変と不変の取説 第8回「日本には自治体がない?」

「変化だ、変化だ、変化が大事だ」とみなさんおっしゃいますが、会社も商品も人生も、「変えなくてはならないもの」があるのと同様、「変わらないもの」「変えてはならないもの」もあるのです。ではその境目は一体どこにあるのか。境目研究家の安田が泉先生にあれやこれや聞いていきます。

 第8回 「日本には自治体がない?」

前回「武士はサラリーマン?」では、職人文化が盛んだった江戸時代について話を繰り広げました。町人は物を作る専門家。商人は目利きをし流通させる。武士はお役所仕事で主に奉公。

安田

「武士はサラリーマンだった」って話ですけど。

はい。

安田

サラリーマンというか、つまり藩の公務員だったんですよね。

そうです。藩の官僚。

安田

藩がなくなって、公務もなくなって、滅んでしまった。

最後はサムライの誇りにかけて反乱を起こしたけど、負けて終わり。

安田

今後はどうなんですか。公務員の仕事ってなくならないんでしょうか?

公的な仕事がなくなることはないでしょうけど、人数は減っていくと思います。

安田

どのくらい減りますか?

激減すると思います。

安田

公務員がやってる仕事って、AIに取って代わられやすいですよね?

そうなんです。だから、明治維新じゃなくて「AI維新」みたいになると思います。

安田

AI維新で公務員が激減すると。

はい。今の1割ぐらいになるんじゃないですか。

安田

そんなに減りますか!

減ると思います。

安田

官僚の偉い人たちは、そうなる未来を予想してるんですか?

もちろん予想してますよ。というか、すでにその準備を始めてます。

安田

そうなんですか!

たとえば市役所や区役所の現場は、少しずつ派遣やアルバイトに変わっていってるんですよ。

安田

どうやって入れ替えてるんですか?

誰かが引退したら、その仕事を回すために派遣やアルバイトを雇うんです。

安田

じゃあ、これからは公務員をどんどん雇わなくなっていくと。

そうです。

安田

機械にも置き換わっていってますよね?印鑑証明とか。

どんどん、そうなっていきます。

安田

昔は市役所で書類ひとつもらうのに、何人もたらい回しにされてましたよね。「なんでこれ出てくんのにこんな時間かかんの?」って感じでした。

無意味な仕事が多かったんですよ。

安田

どうしてそんな無意味な仕事があったんですか?

だって中の人たちは、仕事がないと困るじゃないですか。

安田

じゃあ、中の人のために「仕事を無理矢理つくってた」ってことですか?

そうですよ。自分の仕事がなくなったら嫌ですからね。

安田

なんと!

だから、公務員の人たちは、IT化とかに対してものすごく遅れてるんですよ。

安田

IT化したら自分の仕事がなくなっちゃうから?

そうです。自分の仕事がなくなるからです。

安田

じゃあ、いつまで経ってもIT化が進みませんね。

ほっといたらやらないので、上からお達しを出すわけです。「こういうところをIT化せよ」って。

安田

で、仕方なくやる。

そう、仕方なく安心できる大企業に高いお金払ってやってもらうんですよ。

安田

「上」っていうのは政治家のことですか?

霞が関です。

安田

霞が関っていうことは、官僚のいちばん偉い人?

官僚のいちばん上にいる人たちですね。

安田

官僚のいちばん上の人は、市役所の職員のことを同僚だとは思ってないんですか?

思ってないですね。

安田

同じ公務員なのに。

中央で指示する側と、地方で指示された通りに動く側。

安田

殿様と足軽みたいなもんですか?

まあ、そんな感じです。日本には自治体がないんですよ。

安田

自治体がない?

自治してないんですよ。

安田

でも「自治体」っていうじゃないですか。

名前だけです。実際は自ら治めてないんです。中央集権ですから、日本は。

安田

昔からそうなんですか?

江戸時代までは、藩が自治をやってました。明治維新で変わったんですよ。

安田

でも「地方分権」って言われてるじゃないですか。

ぜんぜん出来てないから「地方分権」がスローガンになるんですよ。出来てたら掲げる必要ないでしょ?

安田

確かに。

だから橋下さんとかは大阪都構想で「州みたいなもの」を作ろうとしたわけです。アメリカは州がかなり自治をしてるので。

安田

アメリカの州は自治体と言える?

自分たちで法律を作って軍も持っていますから。

安田

日本は違うんですか?

日本は中央でしか法律を決められない。

安田

条例とかは決めれますけど。

条例なんて法律に比べたら、ぜんぜん拘束力ないですから。

安田

なるほど。でも実際どうなんですか?

何がですか?

安田

「これからは地方分権だ」って叫んでますけど、やれる人いるんですか?地方に。

ほぼいないです。

安田

市役所や区役所の役人では出来ない?

出来ないですね。指示されたことをやるのが仕事なので。

安田

だからAIに取って代わられてしまうと。

その通りです。

安田

じゃあ、最後は「西南戦争」みたいな、士族ならぬ公務員の反乱が起こるんですかね?

士族は「自分たちの誇りや義のために死ねる」わけですけど、公務員の人たちは義のために生きていませんので。

安田

公務員だって「国家、国民のため」という義がありそうですけど。

ないです。もし義があれば、各自治体から維新の志士のような人物が出てくるはず。

安田

お国のために、やってんじゃないんですか?

生活の安定のためです。

安田

そうじゃない人もいるでしょ?

ごく一部。官僚の上の方にはいますね。

安田

でも官僚の上の方は「公務員を減らす」という方針だと。

そういうことです。だからもう、止められないんですよ。この流れは。

安田

でも、さすがに企業と違って、公務員をリストラするわけにはいかないですよね?

だから、徐々に自然減なんですよ。

安田

自然減?

たくさん引退していくじゃないですか、これから。

安田

確かに。

どんどん引退していくんですけど、入る人をどんどん減らしていって、派遣スタッフとアルバイトとパートに置き換えて行く。

安田

なるほど。で、最後はAIで回るようになったら派遣もアルバイトも終了。

はい。その通り。

安田

公務員目指してる高校生とか、今でも結構いますけど。

安定を得たいなら目指さないほうがいいです。

安田

目指すんだったら、トップの官僚とかですか?

そうです。最後に残るのは、意思決定する人だけです。

…次回へ続く…


場活師/泉一也と、境目研究家/安田佳生
変人同士の対談


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第1回:「変わるもの・変わらないもの」
長い間、時間をかけて構築された、感覚や価値観について問い直します。

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