変と不変の取説 第15回「緩やかな洗脳、快適な植民地」

「変化だ、変化だ、変化が大事だ」とみなさんおっしゃいますが、会社も商品も人生も、「変えなくてはならないもの」があるのと同様、「変わらないもの」「変えてはならないもの」もあるのです。ではその境目は一体どこにあるのか。境目研究家の安田が泉先生にあれやこれや聞いていきます。

 第15回 「緩やかな洗脳、快適な植民地」

前回第14回は「カルロスゴーンとは、何だったのか」

安田

今日は是非、泉さんに聞きたいことがあるんですけど。

何でしょう?

安田

日本って「独立国」なんですか?

何をもって独立国なんですか?

安田

主権があるかどうかですよね、普通は。

たぶん主権はあると思います。

安田

でもアメリカ軍は、撤退してませんけど。

それは「合意の上で」ってことになってます。

安田

一応「主権は戻った」ことになってますよね。それって、いつ頃のことでしたっけ?

1951年のサンフランシスコ講和条約ですね。

安田

終戦は1945年ですよね?

そうです。ポツダム宣言です。

安田

じゃあ、その間は、まったく主権がなかった?

そうです。GHQに7年前後占領されてて、その間に色んな「過去の分断」があったわけです。

安田

いま、沖縄は「基地をつくらせるな!」って民意ですけど。

そうですね。

安田

日本政府に訴えかけてますよね?

はい。

安田

問題なのは、決める権限が果たして「日本政府にあるのか」ってことなんですけど。

実質的には、ないでしょうね。

安田

ですよね。自分たちでは決められない。だって東京都の上空ですら、勝手に飛べないんですよ。

占領されてた国なので、今でも色んなところが縛られた状態なんですよ。

安田

まだ縛られてますか?

はい。

安田

一説には「アメリカの国債を売ると暗殺される」なんて言われてますけど。

そこまではしないでしょうね。

安田

でも田中角栄さんだって「勝手に中国と手を結んだ」みたいなことで、足引っ張られたじゃないですか。

そういう説もありますね。

安田

じゃあ、現実は違うと?

アメリカが明確な指示を出して、失脚させたわけじゃないと思います。

安田

何か密約があるような気がするんですけど。

軍事に関してはあるでしょうね。表に出せない密約が。

安田

じゃあ政治に関してはどうなんですか?密約はないんですか?

本当のところは分かりませんけど、私は密約ではなく、忖度だと思います。

安田

日本の国内で、勝手に「アメリカの顔色を伺って、忖度してる」ってことですか?

そう思いますね。べつに強制じゃないのに、忖度して、変なルールをつくって、自分たちで動けなくしてる。

安田

じゃあ本当は、日本にも主権があって、もっとアメリカにもモノを言える?

権利としては言えるけど、言わないんでしょうね。

安田

でも政治家もコメンテーターも「日米同盟は絶対外せない」って言いますよ。

だからそれは、お互いに空気を読み合ってるんですよ。

安田

「中国やロシアと、もっと仲よくしといたほうがいい」っていう意見があってもいいと思うんですが。

テレビに出るような人は、そんな怖いことは言えないでしょうね。

安田

暗殺されるからですか?

(笑)いや、テレビ局に干されるからです。

安田

なぜみんな、そこまでアメリカに忖度するんですか?

太平洋戦争で負けて、子分になったからですよ。

安田

子分ですか?

ヤクザと一緒ですよ。親分が睨みをきかせてるんです。

安田

じゃあ「親分にビビって、何も言えない」ってことですか?

べつにルールはないけど、そこから出られないってことです。

安田

反抗すると、どうなるんですか?

いろいろ、やられるじゃないですか。高い関税かけられたりとか。

安田

そんなの、突っぱねたらいいじゃないですか。

いや、それは怖くてできない。

安田

なぜ怖いんですか?だって法的には手が出せないんでしょ?

それはヤクザの子分に「親分なんて突っぱねたら、ええやないか」って言うのと一緒。「それは安田さん、無理っすよ」ってなります。

安田

なるほど。もう怖さが刷り込まれてるわけですね。

そう。刷り込まれてるんですよ。

安田

占領されてた頃は「イエスマンの政治家や官僚」が上部に据えられたんですか?

そうでしょうね。

安田

それから相当、時間経ってるじゃないですか。

はい。

安田

新たな官僚とか、新たな政治家とかに、入れ替わってるはずですよね。

もちろん、何度も入れ替わってますよ。

安田

にも関わらず、時間が経つほどに、忖度が強くなってるように見えるんですけど。

生まれた時からそうなので、気がつかないんですよ。

安田

生まれた時から?

生まれた時から縛られてる。刑務所の中で生まれたみたいなものなので。

安田

何と!

だから不自然じゃないんですよ、刑務所の中が。「これが世界や」という感じ。

安田

たとえばイラクみたいに「アメリカが無理やりケンカふっかけて占領した」に等しい国ってあるじゃないですか?

ありますね。

安田

でも、日本ほどうまく統治できてないじゃないですか。アラブの人とか、ぜんぜん言うこと聞かない。「アメリカ死ね!」とか平気で言うじゃないですか。

言いますね。イランなんて「国交断絶しても、べつに平気ですわ」みたいな。

安田

なぜ日本だけ、こんな風になったんでしょうか?

やっぱり、徹底的に叩かれたからでしょうね。

安田

イラクだって、徹底的に叩かれたじゃないですか。

規模も徹底度も、ぜんぜん違いますね。日本はぜんぶの都市、焼け野原ですから。沖縄なんてものすごい数の住民が死にました。次元が違う。

安田

確かに。普通に住民が暮らしてるところに、原爆落とされてますからね。

2発の原爆だけで、20万人以上の市民が死んでますから。

安田

今だったら国際問題になりますね。じゃあ当時はもう、むちゃくちゃな統治をされてたんですかね?

何から何まで、ぜんぶ検覧されて、ちょっとでも昔の国体的なことやるとアウトでしょうね。

安田

なるほど。そこまで徹底的にやられたわけですね。

日本人の中軸にあったものを、すべて断絶させて拠り所をなくしたんですよ。

安田

たとえば、どんな?

日本の国体のベースが天皇だったので、まずその繋がりを断絶させることによって、バラバラにしたんでしょうね。

安田

どうやって?

たとえば「俺のほうが偉い」ということを国民に分からせるために、天皇とマッカーサーの写真を撮ったり。

安田

そこまで考えて、あの写真って撮られてるんですか?

もちろん考えてるでしょう。だから自分から行くんじゃなくて、マッカーサーの部屋に呼び出してる。

安田

あれって、そういう写真なんですか?

そうですよ。「呼び出されて写真撮りました」っていう写真。ちょこんと立っておられる昭和天皇の横で、でっかく写ってるマッカーサー。

安田

なるほど。なぜフセインでは、やらなかったんですか?

イラクの場合は、フセインではなくイスラム教が中軸なんですよ。イスラム教は破壊できない。

安田

でも日本人だって、天皇教みたいなものだったのでは?

日本の場合は「天皇という人間」だったので、そこを離しちゃうことができた。でもイスラムは神ですからね。神との絆はバラバラにできないでしょう。

安田

じゃあ、天皇陛下に向かっていた求心力を、アメリカに向けさせたってことですか?

そうでしょうね。

安田

じゃあ今も、日本人のロイヤリティーって、アメリカに向かってるんですか?

今はどうかわかりませんけど、かなり長い間そっちに向いてましたね。アメリカ文化がどんどん入ってきて、アメリカに追いつけ追い越せで。

安田

アメリカに保護されて「ここまで復活した」みたいに、言われてるじゃないですか?

そういう面は否定できないですね。

安田

でも、言ったら「体のいい植民地」みたいなもんだと思うんですけど。

ですね。国債は買わされるし、為替もコントロールされるし、武器は買わないかんし、軍の駐留費はぜんぶ出さなあかんしっていう。

安田

なんで日本人は「本当の主権を取り戻そう!」みたいにならないんですか?

それでもご飯食べれてるし、困ってないからじゃないですか。

安田

え?この状況を「受け入れちゃってる」ってことですか?

そうですよ。

安田

今でもアメリカのトップは「日本はアメリカの植民地だ」って自覚してるんですか?

してないと思います。

安田

じゃあ、日本人が勝手に植民地化されてる?

自ら「快適な植民地」に閉じこもってるんですよ。

…次回へ続く…


場活師/泉一也と、境目研究家/安田佳生
変人同士の対談


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第1回:「変わるもの・変わらないもの」
長い間、時間をかけて構築された、感覚や価値観について問い直します。

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