その103 監督責任

景気の悪い話題しか持っていなくて恐縮でございますが、
スポーツで相撲というのがありまして、これがとにかく不祥事が多く、
最近でもある現役力士が一発で引退になる、
事実上クビになるという事件がありました。

その後流れてきた話によると、
当該の力士は後輩に対する度を超えたイジメを行っており、
いまの世の中では即アウトになることは明白だったのですが、
当方がショックだったのはその師匠も
かなり重大な監督責任を取ることになったことです。

相撲というのは部屋制度というものがあり、
日々のトレーニングは「部屋」というグループ単位で行われています。
部屋はスポーツクラブやジムのような練習場所という役割をこえて、
合宿所のような同じ屋根の下で
トレーニングの時間だけでなく文字通り寝食を共にするという、
師匠という「親」と力士たち「子」による疑似家族のような空間です。

そういう世界であるがゆえに
普通のスポーツに比して親たる師匠の責任は大きいといわれるわけですが、
今回の師匠というのは
現役時代は空前絶後の傑出した実績を残した人物であり、
かつ、おそらく指導者としてももっとも有能な人物のひとりであったことが
とにかく驚きでありました。
(けっこう嫌う人が多いのも事実ですけど……)

名を成したスポーツ選手がイベントなどで
子供たちの育成を後押しすることは少なくありませんが、
その師匠はジュニアの大会を自主開催するほどのことをしていましたし、
今回の不祥事を起こした力士との出会いは相手が5歳のころまでさかのぼるそうです。
プロの数がここ30年で1000人から600人まで減少した業界なので、
ジュニアへの種まきやスカウティングは最重要事項なのです。

しかし、いかに業界に貢献していようと
犯罪まがいのイジメに対して適正な処置を行わなかったことには
重大な瑕疵があったというのが今回の処分です。

個人的にもそれはまあ、そうなんだろうと思いますし、
と同時に、どうすれば良かったのか、とも思わずにいられません。

はた目にも才気あふれる若者が自分の会社に就職してきて、
ヨシヨシと思っていたら実のところ完全にヤバい奴だった。
とても言って聞かせられるレベルではなく、
ある日それが露見したとき、
今度はそいつのヤバい行動を制御、制止できなかったことについて
社会から徹底的に糾弾される。

先に申し上げた疑似家族的な構造の特殊性はありますが、
たとえるならそういうことかと思います。

……これ、誰ならどうすることができたのでしょうかねえ。

 

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著者自己紹介

「ぐぐっても名前が出てこない人」、略してGGです。フツーのサラリーマン。キャリアもフツー。

リーマン20年のキャリアを3ヶ月分に集約し、フツーだけど濃度はまあまあすごいエッセンスをご提供するカリキュラム、「グッドゴーイング」を制作中です。

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