「変化だ、変化だ、変化が大事だ」とみなさんおっしゃいますが、会社も商品も人生も、「変えなくてはならないもの」があるのと同様、「変わらないもの」「変えてはならないもの」もあるのです。ではその境目は一体どこにあるのか。境目研究家の安田が泉先生にあれやこれや聞いていきます。
第24回「コントロールからサポートへ」
前回第23回は「北朝鮮とキューバ」
最近、猟をする女子が増えてるそうです。
狩猟女子ですよね。
ちょっと前は、農業をする女子も増えてたじゃないですか。
農ジョでしたっけ。
農業とか漁業とかマタギとか、なぜか急に人気が出てきたんですかね?
自由度が高くて、「かっこいい」っていうイメージなんじゃないですか。
かっこいい?
かっこいい。そのスタイルが。
確かに。昔は「漁師のオヤジに憧れて、跡を継ぐ」みたいなのが普通だったんでしょうね。
自分の父親だけじゃなくて、周りにそういう人がいっぱいいたんですよ。昔は。
今は周りに会社員しかいませんもんね。
だから最近、地方自治体とかが「体験ツアー」みたいなのを企画してますね。
それは、後を継ぐ人を増やすためですか?
そうです。体験した人が弟子になったり、そこに移住したり。だんだん、そういう人が増えてきてますね。
勝手なもんですね。
どうしてですか?
だって、JAなんて米作りする人を規制してたし、漁協だって既得権みたいなので参入を阻んできたじゃないですか。
漁業権ですね。
泉さんから見ると、JAとかって必要なんですか?単なる既得権のようにも見えちゃうんですけど。
産業が発達してないときは必要だったんですよ。インフラを整備したり、農家の人たちにお金を貸したり、情報を提供したり。
なるほど。
それで「農家の人たちが助かった」という時代があったのは事実。でも、それは昭和の時代。今は情報もあるし、自分たちで発信もできる。
自分で販売もできちゃいますもんね。
販売もできちゃうので、要らなくなってきている。
でも、「農協から外れるといじめられる」みたいな噂も聞きます。
農協の集まりに呼ばれなくなるので、そういう意味では「あいつなんやねん」みたいな感じにはなるでしょうね。
今後どうなると思いますか?今のままJAとかが残るのか、個人でやる人が増えていくのか。
個人の起業家みたいな人たちが、後継者のいない現場をどんどん引き継いでいくと思います。
そういう人たちは、JAからは離れていきますよね。
自分たちでシステム化して、自分たちで販売ルートもつくっていくんじゃないですか。
そうですよね。
多角経営で、地産地消のレストランをつくってみたりとか。そういうのが増えてくるような気がします。
特徴のある野菜とか、高級なイチゴとかに特化してる農家さん、いるじゃないですか。
はい。ああいうのって、すごく日本人に向いてると思いますよ。
寿司のシャリにしたら抜群のコメとか、そういうのをつくるの上手ですよね。
すごく上手です。
だけど、そういう特徴的な農家さんだけだと、日本全体の米の需要は賄えない。そういうのはやっぱりJAが仕切るべきなんですか?
全体最適を考えてる人たちが、そういうバランスを考えて投資してると思いますけど。この先はどうなんですかね。
なくなる可能性もあると?
JRとかJTとかも、昔はぜんぶ国が管理してたんですけど。今は民営化してますから。
農協もだんだん民営化していくんですか。
少なくとも、いまの農協の力は弱っていくでしょうね。
個人の采配がどんどん認められるようになって、多様化していくってことですよね。
そうなるでしょうね。
安いコメとか、ジャガイモとか、国内で作る人は減っていくかもしれませんね。
より付加価値の高い野菜を作る人が、増えていくでしょうね。
そうなったら、食糧自給率はどうなるんですか。
これだけ国際的な流通がしっかりしてるので、国として「自給率上げるぞ」っていうのはもう必要ないんじゃないですか。
でも北朝鮮なんて、食糧を輸入できなくて大変なことになってますよ。むかしの日本も、石油を止められて戦争になったじゃないですか。
だから外交手腕が大切なんですよ。食糧自給率はたぶん上がらないので、いろんな国と貿易をして生きていけるようにすること。
食糧自給率を上げるよりも、外交で仲良くしておく方が現実的だと。
そう思いますね。
でも、どうなんですか。今はアメリカと仲がいいですよね。
はい。
アメリカがもっと閉鎖的になって「日本はもう、自分で好きなようにしてください」となったら、困りませんか?
ぜんぜん困らないと思います。
アメリカとの貿易が減っても困らない?
アメリカ以外の国とちゃん提携すれば問題ないですね。相手国の農業を発展させて逆輸入してもいいし。
なるほど。じゃあ、農家さんには好きなものを作ってもらって、それで足りなければ輸入すればいいと。
そうです。
国がコントロールする必要はないと。
コントロールするんじゃなくて、規制を外したり道筋をつくったりして、その流れを促進していくべきですね。
本当は、国としても民間に任せたいんですかね。
今はそうなんじゃないですか。民間に任せた方が競争力も高くなりますから。
コントロールするほど、弱くなっていきますもんね。
そうなんですよ。官僚とか政治家にはビジネスのことは分からないので。
ウエブに情報も溢れてるし。
情報も手に入るし、発信もできるし。自分でやろうと思ったら、何でもできるじゃないですか。
確かにそうですね。
インフラを整えるまでが国家の仕事。整えた後は、もう任せた方がいい。
もうインフラは整っていると。
農業だけじゃなく、教育や労働環境も、そろそろコントロールを手放した方がいいです。
これ以上、国がコントロールしても、ろくなことがないと。
その通り。
…次回へ続く…