この記事について
半世紀も生きてきますと、【ことわざ】の持つ意味が、より深く染みるようになりました。昔の人はうまいこと言ったもんだなぁと、しみじみ。時代の転換期、大きく世の中が変わってゆく中でも、人やこの世の本質的な部分は、案外変わらなかったりします。結構スルドイところを突いてくるのです。
本日のことわざ
「習うより慣れよ」
今回のことわざ「習うより慣れよ」
人から教わるよりも、自分で経験を重ねる方が身につくということ。
そらそーだ
やっぱりさ、どんな分野でも言えることだね!これは。
あのさー子供の頃のはなしをしていいかい?思い出したんで。
小学生の頃、たぶんアレルギーだったのかなあ、朝目が覚めると目がべたべたで開かなくなることが多くて、眼科に行ったの。ひとりで電車乗って。
そこの駅には、西口と東口に眼科があってさ、大きい方の眼科へ行ったのよ。建物も立派で新しいし、患者さんたくさん来ていたし。何しろ駅にも広告の看板どーんと出ていたしね!
目薬もらった。
フウン
だけど、目薬指しても一向に良くならなくて、むしろどんどんひどくなってしまって。
ソレデ?
それで、またその病院に行って、先生に目薬ちゃんと使っているのに、ちっともよくならないですと伝えたのだけど、「そんなはずはないから、そのまま続けなさい」と言われてしまって・・
ほう
むしろその目薬を使うと、どんどんひどくなってしまって、昼間も目がよく開かなくなってしまっているので、そのことを一生懸命伝えても、診察は30秒で終わり。なんか先生不機嫌になっちゃったし。
もう、目はよく開かないし真っ赤にだだれてべたべたで悪化の一途。
さすがに見た目もやばい感じになっていて、母親が近所のひとに上手な眼科を教えてもらってきたんだよ。
なんと、同じ駅の反対側にある眼科だったの!
古い小さな眼科でね、可愛らしいおばあちゃんが受付にいるだけで患者さんもあんまりいない。きっと反対側に大きい眼科ができたから、その影響もあるのかなと子供ながらに思ったよ。
診察室に入ると、白衣をきたおじいちゃんが居てね、
・・・
私の顔を見るなり、「これはかわいそうに」と
お湯でやさしくていねいに目を洗ってくれたの。ほんとうにていねいに。
「これは合わない目薬だから、いったんきれいに流さないとね・・」と
そのおじいちゃん先生、せっけんで手をよーく洗ってから目を洗ったり診察してくれるので、いつもせっけんのいい匂いがしていてね。それは今でもはっきりと覚えてる。先生と受付のおばあちゃんのやさしさと一緒に。
初診ですぐに状況を把握して、適切な処置をしてくれたおかげで、あっという間に良くなったんだよ!そのおじいちゃん先生の処方してくれた目薬は全然違った。
そう!それ!
別に若いお医者さんがダメって言ってる訳ではないからね。ただ、経験を重ねた数だけその人の中の知識や技術の器は大きくなるのだなあって。
医師免許の取得にあたり「習う知識」としては、どちらの眼科の先生も変わりはない。
今回、対応に差が出たのはきっと実際の場数のちがい。大きい眼科先生はおじいちゃんではなくてまだおじちゃんで若かったからね。
著者について
黒須 貴子(くろす たかこ)
https://tempurayama.com/
数々のアルバイトや専業主婦などを経て、消防設備の会社を設立。下請けからの脱却、女性消防設備士の登用など、難題に直面してきた経験をシェアして生かせる〈社長峠の茶屋〉を始める。学生時代はパンクロッカー、現在はヴィジュアル系のキャンサーサバイバー。