とも思わなかったゾウまで愛しく思えるようになったんです。

藤原

ははぁ、素晴らしいストーリーですね。いただき物のゾウと、自分で選んだサイが組み合わさった時、安田さんだけの美意識の空間が完成したと。

安田

妻には「またそんなものに2万円もかけて!」と怒られましたけどね(笑)。でもそういう「自分だけの感覚」ってあるじゃないですか。

藤原

わかります。もちろん誰かと共有するスペースではある程度の妥協が必要ですけど、自分だけのスペースに関しては、徹底的に自分の内側の基準で構成したいですよね。安田さんが選んだサイも、単体としての美しさ以上に、ゾウとのバランスを含めた「安田佳生の美意識」が選ばせたんだと思います。

安田

そうなんです。ゾウまで愛しく見えてくるというのが本当に不思議で。こういう感覚を大事にすることが、心の豊かさなんでしょうね。


対談している二人

藤原 清道(ふじわら せいどう)
従業員満足度研究所株式会社 代表

Twitter note

1973年京都府生まれ。旅行会社、ベンチャー企業を経て24歳で起業。2007年、自社のクレド経営を個人版にアレンジした「マイクレド」を開発、講演活動などを開始。2013年、「従業員満足度研究所」設立。「従業員満足度実践塾」や会員制メールマガジン等のサービスを展開し、企業のES(従業員満足度)向上支援を行っている。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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