人は何のために働くのか。仕事を通じてどんな満足を求めるのか。時代の流れとともに変化する働き方、そして経営手法。その中で「従業員満足度」に着目し様々な活動を続ける従業員満足度研究所株式会社 代表の藤原 清道(ふじわら・せいどう)さんに、従業員満足度を上げるためのノウハウをお聞きします。
第107回 AI時代に人間が磨くべき「抽象化」の力

ええ。物事を抽象化する作業って、実はものすごくエネルギーがいる面倒なことなんですよね。だから、わかりやすい答えをすぐに求めたくなる。昔の演歌の歌詞なんて、子供が聞いても意味がわからない抽象的なものが多かった気がするんですけど(笑)。

例えば『サピエンス全史』のような専門書を読んだり、『星の王子さま』のような抽象度の高い物語を楽しんだりすることを好む人が多いです。『星の王子さま』なんて、答えを求めて読むものじゃないじゃないですか(笑)。

ええ。本当は映画って、目の前の映像を自分の頭の中で抽象化して、自分の人生と重ね合わせたり、描かれていないシーンを想像したりするのが醍醐味じゃないですか。早送りではその「味わい」や「膨らみ」が得られない。

要は、目の前の具体的な事象から要素を抽出して、別のことに応用する思考ですよね。例えば野球やスポーツの試合を見て、「あ、このフォーメーションの動きって、うちの組織運営にも活かせるな」とイメージできるかどうか。こういう「中間レイヤー」の抽象化が、日本人は少し苦手なのかもしれません。

確かにそうですね。野球そのもので見ても、その思考の違いは感じます。アメリカのメジャーリーグって、「野球は観客を楽しませるショーである」という「目的」が一番上にあって、そのためにルールも大胆に変えるじゃないですか。

「DH制(指名打者)」の導入なんかは象徴的ですよね。ピッチャーが打席に立っても打てないし、盛り上がらない。だったら打つ専門の人を入れたほうが、観客を楽しませるという「目的」に適うだろう、という合理的な判断です。

そうそう。「楽しませる」という目的のために、「ピッチャーは打たない」というふうに具体的な「手段」を変えているわけです。でも日本的な思考だと、「いやいや、ピッチャーが打席に立ってこそ野球だ」とか「苦手に立ち向かう姿に情緒があるんだ」という話になりがちで。

ああ、わかります(笑)。「ピッチャーがたまにホームランを打つのが面白いんだ」みたいな美学ですよね。でもビジネスでイノベーションを起こすには、「本来の目的は何か」という抽象度の高い問いを立てられるかどうかが鍵なんでしょうね。

そうなると、人間がやるべきことって限られてきますよね。「答え」はAIが出してくれるんだから、人間はその答えを見てどう解釈するか、どう自分の人生に意味づけするか。つまり、「抽象化」の部分しか人間に残らなくなる気がします。

仰るとおりです。AIという便利な道具が進化すればするほど、逆に「じゃあ、人間ならではの価値って何?」という、「人間らしさ」が問われることになる。私はその「人間らしさ」が試される時代になることに、すごくワクワクしているんです。
対談している二人
藤原 清道(ふじわら せいどう)
従業員満足度研究所株式会社 代表
1973年京都府生まれ。旅行会社、ベンチャー企業を経て24歳で起業。2007年、自社のクレド経営を個人版にアレンジした「マイクレド」を開発、講演活動などを開始。2013年、「従業員満足度研究所」設立。「従業員満足度実践塾」や会員制メールマガジン等のサービスを展開し、企業のES(従業員満足度)向上支援を行っている。
安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。


















