今週は。
3月11日、
東日本大震災から9年がたった。
私には、この日が来るたびに、
思い出すことがある。
震災後、大勢の人たちから
お悔やみの言葉が発せられた。
そのなかで私の心に
最も深く刺さったのは、
北野武氏が週刊ポスト誌上で語った
次のような言葉だった。
今回の震災の死者は1万人、
もしかしたら2万人を
超えてしまうかもしれない。
テレビや新聞でも、
見出しになるのは
死者と行方不明者の数ばっかりだ。
だけど、この震災を
「2万人が死んだ1つの事件」
と考えると、被害者のことを
まったく理解できないんだよ。
じゃあ、8万人以上が死んだ中国の
四川大地震と比べたらマシだったのか、
そんな風に数字でしか
考えられなくなっちまう。
それは死者への冒涜だよ。
人の命は、
2万分の1でも8万分の1でもない。
そうじゃなくて、そこには
「1人が死んだ事件が2万件あった」
ってことなんだよ。
このインタビュー記事を目にしてから、
私は個人的にできることはないかと思い、
ひとつのことを始めた。
それは新聞やウェブで紹介される
亡くなられた方々のエピソードを
エピソードの主人公である
名前とともに書き貯めることだった。
たくさんの生き残った人が、
たくさんの亡き人の思い出を語っていた。
短い文章もあれば長い文章もあった。
エピソードがWordにして
100ページを超えたとき、
私は書き貯めたエピソードを
ウェブサイトにまとめようと考えて
友人のアートディレクターに声を掛けた。
アートディレクターは自身が
被災地の岩手出身だったこともあり、
快く引き受けてくれた。
ウェブサイトの出来はとても良く、
新しいエピソードも追加し、
あとはアドレスを
世界へ向けて
解放すればよいばかりとなった。
3.11Requiem.com
しかしながら、私は
そのウェブサイトを公開できなかった。
自分でもよくわからないのだが、
公開すべきでないように思えたのだ。