第11回 「ハウオリ」誕生秘話 〜「偶然」の連続で生まれた新技術

この対談について

「遊んでいるかのように働きたい」をモットーに、毎日アロハシャツ姿で働く“アロハ美容師”こと岩上巧さん。自身が経営するヘアサロン「mahaloco(マハロコ)」には、岩上さんしか実現できない<ココロオドル髪型>を求め多くのお客様が訪れます。その卓越したビジネスセンスの秘密に、ブランディングの専門家・安田佳生が迫る対談企画です。

第11回 「ハウオリ」誕生秘話 〜「偶然」の連続で生まれた新技術

安田

前回の対談では、その人自身の素材、つまり「もともとの髪質」を活かしたヘアスタイルを作っていた岩上さんが、「そもそも髪質の悩みがなくなれば、もっといろんなスタイルが実現できるのでは?」という考えに至った経緯をお聞きしましたね。


岩上

そうでしたね。なかなか『ハウオリ』の誕生までたどり着かずにすみません(笑)。

安田

いえいえ(笑)。さて、そんな『ハウオリ』は薬剤を一切使わないということですが、どうやってそのアイディアが生まれたんですか? 岩上さん自身も仰っていたように、美容室って薬剤を使うのが当たり前なのに。


岩上

ええと、ウチのお客様でヨガを始められた方がいらっしゃったんですが、その方の体の変化が開発のヒントになったんです。

安田

ほう、ヨガですか。


岩上

はい。ちょっとぽっちゃり気味だったのに、ヨガを始められてだんだんシェイプアップしていって、同時に肌もどんどんキレイになっていったんです。その理由をお聞きしたら「食事に気を遣うようになったからだ」と。

安田

ふーむ、確かに「食べたもので人間の体は作られる」って言われますもんね。


岩上

ええ。ということは、髪の毛だって「体の中」から生まれてくるんだから、体に良いことをすれば髪の毛の質もよくなるのでは? と思いついたわけです。

安田

思いついた…というと、ハウオリの開発は岩上さんの「勝手な推測」から始まったということですか?(笑) なにか科学的な研究がベースになっていたわけではなく?


岩上

そうなんです(笑)。で、僕のその推測が正しいかどうかを、常連のお客様たちに協力してもらいながら実証していったのが、ハウオリ開発のスタートなんです。

安田

ということは、お客さんを「実験台」にしたわけですか(笑)。


岩上

平たく言うとそういうことです(笑)。もともと2010年からウチのお店では「パスポート制度」を導入していて。そのチケットを買っていただくと、お店に半年間通い放題になるというものなんですが。

安田

そのパスポートがあればトリートメントやカラーなんかを何回でもやりに来てくれていいですよ、と。お客さん側から見ればすごくいい制度ですけど、お店側は商売上がったりにならないんですか?


岩上

そもそもこのサービスを始めたのが、僕がカットしたお客様が「髪の毛を気にしない暮らし」を実現できているかを確認したかったからで。「素材を活かした髪型」がお客様自身でもちゃんと再現できているのか、こまめにこの目で見て確かめたかったんですよ。

安田

ああ、確かに普通は、そんなに頻繁に来店しませんもんね。むしろ「髪の毛が伸びきってもうどうしようもない状態」になるまで、できるだけ我慢してから行く(笑)。


岩上

そうそう(笑)。だからお客様が1〜2週間くらいのペースで来店くださるような仕掛けを作りたかったんですよね。で、そのパスポート制度を始めまして、髪の伸び方やカラーの色落ち具合やトリートメントの持ち具合なんかを頻繁にチェックさせてもらっていたんです。

安田

なるほど。それにしてもいい制度ですね。お客さんにしてみたら専属のヘアスタイリストさんがついているようなものじゃないですか。


岩上

確かにそういう感覚ですね(笑)。で、そうやってお客様の頭皮や髪の状態をこまめに観察しながら、検証・研究を重ねていきました。

安田

なるほど。そういう中で「それならこうした方がいいかもしれない」という仮説が生まれてきたわけですね。


岩上

まさに仰るとおりで、「毛根に直接アプローチしたら効果があるかもしれない」という仮説が立ったんです。それで「過熱水蒸気」を使ってみることにしまして。

安田

過熱水蒸気…といいますと?


岩上

クリーニング屋さんでドライクリーニングってあるじゃないですか。高圧のスチームを衣服にあてることでニオイや汚れを吹き飛ばすことができる技術。同じようなことを頭皮に対して使えるようにした機械があるんです。

安田

あ、そういう機械がもともとあったわけですね。


岩上

そうなんです。『直本工業』さんが製作したものがウチのお店にもあって。その機械を使って新しいトリートメントメニューを作ってみようとしたんですね。ところがしばらくぶりに起動してみたら、電源が入らなくて(笑)。

安田

そんなに長く使わずに放置されていたんですね(笑)。


岩上

そうなんです(笑)。で、直本工業さんに修理だけお願いしようとしたら「実は今はこんな機械もあるんですよ」って、ドライヤーとスチームが合体したような機械を持ってこられちゃった(笑)。

安田

別の機械をプレゼンされたわけですか(笑)。


岩上

はい(笑)。それで一応、その機械の説明を聞いていたら、なんだか面白いんですよ。その機械を使う時にお客様の頭にキャップを被せるんですが、それが通常の3倍くらい大きなもので(笑)。言うなれば、頭の上に気球が乗っかっているみたいな感じだったんですよ。

安田

あぁ、そういうユニークなもの、岩上さん好きそうですもんね(笑)。


岩上

まさに仰るとおりで(笑)。僕は常々、施術をもっとエンターテイメントとかアミューズメントのような楽しいものとして提供したいと思っていて。だからそのちょっと馬鹿げた形状が面白くなっちゃって、結局、その機械を購入しました(笑)。

安田

すごい(笑)。ちなみにおいくらしました?


岩上

…50万円くらい。

安田

なんと! 「面白いから」という理由だけでポンッと買えるような値段ではない気もしますけど(笑)。


岩上

確かにそうかも(笑)。しかも、せっかく施術中の見た目が面白いからと、さらに面白さを追求し始めまして…。

安田

次は何をしたんですか?


岩上

これまた、ものすごく馬鹿げた特大サイズのロットを使ってみることにしました(笑)。

安田

楽しそうだなぁ(笑)。


岩上

そうやってある意味「パフォーマンス」要素が多めの施術を、半年パスポートをご利用のお客様相手に始めてみたんです。すると、一度その施術をした方のほとんどがリピートしてくださって。その施術はスチームにトリートメント薬剤を入れてやっていたんですけど、「今までのトリートメントとは全然違う」って。

安田

ほう、すごいですね。最初は見た目の奇抜さでやってみたら、意外にも良い効果が出たと。


岩上

そう。あまりにも好評だったので、じゃあこれはメニュー化しようってことで、パスポートメンバー以外のお客様にも提供するようになったんです。ところがある時、ちょっとした事件が起きてしまって…。

安田

なにがあったんですか?


岩上

スタッフが施術工程を1つ飛ばしてしまい、トリートメントの薬剤を付け忘れてしまったんです。

安田

ヘアトリートメントの施術なのに、薬剤の入っていないただの「スチーム」だけをあててしまったわけですか?


岩上

そうそう。でも忘れちゃったもんは仕方ないので、お客様に「すみません、お代はいただかないので、このまま実験に付き合ってもらっていいですか?」ってお願いしちゃいました(笑)。

安田

すごい…。で、どうなりました?


岩上

なんとそのお客様からは「前回のあれ、めっちゃ良かったよ。薬剤なくても全然問題なかった!」と言われたんです。

安田
おお、ついに『美髪矯正ハウオリ』の最大の売りである「薬剤なしの施術」が生まれた瞬間というわけですね! では次回はさらに深く「ハウオリ誕生秘話」に迫っていきたいと思います。

対談している二人

岩上 巧(いわかみ たくみ)
アロハ美容師/頭髪改善特許技術発明者/パーソナルブランディングプロデューサー/株式会社 OHANA 代表

Instagram  Facebook

美容専門学校卒業後、都内のサロンに就職するも、オーナーと価値観の違いから大喧嘩し即クビに。出身地である水戸に戻り実家の美容室で勤務しながら技術を磨き、2008年自身のヘアサロン「mahaloco(マハロコ) 」をオープン。結婚式のプロデュースやイベント企画なども行うパーソナルブランディングプロデュースサロンとして人気を博す。2014 年、髪質改善技術「美髪矯正 hauoli®(2021 年特許取得)」を開発。「まるでハワイで暮らしているように」をテーマに、毎日アロハシャツを着、家族・仲間・お客様と共にハワイアンライフを満喫中。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

Twitter  Facebook

1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

感想・著者への質問はこちらから