第67回 除菌に必死になることが、かえって不健康を引き起こす?

この対談について

健康人生塾の塾長にしてホリスティックニュートリション(総括的栄養学)研究家の久保さんと、「健康とは何か」を深堀りしていく対談企画。「健康と不健康は何が違うのか」「人間は不健康では幸せになれないのか」など、様々な角度から「健康」を考えます。

第67回 除菌に必死になることが、かえって不健康を引き起こす?

安田
久保さんが以前、SNSか何かで発信されていた「赤ちゃんの菌」の話。あれ、すごく興味深く読ませていただきまして。

久保
ああ、「赤ちゃんは産道を通って生まれる時に、お母さんから菌をもらって出てくる」というお話ですね。
安田
そうそう。帝王切開で生まれた赤ちゃんは無菌状態だから、わざわざ菌をつけるんだというようなことも仰っていたじゃないですか。そういうのを読んで、「そうか赤ちゃんには元々菌がいないんだ」と驚きまして。

久保
そうですね、お母さんのお腹の中ではほぼゼロです。大人って、腸内に善玉菌や悪玉菌などいろいろな菌がいるように、まさに「菌と共生」しているんです。でも赤ちゃんの腸内にはほとんど何の菌もいない。だから「消化吸収」という腸本来の機能は果たせないんですよね。
安田
確かに生まれたばかりの赤ちゃんは、母乳やミルクのように消化する必要のないものを飲んでいますもんね。

久保
そうですそうです。だからまずは生まれてくる時に、産道を通りながらお母さんの「常在菌」を身にまとって出てくる。そして体の表面についた常在菌を舐めることによって、口から体内に取り込むんです。
安田
ということは、赤ちゃんがいろいろ口に入れて舐めたがるのも、いろんな菌を取り込む意味があるということなんですか?

久保
私はそう思っています。自分の中に菌がないから、一生懸命舐めて取り入れて、体の中の菌の種類を増やそうとしているんじゃないのかなって。
安田
でもやっぱりお父さんお母さんの心情としては、汚いものを舐めて病気になって欲しくないから、赤ちゃんの周りにあるものは片っ端から除菌したくなると思うんですが…(笑)。

久保
その気持ちもわからなくはないですが、私は逆に、せっかく腸内環境を整えて免疫を高めようとしているのに、それを遅らせてしまうのはどうなんだろうと感じます。
安田
なるほどなぁ。じゃあ腸に何も菌がいない状態で成長することは不可能なわけですね?

久保
絶対無理です。人間は菌と共生しないと生きていけないので。菌のバランスは人それぞれなんですが、その人に合った食生活、その人に合った腸内環境というのが作られていくんですよね。
安田
なんだか日本酒を作る蔵には菌が住んでいる、という話と似ていますね。

久保
まさにそうです。酒蔵には「蔵付き酵母」がいて、それぞれ特徴や癖があって。それがお酒の味や香りに影響してきますよね。あとはぬか床や味噌も同じ。お母さんやおばあちゃんの常在菌が入っているから、それぞれの「家庭の味」ができ上がるんです。
安田
へぇ〜! つまり私たちは、ある意味菌を食べていたというわけですか!

久保
そういうことです。他にも、自分のお家とか誰かのお家とかそれぞれに「香り」がある気がしませんか?
安田
ありますね。玄関を開けた瞬間にフワッと香る感じ、わかります。

久保
それも「常在菌」から発生していると言われているんですよ。このように我々人間はずっと菌と共生してきた。でも今はその菌を一生懸命なくそうとしちゃっているじゃないですか。
安田
確かに異常なまでにアルコール除菌をするような人、増えましたよね。

久保
ですよね。でも免疫力アップのためと考えるなら、いろんな常在菌を体内に入れるほうがよっぽど免疫力は高まるわけで。だから私は今の「除菌至上主義」のような風潮に、すごく危機感を持っています。
安田
なるほどなぁ。ちなみに赤ちゃんには「善玉菌」だけを取り入れさせてあげればいいんでしょうか? 「悪玉菌」を入れちゃったら、お腹を壊しちゃいますよね?

久保
いやいや、そんなことはありません。むしろ悪玉菌もバランスよく取り入れないと、善玉菌も本来の力を発揮できないんですよ。
安田
あ、そうなんですね。「悪玉」ってついているから、なんとなく悪いイメージがありました(笑)。名前がよくないですね(笑)。

久保
確かに(笑)。私は「悪玉コレステロール」って名前もすごく嫌いです(笑)。あれも体にとって必要なコレステロールなのに、名前のせいで完全に悪者扱いされるじゃないですか。ちゃんとバランスをとれるように調整すれば、全く悪いものではないのに。
安田
例えばお母さんが「悪玉菌」が多すぎる、つまり菌のバランスが悪い状態だと、それは赤ちゃんにも影響が出てしまうんですか?

久保
出ます。お母さんから「毒」をもらってしまうことで、赤ちゃんのときから重度のアトピーになる場合も少なくないんです。これはお母さん目線で言うと、お産がデトックスになってしまっているとも言えるわけなんですが…。
安田
ははぁ…自分の体内の悪い菌を赤ちゃんに渡してしまって、自分だけはバランス良い菌の状態になれている、というわけですか。

久保
そうそう。だから「出産前から体内の菌のバランスをキレイにしておくといいですよ」というような啓蒙活動を、今後はプレママさん向けにやっていきたいなと。
安田
なるほどなぁ。除菌に必死になるのではなく、善玉菌も悪玉菌もバランスよく体内に取り込み、菌と共生していくこと。これを実践すれば免疫力もついて健康的に過ごせるということがよくわかりました。

 


対談している二人

久保 光弘(くぼ みつひろ)
健康人生塾 塾長/ホリスティックニュートリション研究家

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仙台出身、神奈川大学卒。すかいらーくグループ藍屋入社後、ファンケルへ。約20年サプリメントの営業として勤務後、2013年独立し「健康人生塾」立ち上げ。食をテーマにした「健康人生アドバイザー」としての活動を開始。JHNA認定講師・JHNA認定ストレスニュートリショニスト。ら・べるびい予防医学研究所・ミネラル検査パートナー。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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