「遊んでいるかのように働きたい」をモットーに、毎日アロハシャツ姿で働く“アロハ美容師”こと岩上巧さん。自身が経営するヘアサロン「mahaloco(マハロコ)」には、岩上さんしか実現できない<ココロオドル髪型>を求め多くのお客様が訪れます。その卓越したビジネスセンスの秘密に、ブランディングの専門家・安田佳生が迫る対談企画です。
第64回 新規顧客をリピーター化する方法

今日は美容業界の値上げ事情についてお聞きしたくて。というのも、最近は人件費や材料費、輸送費などのコストがどんどん上がっているから、値上げせざるを得ない業界も多いと思うんです。一方で、飲食業界などでは客離れを危惧して値上げできず、結果として倒産していくお店も少なくない。

そうですね。僕のところにもよく価格設定について相談に来られる方がいらっしゃいます。既存のお客様に対して、なかなか値上げの提案ができないって。ただ一方で、新規集客については、どこのサロンも通常は「初めての方はカット20%オフ」みたいなクーポンを用意しているんですよ。

ウチでは「ハウオリ」で、そういった仕掛けを作っています。最初に割引チケットでアピールするのは同じなんですが、 12回分のチケットを提案することでリピーターになってもらうわけです。

例えば今までカット5,500円だったのを6,600円に値上げしたとしますね。すると当然、通常のお客様としては1,100円をプラスして払わなくてはいけません。でもチケットをお持ちの方は「チケット1枚でカット」のルールが適用されるので値上げの影響を受けない。つまり、チケット購入してくれるお客さんが多ければ多いほど、値上げに対する抵抗感が薄まるわけです。

なるほどなるほど。チケットを持っていない人は値上げされた金額を払うけれど、チケットを持っているお客さんは今までどおりの金額のまま、というわけか。そうやってチケットを持っている人の方がお得感が増すから、お客さんもどんどんチケットを買ってくれるんですね。

仰るとおりです。さらに言うと、サロン側も常にチケットの消化を促すための声がけができる。もともとカラーやカットだけをやりに来られたお客様に「チケットをもう1枚使って、一緒にハウオリもしましょう」というような提案がしやすくなるんです。それが結果的に、1人のお客様の年間消費金額のアップにつながっていくんです。

つまり LTV(Life Time Value:顧客生涯価値)が上がっていくと。しかもハウオリは薬剤を使わないから、ランニングコストもそこまでかかりませんもんね。いやぁ、本当に素晴らしいですよね。ちなみにチケットの値段はずっと変わっていないんですか?

値上げする時期について、ある程度の猶予をもたせるんです。例えば「2ヶ月後に料金改正をします」と。そうするとお客様のチケットの残数とこれまでの使用頻度とを照らし合わせながら「値上げ前にまとめて買っておく方がオススメですよ」というご提案もできるんです。
対談している二人
岩上 巧(いわかみ たくみ)
アロハ美容師/頭髪改善特許技術発明者/パーソナルブランディングプロデューサー/株式会社 OHANA 代表
美容専門学校卒業後、都内のサロンに就職するも、オーナーと価値観の違いから大喧嘩し即クビに。出身地である水戸に戻り実家の美容室で勤務しながら技術を磨き、2008年自身のヘアサロン「mahaloco(マハロコ) 」をオープン。結婚式のプロデュースやイベント企画なども行うパーソナルブランディングプロデュースサロンとして人気を博す。2014 年、髪質改善技術「美髪矯正 hauoli®(2021 年特許取得)」を開発。「まるでハワイで暮らしているように」をテーマに、毎日アロハシャツを着、家族・仲間・お客様と共にハワイアンライフを満喫中。
安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。