第63回 食品の長期保存のカギは「2種類の水」

この対談について

健康人生塾の塾長にしてホリスティックニュートリション(総括的栄養学)研究家の久保さんと、「健康とは何か」を深堀りしていく対談企画。「健康と不健康は何が違うのか」「人間は不健康では幸せになれないのか」など、様々な角度から「健康」を考えます。

第63回 食品の長期保存のカギは「2種類の水」

安田
久保さん、シュトーレンってご存知ですか?

久保
ええ、知っていますよ。クリスマスシーズンに食べるお菓子ですよね? 季節ハズレな気がしますけど、どうしました?(笑)
安田
実は私、シュトーレンが大好きで(笑)。あれってお菓子の表面を砂糖でコーティングすることで長期保存ができるんですって。でもなぜそんなことが可能なのかがわからないんですよ。

久保
あ〜なるほど。つまり今日は「保存食」についてのお話ですね?(笑)
安田
そういうことです(笑)。長期保存するのに「塩」を使うのはなんとなくわかるんです。しょっぱいから虫や細菌が寄り付かないんだろうって。でも砂糖は甘いから、細菌が好んでパクパク食べちゃうんじゃないかと思うんですが、そうではないんでしょうか?

久保
まず「保存食」と一口に言っても、乾物・干物・漬物・燻製・アルコールや酢漬け…といろんな種類がありますね。発酵させるのも保存食の1つだし、レトルト・缶詰・冷凍食品も全部、保存食なわけです。
安田
そう考えるとたくさんありますね! 何か共通点があるんでしょうか?

久保
ええ。これは全て「菌を増やさない技術」なんです。
安田
やっぱり保存の敵は「菌」なんですね! つまり菌が増えなければ腐ることもなく長期保存が可能になると。

久保
そういうことです。レトルトや缶詰は殺菌してから密封するんですが、それ以外の保存食は「水分」をコントロールすることで、菌を増やさないようにしているんですよ。
安田
水分というのは、食べ物に含まれている水分ですよね? そんなものコントロールできるんですか。

久保
はい、できるんです。実は食べ物には2種類の水分が含まれていて。「結合水」と「自由水」と呼ばれているんですが、前者はタンパク質などの成分と結合しているから自由に動くことができない水です。
安田
ほう。ということは、「自由水」は自由に動ける水、ということになりますね。

久保
仰るとおりです。そしてその「自由水」こそ、細菌たちが好む水なんです。つまり保存の技術というのは、「自由水をコントロールする技術」だとも言えるんですね。
安田
ふむふむ。つまり食べ物に含まれている「自由水」を減らせば細菌は増えないと。でも「結合水」も水分ですよね。それが残っていても大丈夫なんですか?

久保
ええ。例えばお漬物の中には水っぽいものもたくさんありますよね。でもあの水分は「塩」と「水」が結合している「結合水」だから、菌が利用できない。安田さんが疑問に思われていた砂糖を使った保存方法も、「糖」と「水」を結合させることで「自由水」を減らしているわけです。
安田
へぇ〜、なるほど。とはいえ、結合水に殺菌能力があるわけではないでしょう?

久保
ええ、そこまでの能力はないですが、要は「増やさない」ということですよね。「菌が使える水=自由水」が、塩や砂糖の効果で極端に少なくなっているので、それ以上菌は増えないわけです。
安田
ははぁ…菌が増えないから、腐らないと。なるほど、そういう理屈だったんですね。面白いなぁ!

久保
ただ、自由水を減らしてしっかり保存させるには、ある程度の塩分量や砂糖量が必要です。塩分や糖分を気にされる方も増えている中、そこはちょっとしたデメリットに感じるかもしれませんね。
安田
そうですね。私も昔ながらの梅干しなんかはちょっとしょっぱすぎるので、減塩タイプの方がいいですもん(笑)。

久保
笑。「ハチミツ漬けの梅干し」なんかもありますしね。ここで注目いただきたいのが、減塩タイプもハチミツ漬けタイプも、おそらく「冷蔵保存」が必須になっているということで。
安田
確かに。我が家の梅干しは冷蔵庫の中にあります。

久保
多めの塩でしっかりと漬けている梅干しであれば、常温でも長期保存できます。でも、減塩したりハチミツにしたりすると、どうしても腐りやすくなる。だから冷蔵庫で保存する必要がでてくるわけです。
安田
なるほどなぁ。ちなみに保存には「塩」や「砂糖」以外にも使える調味料はあるんでしょうか?

久保
一般的にはその2種類ですね。とは言え、塩も砂糖も本来の食材の味を変えてしまうじゃないですか。だから味に影響を出さないために「化学合成物」というものを使って保存する場合も多いですね。
安田
化学合成物って、もしかして「合成保存料」と呼ばれているものですか?

久保
まさにそうです。要は食品添加物のことなんですが、これは塩や砂糖のように天然由来ではなく「不自然なもの」。だから、カラダにも悪いというわけです。
安田
なるほどなぁ。そう考えると、何の情報もない中、長期保存の方法を生み出した昔の人の素晴らしさに改めて驚かされますね!

 


対談している二人

久保 光弘(くぼ みつひろ)
健康人生塾 塾長/ホリスティックニュートリション研究家

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仙台出身、神奈川大学卒。すかいらーくグループ藍屋入社後、ファンケルへ。約20年サプリメントの営業として勤務後、2013年独立し「健康人生塾」立ち上げ。食をテーマにした「健康人生アドバイザー」としての活動を開始。JHNA認定講師・JHNA認定ストレスニュートリショニスト。ら・べるびい予防医学研究所・ミネラル検査パートナー。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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