人は何のために働くのか。仕事を通じてどんな満足を求めるのか。時代の流れとともに変化する働き方、そして経営手法。その中で「従業員満足度」に着目し様々な活動を続ける従業員満足度研究所株式会社 代表の藤原 清道(ふじわら・せいどう)さんに、従業員満足度を上げるためのノウハウをお聞きします。
第116回 「儲かれば正しい」という“必中正射”の罠

正しいプロセスを踏めば、必ずよい結果が出るということですね。もし的に当たらない、つまり利益が出ていないのだとしたら、その考え方や姿勢、やり方のどこかが間違っているから、そこを変えなきゃいけないという。

その通りです。儲かっているという「結果」だけを根拠にして、自分は正しいことをしているんだ、正しいはずだと自己正当化していく。似ているようで全く非なるもので、この逆転した考え方に陥ると、やはり組織や人はよくない方向に向かってしまいます。

そうかもしれません。私自身も過去に組織を崩壊させてしまったのは、この必中正射の考え方で経営をやっていたからじゃないかと。よほど金儲けのセンスがずば抜けている人なら、お金という意味では一生破綻せずに続けられるかもしれませんが。

ええ。結局それだと長続きしなかったり、人がどんどん離れていったりします。心から信頼できる人間関係や、心の深い部分での満足感といったものは確実に破綻していくと思うので、やはりビジネスは「正射必中」であるべきなんでしょうね。

正しいプロセスを踏んでいれば必ずいい結果が出るというのは間違いないけれど、結果が出るまでにはどうしても時間がかかることが多い。一方で、姿勢も考え方も全く正しくないけど、とりあえず的に当てて利益を出している会社はすぐには潰れない。

正しい姿勢で90点まで来ているけどまだ100点には至らず利益が出ていない会社と、15点の姿勢だけど的に当てることだけを優先して利益を出している会社。姿勢を追求するあまり、利益が出る前に会社がなくなってしまうこともあるんじゃないかと思うんです。

それでいうと、姿勢が正しいのに利益が上がっていないとしたら、「その姿勢は本当に正しいのか?」という問いを自分に投げかけなきゃいけないサインだと思っているんです。自分の主観ではお客様のためになっていると思っていても、実は独りよがりだったりするかもしれないなと。

ほう、なるほど。お客様とのやり取りの中で、その価値がちゃんと届いていないとか、ニーズとズレているということに気づかなければならないわけですね。それでいくと、今70点の状態を85点、90点にしていく努力はもちろん正しいことだと思うんです。

でもその85点にする努力よりも、とりあえず15点でもいいからお客様からお金を取ってくる、つまり「的に当てる」努力を優先した方が、会社としては生き残りやすいですよね。そこはどうバランスを取るんでしょう。

先日もある人から聞いたんですが、営業の社員が「このお客さんは取引しない方がいいんじゃないか」と上司に相談したら、「いや、黙って取ってこい。今はお金が必要なんだ」と言われたそうで。もちろん会社が潰れてしまっては元も子もないでしょうけど。

正直、私自身もそういう仕事を取ってきた経験はあります。長くお付き合いしたい相手ではないけれど、今私たちの金銭的な屋台骨を支えてもらうためには必要だと。ただ自分たちの絶対に譲れない一線だけは超えないという前提ではありましたが。

多少のリスクを冒してでも、本当に付き合いたいお客さんだけを選別して、そうでないお客さんを切るという決断ができる経営者はものすごく少ない気がします。だから私は、最初から「正しい姿勢」だけで行くしかないんじゃないかと思うんです。

その時間を稼ぐためにこそ「資本金」というものがあるんじゃないかと思うんです。仕入れや設備投資のためではなく、正しいことを追求して会社が軌道に乗るまでの時間を買うためのお金。銀行の借り入れも本当はそういう理由で使うべきなんじゃないかと。

だからこそ、今雇われていてやりたくない仕事をお金のために我慢してやっている人がいるとしたら、いきなり会社を辞めて起業するのではなく、自分が正しいと思うことをやって、収益が出るまでは二足のわらじでやっていく。そういうのも一つの手だと思います。
対談している二人
藤原 清道(ふじわら せいどう)
従業員満足度研究所株式会社 代表
1973年京都府生まれ。旅行会社、ベンチャー企業を経て24歳で起業。2007年、自社のクレド経営を個人版にアレンジした「マイクレド」を開発、講演活動などを開始。2013年、「従業員満足度研究所」設立。「従業員満足度実践塾」や会員制メールマガジン等のサービスを展開し、企業のES(従業員満足度)向上支援を行っている。
安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。


















