このコラムについて
世の中の情報は99%が「現在」または「過去」のものでしょう。たった1%の未来情報をつかめる人だけが、自分のキャリアやビジネスを輝かせるのです。でも、未来情報なんか手に入らないよ!と思ったアナタ。ご安心を。もしアナタが古い体質の会社に勤めているなら超ラッキー。そんな会社の経営者ならビジネスがハネるかも。
未来コンパスが、あなたの知らない未来を指し示します。
ー 第37回 「ユニクロが作ろうとしている未来とは?」
リモートワークになって、ほとんど服を買わなくなった、皆さん!
私も、去年の冬服で十分間に合っています。
今週は、アパレル不況と言われる中でも一人勝ちしているユニクロについて、知財を通して分析してみます!
商願第2019-091014号(出願人:株式会社ファーストリテイリング)
【商標】
【指定商品/役務】電子マネー利用者に代わってする支払代金の決済 など
2021年1月19日、ユニクロは、店舗での買い物に利用できるスマホ決済機能「UNIQLO Pay」を、ユニクロアプリ内に搭載しました。QRコードをスキャンすると銀行口座やクレジットカードから商品代金が引き落とされる仕組みです。
本商標が出願されたのは、2019年7月1日。1年半も前のことでしたが、ついにサービスが開始されました。
未来コンパスが指すミライ
さて、出願の中身を見ると、決済機能の他に特徴的なサービスがありました。
それは「被服の採寸計測と適合する被服の選定よりなる個人に対するファッションの助言を行う電子計算機用プログラムの提供」です。
「電子計算機用プログラムの提供」とは、ソフトウエアやアプリをカバーする役務ですので、あえて意訳すると「採寸に基づいて似合った服をレコメンドするアプリ」と言ったところでしょうか。
これに加えて、ユニクロの過去の出願を分析すると、彼らの目指す方向が見えてきます。
次の図は、出願した商標の区分(縦軸)を、2000年から時系列(横軸)でまとめたチャートです。オレンジは失効した商標、緑は権利が存続する商標です。
区分とは指定した商品や役務の大まかなカテゴリーの事ですので、チャート上のバブルはユニクロが重視している商品や役務、つまりビジネスの力点ということになります。
読み取れるポイントは2つ。
1. 被服をカバーする区分 第25類は一貫してバブルが多い。
つまり、出願が多いということです。当然ですね。
2. バブルが密集しているエリアは、左下から右上にシフトしている。
区分は、商品をカバーする第1~34類と、役務をカバーする第35~45類に分かれます。
2000年代は、第25類より下の商品エリアを中心にバブルが密集していましたが、その後は、徐々にバブルが役務エリアである上方に移動します。
昨今、ユニクロは企画から販売までの情報を有効に活用する「情報製造小売業」となることを目標に掲げています。顧客の情報を得る手段であるサービス(役務)の出願が多いバブルチャートの情報と合致します。
増加傾向にある役務の出願の内容を見てみると「デジタルサイネージを用いた採寸(※)」や「採寸データに基づいて衣服を選定するファッションの助言(※)」といったサービスについて権利化を図っていました。
これらは、UNIQLO Payで権利化されたレコメンドアプリと相性が良さそうです。
スマホや店舗のデジタルサイネージの前に立つと、それらがユーザーの体形を採寸してくれる。そして、採寸データや過去の購入履歴から自分に合う服やスタイルが画面上に表示される。ユニクロが作ろうとしているのは、こんな未来ではないでしょうか。
(※) 分かり易さを重視して要点をまとめました。詳細は商標登録第6208502号等をご確認下さい。
この記事を書いた人
八重田 貴司(やえだ たかし)
外資系企業/法務・知財管掌。弁理士。
会社での業務とは別に、中小・ベンチャー企業への知財サポートをライフワークとする。クライアント企業が気づいていない知的財産を最大化させ、上場時の株価を上げたり、高値で会社売却M&Aをしたりと言った”知財を使って会社を跳ねさせること”を目指す。
仕事としても個人としても新しいビジネスに興味があり、尖ったビジネスモデルを見聞きするのが好き。
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