この対談について
株式会社ワイキューブの創業・倒産・自己破産を経て「私、社長ではなくなりました」を著した安田佳生と、岐阜県美濃加茂エリアで老舗の葬祭会社を経営し、60歳で経営から退くことを決めている鈴木哲馬。「イケイケどんどん」から卒業した二人が語る、これからの心地よい生き方。
第3回 サッカー選手に、サッカー未経験者はいない
第3回 サッカー選手に、サッカー未経験者はいない
生きてる限り、働きたい。誰かの役に立っていたい。それが私たちの共通項だと思うんですけど。
そうですね。社会の中で何らかの役割を担って、その報酬としてお金をいただくという。
はい。で、それは終わりの方じゃないですか。人生の終わりまでビジネスしていたいという。
そうですね。
でも、始まりはどうなんでしょう。人はいつから働き始めるべきなんでしょう。
ああ、なるほど。まあ、普通に考えれば、高校なり大学を卒業して、就職して、って流れですかね。
それが一般的だというのはわかるんですが、一方で「小学生YouTuber」みたいな存在も出てきてるじゃないですか。
はいはい。まあ、お金自体は親が管理しているんでしょうけど、確かに働いてはいますよね。
そうなんですよ。もっと言えば、「赤ちゃんモデル」っているでしょう？あれなんて、生まれてすぐに働いているわけですよ。
見方によってはそうですよね。法律的には年齢制限がありますけど。
それもちょっと時代遅れな気がするんですよ。そもそもの話、下積みがないと就けない仕事ってたくさんありますよね。
下積みというと？
例えばスポーツ選手なんかがわかりやすいです。「20歳までサッカーしたことなかったけどプロになりました」なんて人はいないわけですよ。
ああ、なるほど。確かに下積みが必要だ（笑）。
ピアニストとかもそうです。就職して初めてピアノに触った、なんて人がプロになれるとは思えない。
そりゃそうでしょうね。
ではビジネスはどうか、と考えると、先ほど鈴木さんが言ってたように、就職して初めてやるわけですよね。
確かに。つまり下積みがまったくない状態、ド素人の状態から始めていると。
ええ。だから私は、サッカーやピアノと同じように、小さな頃からビジネスをやるべきだと思ってます。それこそ小学生とかから。
なるほどねえ。でも、小学生がどんなビジネスをしますか。
何でもいいと思うんです。何かを作って売ってみるでもいいし、誰かの困りごとを見つけて手伝ってあげるとか。
でも小学生でそんなことできますかね。親が商売をしてる、とかじゃないと難しい気もしますけど。
今はスマホがありますから。YouTube一つあれば、だいたいのことが無料で学べてしまう。
ああ、そうかそうか。確かにそうだ。
前、ある鍼灸師さんがビジネス相談に来てくれたんですけど、「何を見て知ってくれたんですか」と聞いたんです。そうしたら、「小学生の子どもが安田さんのPodcastが好きで」なんて言う。
へえ〜。小学生で安田さんのPodcastを？
そうなんです。もうそういう時代なんですよ。
本人が学ぼうと思いさえすれば、情報はいくらでも手に入ると。
そうそう。さらに言えば、ネットによって世界中の人とつながった状態になったわけですから、ものすごいニッチな商売でも成り立つようになりましたし。
そういえば、先日ついにChatGPTを触ってみたんですけど、すごいですねあれは。それこそ小学生でも全然活用できそうというか。
確かにそうかも。「いま小学校3年生なんですけど、僕にもできるお金儲けを教えて下さい」とか入れて。
「アメリカでは同い年の経営者がこんなビジネスをしてます」とか出てきたり（笑）。
いやあ、おもしろいですねえ。うちの子がいま3歳なんですけど、できるだけ早くビジネスをやらせたいんですよ。
そうですね。今日の話を聞いていると、大学出るのを待ってる意味なんてないように思えてきます。
そうなんですよ。ビジネスと言っても別に大儲けしなくていい。誰かの役に立って、お金をもらう。その経験を積んでおくことが大事で。
本当に今の時代って、会社員になったらそれで安泰ってわけでもなくなってますよね。そういう意味でも大事な考え方だと思います。
日本の学校は、がんばって「会社員になる方法」を教えてるんですよね。そこだけで学んでると「いい会社に入る方法」しか身につかない。これはマズイことだと思ってます。
今でも「将来なりたい職業は？」と聞くと、上位に会社員が入ってるそうですからね。
そうなんですよ。「会社員」って別に職業じゃないんですけど。まあ、ある意味で日本の教育が大成功してるってことですよ。
「会社員になりたい人」「会社員にならないと不安な人」を産み出し続けている。
今までは、言われた通りやっていれば食える人になれた。でもこれからは、言われた通りにやっていたら食えない世界になる。
PDCAはもう古い。これからはOODAだって言いますもんね。じっくり計画を立てて実践すればいい時代じゃない。
まずやってみて、やりながら変えていくってことですよね。まさにそういう世界が来たということなんだと思います。
対談している二人
安田 佳生（やすだ よしお）
境目研究家
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク（BFI）代表。
