「遊んでいるかのように働きたい」をモットーに、毎日アロハシャツ姿で働く“アロハ美容師”こと岩上巧さん。自身が経営するヘアサロン「mahaloco(マハロコ)」には、岩上さんしか実現できない<ココロオドル髪型>を求め多くのお客様が訪れます。その卓越したビジネスセンスの秘密に、ブランディングの専門家・安田佳生が迫る対談企画です。
第12回 「ハウオリ」誕生秘話 〜発見から7年、ついに特許を取得した新技法」
いえ、実はまだ途中でして…。というのも直本工業さんから50万円で買った機械に1つ難点がありまして。
ドライヤーとスチームが合体したような機械のことですよね。何がダメだったんですか?
ダメというか、ものすごく熱いんですよ。過熱水蒸気って180℃くらいまで温度が上がるので、取り扱いにはかなり気を使わなきゃけない。
岩上さんのように、お客さんと良い関係性ができているからこそ試せる技術だったというわけですね。
ええ。だからこの技術を商品化して全国の美容師さんに広めたいと思ったものの、やっぱり躊躇してしまって。
なるほどなるほど。
で、これが安全な技術だというエビデンスが欲しくて、直本工業さんに聞いてみたんです。「ウチでこういう使い方をしてみたらすごく良い効果が出たけど、他にもそういう事例ありました?」って。
ほう。なんて仰っていました?
「そんな話、聞いたことがない」って(笑)。で、直本工業の方たちがお店まで検証されに来たんです。
ちなみに前回の対談でもお話にあがった「直本工業」さんって、どういう会社なんですか?
日本でも数少ない「スチーム専門」のメーカーさんです。もともと冷凍食品を瞬時に解凍したり、劣化したオートクチュールの洋服をキレイに修復したりできる高いスチーム技術を持っていて。で、業務拡張の1つとして美容業界に進出されたんです。
ああ、なるほど。「スチーム」の専門家というわけですね。
おや、もしかして…?
はい、買いました(笑)。最上位機種で、73万円でした(笑)。
やっぱり! どんどん買っちゃいますね(笑)。
笑。まぁ僕としても「薬剤を使わないで髪質改善ができるなら安いもんだろう」と思っていたので。
素晴らしいですね(笑)。で、そこから『プレゴ』を使った実験がまた始まるわけですね。
ええ、その頃は髪質というよりも、より「毛根の改善」へと意識が向いていたので、ロットの巻き方に工夫を重ねていきました。細いロットにしてみたり、「髪が抜けるんじゃないの?」ってくらい強い力で毛根を引っ張りながら巻いてみたり。
髪が抜けそうになるほどって、お客さんからしてみたら、いくら無料だとはいえ、無茶苦茶な実験じゃないですか(笑)。
本当にね(笑)。でもお客様も一緒になって新技術の可能性にかけてくださって。そうしたら「新しく生えてくる髪の毛の質が変わってきた」と言ってくださる方が増えてきたんです。
へぇ! 具体的にはどんな変化があったんでしょうか。
白髪が減ってきた、くせ毛が変わった、頭頂部にボリュームが出た、というような「髪質」の変化以外にも、頭皮のニオイが取れたとか、頭皮が乾燥しなくなったっていうお声も聞かれました。
すごいなぁ。そんなことがあり得るんですね。ちなみにその時点ではもう薬剤は何も使っていないってことですよね?
使っていませんね。ただこの施術をすることで、その他の施術の効果をアップさせることもわかったんです。たとえばトリートメントとかカラーの効果が長持ちするとか。髪質そのものが改善することで、薬剤もより効果的に入るようになったというか。
なるほどなるほど。ちなみにここまでくるのにどれくらいの時間がかかったんですか?
確か最初に薬剤を入れずにスチームしたのが2014年頃だったと思うので、だいたい3年の月日を費やしたということになりますかね。
3年もの間、お客さんを過酷な実験につきあわせてきた、と(笑)。
そうそう(笑)。やはり3年くらいの長いスパンで見ていかないと、本当にこの施術に効果があるかどうかわからなかったというのもありましたし。で、2017年にあるお客様から「この技術はちゃんと特許を取っておいた方がいい」とアドバイスされたので、そこで特許取得の申請を出したという流れになります。
で、2021年にはれてその特許が登録されたと。岩上さんのお持ちの特許というのは、具体的にどういうものなんでしょうか?
「ワインディング」と呼ばれるロットの巻き方の方法と、直本工業さんの美容機器『プレゴ』を使ったスチームの当て方が、オリジナルのものだという特許です。
つまり「施術プロセス」に対する特許ということですね。
ええ、それと「お湯の温度」もオリジナルです。ちなみに安田さんっていつもお風呂は何度くらいで入られていますか?
40℃くらいだと思いますけど、どうしてですか?
実はハウオリでは、ロットを巻いた後の頭皮に55℃のお湯をかけるんですよ。
55℃?! なんでまたそんなことを…(笑)。
このアイディアはお料理研究家の言葉からヒントを得たんです。クタッとしなびてしまった野菜を50℃くらいのお湯にさっと通すとシャキッとするっていう話。
ああ、聞いたことがあります。お湯に入れることで葉の細胞が活性化するとかっていう話ですよね?
そうそう。で、それはどうやら人間も同じらしく。活性が鈍ってきた細胞を元気にさせる温度というのが50〜55℃なんですって。だから育毛について研究されている方に「頭皮に55℃のお湯をかけるのはどうだろう?」と相談してみたら、それはいいかもしれないって言われて。
そうでしたか。でもそれにしても55℃なんて高温、お客さんもびっくりするんじゃないですか?(笑)
ええ、皆さん一様に、ひるみますね(笑)。ただこの「55℃のお湯を頭皮にかける」工程が、その後にあてるスチームをしっかり浸透させるために重要な工程になるので、そこはもう腹をくくっていただくしかない(笑)。
なるほど(笑)。『美髪矯正ハウオリ』は、そういう「ユニークな技術」に対して特許を取っているわけなんですね。次回はその施術のやり方について、さらに詳しくお聞きしていきたいと思います!
対談している二人
岩上 巧(いわかみ たくみ)
アロハ美容師/頭髪改善特許技術発明者/パーソナルブランディングプロデューサー/株式会社 OHANA 代表
美容専門学校卒業後、都内のサロンに就職するも、オーナーと価値観の違いから大喧嘩し即クビに。出身地である水戸に戻り実家の美容室で勤務しながら技術を磨き、2008年自身のヘアサロン「mahaloco(マハロコ) 」をオープン。結婚式のプロデュースやイベント企画なども行うパーソナルブランディングプロデュースサロンとして人気を博す。2014 年、髪質改善技術「美髪矯正 hauoli®(2021 年特許取得)」を開発。「まるでハワイで暮らしているように」をテーマに、毎日アロハシャツを着、家族・仲間・お客様と共にハワイアンライフを満喫中。
安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。