第108回 万代が使い分ける「攻めのコンペ」と「守りの目安箱」

この対談について

“生粋の商売人”倉橋純一。全国21店舗展開中の遊べるリユースショップ『万代』を始め、農機具販売事業『農家さんの味方』、オークション事業『杜の都オークション』など、次々に新しいビジネスを考え出す倉橋さんの“売り方”を探ります。

第108回 万代が使い分ける「攻めのコンペ」と「守りの目安箱」

安田

例えば私が万代さんの社員だとしますよね。で、何かすごいアイデアを思いついたと。そういう時、直属の上司を飛ばして、いきなり社長の倉橋さんに直談判してもOKなんですか?


倉橋

正直そういう直接的なコミュニケーションも大好きなんですけど(笑)。でも会社の公式なスタンスを言うなら、まずは社内コンペに応募してほしい、ということにはなっちゃいますね。

安田

なるほど。個人的な想いはあれど、会社のルールとしてはそうなっていると。ちなみにそうしている理由は?


倉橋

まぁ、全員が直接言いに来れるわけでもないじゃないですか。すごくいいアイデアが思いついたのに、引っ込み思案で言い出せない人もいる。それだと不公平になっちゃうんで、平等に参加できるコンペという方式をとっています。

安田

確かに、社長に直接意見するのはなかなか度胸がいるかもしれない(笑)。でもコンペという開かれた形式にすることで、アイデアが無難になりがちになっちゃうような気も。


倉橋

確かに、自分の意見が他の人にも見られるわけですから、そういう側面もあるかもしれませんね。

安田

あとコンペって、誰がどういう基準で落としたのかがわかりづらかったりするでしょう? 私も会社員時代に社内コンペに応募したことがあるんですが、何がダメで落とされたのかわからず悶々としたもので(笑)。


倉橋

笑。私個人としては、どんな意見でもウェルカムなんですけどね。ただ会社として資金を出すとなると、確かにいろいろなしがらみは出てきますよね。ある程度は仕方ないのかなと。

安田

まぁ確かに、現実的にはいろいろありますからね。ちなみにコンペに出された案は倉橋さんも目を通されるんですか?


倉橋

今は担当の幹部に任せています。万代がまだ小さい頃は、日常的に社員から直接アイデアをもらっていましたけどね。顔と名前が一致する50人くらいの規模までですけど。

安田

なるほど。その規模を超えてくると、やはり制度化が必要になってくるわけですか。


倉橋

そうですね。管理的にもそうする必要が出てきますし、ルールがないとそれこそ声の大きい人の意見ばかりが通るようになってしまうんですよ。そういう意味ではむしろ物静かな人や、口下手な人にこそ光を当てるために、コンペという制度を作っている次第で。

安田

ああ、なるほど。実際実施してみてどうですか? やっぱり無難な案が多いですか。それとも常識の二、三歩先を行くような斬新な提案も出てきますか。

倉橋

ケースバイケースですけど、そこまでインパクトのあるアイデアはなかなか出てきませんね。でも個人的には耳の痛いような意見ほど聞きたいんですよ。「こういう商品が売れると思います!」より「この商品はもう全く売れなくなりました!」みたいな方がドキッとする。

安田

本当にそうですね。でもそういう意見って、ある意味それまでの自分たちを否定することにもなっちゃうわけで、なかなか言いにくいですよね。

倉橋

そうなんです。だから滅多に出てこなくて。まぁ、場合によっては誰かの仕事を奪うことにもなりかねないわけで、仕方ないのかなぁとも思いますが。

安田

難しい部分ですよね。そういう意味では「声なき声」みたいなものを吸い上げる「目安箱」のような仕組みが必要なのかもしれませんね。匿名で投書できるなら変わるかもしれない。

倉橋

ああ、なるほど! それは絶対あった方がいいですね。アイデア募集というよりは、現場の問題点を挙げてもらうような感じで。

安田

実は皆が疑問に思っているような変な慣習って、どこの会社にもありますからね。それを指摘しようにもその窓口がなければ我慢するしかない。結果、「ここにいてもしょうがないな」と感じて辞めてしまったりね。優秀な人ほどそうなる気がします。

倉橋

本当にその通りですね。そういう意見を吸い上げて、きちんと評価できるような組織作りをしていかないといけないと思います。

安田

もちろんすべて聞いていたらキリがないので、バランスは考えないといけないでしょうけど。

倉橋

とはいえ今はどんどん変化している時代なので、凝り固まった組織にならないような仕組みは持っているべきだなと。今お話しながら強く思いました。

安田

普段なら「それは君の仕事じゃない」と上司に一蹴されてしまうような、自分の担当領域を超えた大胆な改善案も出てくるかもしれませんね。

倉橋

いいですねぇ! となると、「改善ご意見番」みたいな名前がいいかもしれない。いやぁ、いいアイデアをありがとうございます。コンペは入賞特典をいろいろ用意していることもあって、アルバイトも含めたくさん上がってくるんです。でも改善点については手薄だったので。

安田

お役に立ててよかったです。どんな意見が集まるか、楽しみですね。


対談している二人

倉橋 純一(くらはし じゅんいち)
株式会社万代 代表

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株式会社万代 代表|25歳に起業→北海道・東北エリア中心に20店舗 地域密着型で展開中|日本のサブカルチャーを世界に届けるため取り組み中|Reuse × Amusement リユースとアミューズの融合が強み|変わり続ける売り場やサービスを日々改善中|「私たちの仕事、それはお客様働く人に感動を創ること」をモットーに活動中

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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