第32回「医療崩壊のミライが来ないために」

このコラムについて
世の中の情報は99%が「現在」または「過去」のものでしょう。たった1%の未来情報をつかめる人だけが、自分のキャリアやビジネスを輝かせるのです。でも、未来情報なんか手に入らないよ!と思ったアナタ。ご安心を。もしアナタが古い体質の会社に勤めているなら超ラッキー。そんな会社の経営者ならビジネスがハネるかも。

未来コンパスが、あなたの知らない未来を指し示します。

 32  医療崩壊のミライが来ないために

コロナ第三波が心配な皆さん!12月12日に「陽性者数」が3000人を超えましたね。
私は、アメリカの「死亡者数」が1日に3000人と聞いてたまげました。想像以上に深刻です。

深刻と言えば、医療崩壊。日本医師会が「医療提供体制が崩壊の危機に直面している」とコメントしました。
「知財に出来ることは無いか」と調べる中で、医療体制の基礎データに目がとまりました。

ドイツは、日本と同様に医療体制が充実していると言われる国で、感染者数の多いヨーロッパの中でも医療崩壊を免れてきました。

ドイツの状況までは医療崩壊しないと仮定すると、日本が医療崩壊する可能性はほぼゼロに見えます。
日本は、人口あたりの病床数が世界一で、ドイツの1.5倍以上のキャパがあります。他方で、患者数は日本が圧倒的に少ないです。ICUや医師の数はドイツよりも少ないですが、日本の患者数から考えると、医療崩壊につながらない様にも思えます。


未来コンパスが指すミライ

とは言え、医師や看護師は限界まで働き、医療現場が疲弊しているのも事実。知財が貢献できることは無いのでしょうか。
医療サービスの供給量は「ヒト(人材)」「モノ(器具数)」「ハコ(病床数)」で決まると言われています。それらを知財でカバーするのです。

<ヒト>
どうしても人手が足りない場合、医学生や引退した医師の助けが必要になるかも知れません。その時に重要になるのが、医療情報のスムーズな共有です。特許を使って、業務引継ぎの手間を減らし、また共有モレによるトラブルも減少させられます。

特開2020-177436(出願人:コニカミノルタ株式会社)
【発明の名称】医療支援装置、医療支援システム及びプログラム

<モノ>
医療器具の不足を解消するために、防護用のフェースシールドやゴーグル、人工呼吸器の部品を3Dプリンターで製造します。この特許の特徴である可視レーザーを使うことで製造速度を高め、必要な分の医療機器を確保します。

特開2020-196952号(出願人:ヌブル インク)
【発明の名称】三次元プリンティングのための装置、システムおよび方法

<ハコ>
ICUの増築は難しいだろうなと思っていませんか(私は思っていました)。
実は、イタリアのCarlo Ratti社が、コンテナをICUに改装できるユニットを開発しました。名前はCURA。コンテナを置くスペースがあればICUを作れます。ICU内は陰圧化され、外部にウイルスを噴出させずに治療ができるなど、必要な性能はもちろん担保されています。
https://www.youtube.com/watch?v=iHa-BaJytgQ
知財のポイントは、オープンソースである点。誰でも図面や設計資料を入手できますので、日本で製造することも可能です(非営利目的に限る)。
https://curapods.org/open-source-files

補助的ですが、知財は医療に必ず貢献できます。コロナを気にしなくて済むミライが早く来てほしいものです。

 

【参照情報】
*1https://www.mhlw.go.jp/stf/covid-19/kokunainohasseijoukyou.html
*2 https://www3.nhk.or.jp/news/special/coronavirus/world-data/
厚労省は「陽性者」と表記。NHKは「感染者」と表記。便宜上、両者を「患者」とした箇所があります。
*3https://www.oecd.org/health/health-systems/Health-at-a-Glance-2019-How-does-Japan-compare.pdf 
*4https://www.mhlw.go.jp/content/000664798.pdf
日本集中治療医学会が妥当と判断した「ICU等病床数」を採用。


 この記事を書いた人  

八重田 貴司(やえだ たかし)

外資系企業/法務・知財管掌。弁理士。
会社での業務とは別に、中小・ベンチャー企業への知財サポートをライフワークとする。クライアント企業が気づいていない知的財産を最大化させ、上場時の株価を上げたり、高値で会社売却M&Aをしたりと言った”知財を使って会社を跳ねさせること”を目指す。
仕事としても個人としても新しいビジネスに興味があり、尖ったビジネスモデルを見聞きするのが好き。

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