第87回 「自分の歴史」は何度でも書き換えられる

この対談について

人は何のために働くのか。仕事を通じてどんな満足を求めるのか。時代の流れとともに変化する働き方、そして経営手法。その中で「従業員満足度」に着目し様々な活動を続ける従業員満足度研究所株式会社 代表の藤原 清道(ふじわら・せいどう)さんに、従業員満足度を上げるためのノウハウをお聞きします。

第87回 「自分の歴史」は何度でも書き換えられる

安田

藤原さんが以前Xで「未来も過去も変えられる」と仰っていたのが印象に残ってまして。というのも、「過去は変えられないが、未来は変えられる」とよく言いますけど、私もあれは違うんじゃないかと思っているんですよ。


藤原

そうですよね。厳密に言うと、起こった出来事(=過去)そのものは変えられませんけど、その出来事に対する「意味づけや評価(=歴史)」は、未来の結果次第でガラッと変わることがある。

安田

すごくよくわかります。やったことは同じなのに、周りの評価、つまりその人の「歴史」が書き換えられていくわけですね。私の人生がまさにそうで、いろいろなことから逃げ続けてきたんですけど、うまくいかないうちは「やっぱりそういう奴はダメだな」と言われてたんですよ。


藤原

ところがうまくいき始めると今度は一転して、「成功する人間はやはり行動が違う」なんて言われる(笑)。

安田

そうそう(笑)。出来事は同じでも、解釈次第で価値は全く変わるんですよね。


藤原

そうなんですよ。例えば彼女に振られたという「過去」も、その経験のおかげで人の痛みがわかるようになった、と考えれば、それは自分を成長させた良い「歴史」になりますからね。

安田

その意味付けによって、素晴らしい未来を築いていけるわけですよね。そしてそれは個人レベルの話だけではなくて。例えば日本に原爆を落としたことに対するアメリカの世論が世代によって分かれるのも、そういうことだと思うんです。


藤原

確かにそうですね。誰がどの方向から評価するかで、歴史は変わってしまう。

安田

そうなんです。よく「歴史は勝者によって作られる」と言いますが、それも解釈の一つですよね。


藤原

歴史上の人物として有名な坂本龍馬だって、我々が知っているのは司馬遼太郎という作家が解釈し、紡ぎ出した人物像でしかないわけで。実際の龍馬がどんな人間だったかなんて、本当のところは誰にもわかりませんから。

安田

その通りです。とはいえ、その物語を読んで多くの日本人が誇りを持ち、明日への活力にしたのなら、それは素晴らしい「歴史の解釈」だと思いますけどね。つまり解釈は無数にある。自分の人生ですら、記憶は曖昧だし、都合よく書き換わっていることなんてザラにあるわけで(笑)。


藤原

ありますね(笑)。結局、人間が認識する以上、そこには必ず「解釈」というフィルターがかかるんですよ。「真実はいつも一つ」なんて名探偵のセリフがありますけど、実際には解釈の数だけ真実があるのかもしれません。

安田

確かに。だとしたら、少なくとも自分の人生の歴史くらいは、自分が一番幸せになるように「自分に都合よく」解釈しちゃえばいいという気がしてきますね(笑)。どんな辛い出来事も、「あれは自分を成長させるために神様が与えてくれたギフトだったんだ」と思えばいい。


藤原

同感です。自分の人生の主導権を自分で握る、ということですよね。その物語をどう紡ぐかは、完全に自分次第ですから。そうすることで自己肯定感も高まりますし、何より生きるのが楽しくなります。

安田

ちなみに私は、特定の宗教を信じているわけではないですが、「基本的に神様は私をえこひいきしている」と固く信じているんです(笑)。これが私の人生の大前提なんですよ。


藤原

おお、それは最強の解釈ですね!

安田

ええ。この大前提に立つと、どんな不運な出来事が起きても「私を愛してやまない神様が、わざわざこんな試練を与えたからには、よっぽど深い意味があるに違いない」と解釈できる。すべてが自分を成長させるためのポジティブな「歴史」に変換されるんです。


藤原

いやあ、素晴らしい。「自分は天から愛されている」と思える人は、本当にその通りの人生を歩んでいくと思います。だって、そういう風に世界を解釈しているわけですから。逆もまた然りで、自分は不幸だと思っている人は、どんな幸運も不幸の材料として解釈してしまう。

安田

不思議なものですよね。そういえば、私も子どもの頃は「なんで自分だけこんなに不幸なんだ」と思っていました。それがどこかのタイミングで、この「えこひいき解釈」に切り替わったんです。

藤原

なるほど、面白いですね。実は僕もそれに近くて、昔は結構ネガティブ思考だったんです。でもそれがいつからか変わったんですよね。今考えると、何がきっかけだったのか思い出せないんですけど(笑)。

安田

どこかでふと気づいたんでしょうね。もしかしたら、知らない間に宇宙人にさらわれていたりしたのかもしれない(笑)。

藤原

その可能性はありますね(笑)。そのくらいいつの間にか変わってましたから。きっとどこかのタイミングで「あれ、もしかしたらこれってすごく面白い人生なのかもしれない」って気づいた瞬間があったんでしょうね。その気づきが積み重なって強化されていった。

安田

そうですね。明石家さんまさんも言ってましたけど、「生きてるだけで丸儲け」だと。それこそ生きているだけで、この地球に生まれてきたこと自体が、とんでもない奇跡で、えこひいきされている証拠なんだと気づいたのかもしれません。

藤原

本当にそうですね。そのことに気づけるかどうか。僕らにできるのは、この与えられた奇跡的な人生という素材を使って、自分だけの最高の「歴史」を、自分の手で創り上げていくことなのかもしれません。

 


対談している二人

藤原 清道(ふじわら せいどう)
従業員満足度研究所株式会社 代表

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1973年京都府生まれ。旅行会社、ベンチャー企業を経て24歳で起業。2007年、自社のクレド経営を個人版にアレンジした「マイクレド」を開発、講演活動などを開始。2013年、「従業員満足度研究所」設立。「従業員満足度実践塾」や会員制メールマガジン等のサービスを展開し、企業のES(従業員満足度)向上支援を行っている。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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