変と不変の取説 第40回「のびのびの効果」

「変化だ、変化だ、変化が大事だ」とみなさんおっしゃいますが、会社も商品も人生も、「変えなくてはならないもの」があるのと同様、「変わらないもの」「変えてはならないもの」もあるのです。ではその境目は一体どこにあるのか。境目研究家の安田が泉先生にあれやこれや聞いていきます。

 第40回「のびのびの効果」

前回、第39回は「怒りの体罰・理性の体罰」

安田

佐々木君って知ってます?163キロの球を投げる高校生。

泉

知ってます。

安田

メジャーに行った大谷君と菊池君がいるじゃないですか。

泉

はい。

安田

その3人って、みんな岩手県出身なんですよ。

泉

そうなんですか?

安田

はい。みんな体もでかいんです。なんで岩手ばっかりなんでしょう。東北って甲子園では優勝したことがないんですけど。

泉

なんででしょうね。

安田

「のびのびと育つ環境がある」みたいなことを本人たちは言ってました。

泉

私は北海道から沖縄まで全国を回りますけど、東北の人たちは「目に見えないものを学習しようとする意欲」が非常に高いです。

安田

へぇ。体も大きいんですか?東北の人たちって。

泉

いや、それはあんまり感じたことないですね。

安田

じゃあ、あの3人がたまたまなんですか。

泉

そうでしょうね。

安田

でも日本には野球をやっている子供が山ほどいるんですよ。たまたま190センチ超えで、たまたま運動神経が良くて、たまたま岩手出身だったとか、あり得るんですかね。

泉

う〜ん。どうなんでしょう。

安田

2人ぐらいだったら偶然かなと思うんですけど。3人連続となると「何かあるんじゃないか」と考えちゃいます。

泉

きっと偶然じゃないですよね。

安田

たとえば総理大臣をよく輩出する県ってあるじゃないですか。

泉

ありますね。山口県とか。

安田

東大生が多い県とか少ない県とか。甲子園も何回も勝つ県もあれば、ぜんぜん勝てない県もある。なんでそんな差が生まれるんですかね。

泉

やっぱり背中を見ているのは大きいでしょうね。政治家の子どもがまた政治家になるみたいな感じ。身近にいるっていうのが結構大事なんじゃないですか。

安田

自分の県に「総理大臣が多い」みたいなのは、小さい頃から意識するんですかね。

泉

「うちの高校から出ました」とか。講演に来てくれたりもするので。

安田

なるほど。フェンシングとかも、1人出て来てからすごく強くなりましたよね。

泉

体操なんかもそうじゃないですか。

安田

ということは1人の影響で、ものすごく周りは変わるんですかね。

泉

そういうロールモデルがいると、周りにすごく影響を与えるんじゃないでしょうか。

安田

いまのスポーツ界のトレンドでいくと、八村類くんとか、サニブラウンくんとか、大坂なおみさんとか、ハーフのスポーツ選手があらゆるシーンで活躍してるじゃないですか。

泉

そうですね。

安田

でも野球界には少ないんですよね。オコエ瑠偉選手がいますけど。やっぱり大谷くんとかのほうが目立ってる。

泉

ダルビッシュがいますけどね。ただ野球の世界って、ヒエラルキーが他のスポーツと比べて強いような気がしますね。日本独特の何かがある。

安田

たしかにそうですね。みんな丸坊主ですし。ダルビッシュも大御所に叩かれてますし。

泉

なんか体育会系っぽいものが、すごく残ってますよね。野球部には。

安田

でも就職関係の人に聞くと、特に大企業とかは、野球部出身が好きらしいです。

泉

好きですね。

安田

それは、同じようなヒエラルキーの世界で生きてるからですかね。

泉

そうだと思いますね。

安田

ずっとサッカーをやってた人は「上下関係がぜんぜんなってなくて、仕事にならない」みたいに言われてます。

泉

偏見もあるんでしょうけど、野球は特に縦社会ですからね。

安田

ということは大谷くんや佐々木くんを排出した東北も、縦社会ってことですかね?

泉

逆に縦社会がないから、そういう選手が出てきてるのかもしれませんよ。

安田

確かに。「のびのび育った」と言ってましたし。

泉

いままで縦社会でつぶされてきた人たちが、東北ではあんまり縦社会がないので育ったとか。

安田

なるほど。そうかもしれませんね。

泉

地道にちゃんと積み上げていくというマインドを、東北の人は結構強く持ってるんです。そういうメンタリティーも関係してるような気がします。

安田

大谷君は「のびのびと、押さえつけられずに、好きなようにやらせてくれた」って言ってましたけど。押さえつけないからスケールの大きい子が育つんですかね。

泉

それは身長の話ですか?

安田

はい。環境によって人間ってそこまで変わるんですかね。

泉

変わるかもしれないですね。

安田

逆にガチガチの枠にはめると、本来大きくなるような子も身長が止まっちゃったりとか。

泉

あると思いますね。

安田

じゃあ、やっぱ、のびのび育てるって大事なことなんですね。

泉

はい。本来持っているものを伸ばしてあげることが大事。

安田

いま、小学校や中学校の現場ではどうなんですか?「のびのび育てよう」みたいなのってあるんですか。

泉

今まさに「のびのび育てよう」というのが、学校教育の大きなテーマになってます。

安田

そうなんですか!

泉

はい。建前上は「ひとりひとりの価値を見いだして、すくすく、のびのび育てよう」っていう。

安田

え!建前だけですか?

泉

いや、「枠にはめよう」みたいな感じは、なくなって来てます。

安田

へえ、そうなんですか。

泉

あとは先生の能力次第ですね。

安田

世界で活躍する日本人スポーツ選手って増えてるじゃないですか。

泉

増えてますね。卓球とかバドミントンとか。

安田

あとボルダリングとかスケボーとかも。ああいうのって、スパルタで強くなってるようには見えないんですけど。

泉

昔は管理して強くしてましたけど。今は全然違いますね。

安田

ですよね。自由奔放にやって、強くなってる人が増えてる気がします。

泉

そうじゃないですか。まさに「のびのび」育ててるんですよ。

安田

じゃあ「のびのび教育」はスポーツ界のほうが進んでるってことですか?

泉

そうですね。スポーツの世界は、食べ物とか、体のこととか、メンタルとか、めちゃくちゃ学習してるので。学校の教育とかマネジメントよりもはるかに先行ってる。

安田

どうしてスポーツ界の方が早いんでしょう?

泉

成果が見えやすいからじゃないですか。

安田

金メダルとったりとか。

泉

はい。そういう見えやすさもありますし、成果が出るまでが早い。

安田

早いと言っても何年もかかりますよ。

泉

学校の教育とかマネジメントって、何十年というスパンなので。

安田

確かに。目に見える成果とかも分かりにくいですしね。

泉

そうなんですよ。そこが一番難しいところ。

安田

どうしたらいいんですか?

泉

子供達の持っている力を信じて伸ばしていくしかないです。


場活師/泉一也と、境目研究家/安田佳生
変人同士の対談


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第1回:「変わるもの・変わらないもの」
長い間、時間をかけて構築された、感覚や価値観について問い直します。

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