「変化だ、変化だ、変化が大事だ」とみなさんおっしゃいますが、会社も商品も人生も、「変えなくてはならないもの」があるのと同様、「変わらないもの」「変えてはならないもの」もあるのです。ではその境目は一体どこにあるのか。境目研究家の安田が泉先生にあれやこれや聞いていきます。
第99回「最後の1ピース(前編)」
前回、第98回は「昭和という幻影」
この対談もついに99回目を迎え、100回で終わりというか「完成」となります。
はい。ついに完成しますね。
この対談は永久にネットの中に残っていくはず(笑)!
ずっと読み継がれてほしいですね。
で、最後の2話をやるにあたって「いままでの対談は何だったのか」という総集編をやりたいんですけど。
対談を完成させる最後の1ピースですね。
そうです。この対談の基本コンセプトは「世の中が変わっていく中で、自分たちがどう変わらなきゃいけないのか」ってことですよね。
そうです。
私たちは学校で歴史を学んでますけど、自分のことって「知ってるようで知らない」。
『日本人の取説』でも書いてますけど、繋がってないんですよストーリーが。
私もそんな気がします。習ってることと現実とが繋がってない感じ。
感性の鋭い人はそう感じてるはずなんですよ。でも多くの人はそこを疑わない。
言われた通りに信じちゃうと。流れに身を任せているだけではダメだってことですよね。
主体的に生きなきゃダメってことです。
世の中が激変していく中で、自分も会社も「変わらなきゃ」とは思ってるはずなんです。でもどうやったら変われるのか。どう変わればいいのか。そのヒントがほしい。
タイトルと同じで不変なものを知っておくってことですね。それ以外はぜんぶ変えたらいい。
そもそも「不変なもの」とは何ですか?
それがわからない(笑)なので対談したんじゃないですか「不変とはなんぞや」って。
確かに(笑)きっとそれは「すごく本質的なもの」なんでしょうね。
そうですね。言い換えるなら残っているもの。
残っているもの?
歴史上、何千年もずっと残ってるものは、たぶん、これからも何千年と残る確率が高い。
それは歌とかですか?
そうですね。芸術とか、哲学とか。
文学とか。
文字とか。
文字を読まない人がどんどん増えてますけど。なくなりはしないですか?
なくならないと思います。
私は、人間と動物の最大の差は「集合知」だと思ってまして。動物はすごい天才が生まれても1代で終わってしまう。でも人間は文字や言葉を使って伝承できる。
そうですね。それが最大の違いだと思います。
先祖の知恵や知識をインストールできるから、人間って他の動物より優れてるわけで。文字とも言葉とも接触せずに育ったら、たぶん猿と変わらないですよ。
そうでしょうね。だから常に教育が中心にあるんですよ。
過去の知恵を共有するっていうのは、それこそ2000年前から変わってないわけですよね。
変わってないし、これからも続いていくと思います。
問題は「何のために知恵や知識を共有するのか」ってことだと思うんです。「生存のため」なのか「好奇心」を満たすためなのか。
好奇心でしょうね。
やっぱりそうですよね。人間にとっての未知の世界を探求するために、知恵や知識を共有してる。
人間はまず目に見えるものを探究したんです。望遠鏡をつくったり顕微鏡をつくったり。とにかく見える世界をガンガン探求していった。
なるほど。
で、そっちの世界はかなり探究したから、そろそろ違うほうに行くんじゃないかなと、私は思ってます。
見えないものってことですか?
はい。
物質的なものを追究するのは西洋文明のイメージですよね。
その通りですね。
見えないもの、たとえば「気」だとか「心」だとかってのは東洋的なイメージです。
仏教なんかまさにそうです。
具体的にはどんな物を探求するようになるんですか?
命ですね。
命?
たとえばウイルスって生物か無生物かまだ結論が出てないんです。そういう「中間のやつ」が現れて世界中を混乱に陥れてる。これって何かのメッセージだと思うんですよ。
命って医学的には「心臓が動いてる」「脳が活動してる」という状態ですよね。
それは物理的な話です。
たとえば細胞を培養して心臓ができて、これが動いたとしても「生きてる」とは言わない気がするんですよ。
そうですね。「物質としての命」と「全体統合された命」とはぜんぜん違うから。
全体統合された命?
命と意識が何かでつながっている状態。
たとえば植物は根っこだけ残ってたら、まだ生えてきますよね。あれは何かが繋がってる状態でしょうか。
完全に枯れる時には何か「つながってるもの」が切れるんでしょうね。プチンと。
どことのつながりが切れるんでしょう。
「ダークマター」って知ってますか?
宇宙の大半を埋め尽くしてる物質ですよね。
物質かどうかもわからない。「まだ何かはわからへんで」っていうもの。
でもあることは確かだっていう。
宇宙もビッグバンの質量をはかったら「何かわからへんもの」がいっぱいある。でも「まだ観測できてません」みたいな。
そこと命が繋がってるってことですか?
まだ分かりません。
それを探求するために教育があると。
探求は永遠に続くんじゃないですか。
永遠ですか。でも人間の脳みそには限界がありますよ。
そこにコンピュータが登場したわけです。
脳みそという「限りあるメモリ」から解き放たれたわけですね。
外側メモリを使えば無限に近い知識やデータをインプットできますから。
スマホは一人一人の「もうひとつの“脳みそ”」みたいなものですよね。
はるかに優秀な脳みそです。世界中の情報に瞬時にアクセスできるし。
となると、人類の進化はこの先ぜんぜん違うものになるかもしれない。
ランドセルに教科書を入れてることがアホらしいんです、本当は。このクソ暑いのにランドセルに教科書を詰め込んで登校して。
もはや脳みそに記憶しておく必要がないですもんね。
おそらく学校の授業には「検索」という教科ができるはず。集合知を検索する力。
なるほど・・・・(最終回に続く)