第128回 利益が増えても「不幸な会社」になってしまう理由

この対談について

“生粋の商売人”倉橋純一。全国21店舗展開中の遊べるリユースショップ『万代』を始め、農機具販売事業『農家さんの味方』、オークション事業『杜の都オークション』など、次々に新しいビジネスを考え出す倉橋さんの“売り方”を探ります。

第128回 利益が増えても「不幸な会社」になってしまう理由

安田

今日は「利益」について倉橋さんの本音を聞きたいなと思いまして。今は人手不足で、ちゃんと給与を上げないと人が採れない時代じゃないですか。


倉橋

そうですね。本当に切実な問題だと思います。

安田

給料を上げる原資を考えると、会社全体の利益も大事ですけど、結局は「社員1人当たりの利益」が大事なのかなって気がするんです。ここが少ないと、上げたくても上げようがないですから。


倉橋

仰るとおりです。無い袖は振れませんからね。

安田

ただ一方で、経営者としては規模を拡大して「会社全体の利益」を増やしたい欲求もあるじゃないですか。それでいうと、倉橋さんは「1人当たり利益」と「会社全体の利益」、どちらを大きくすることを意識してますか?


倉橋

僕はやっぱり「会社全体の利益」を重視していますね。広報がいて、工事部がいて、現場がいるというように、役割が分かれているので、1人いくら稼いだかって明確に出しにくいんですよ。だから「個人の成績」として数字を追求させることはあまりしません。

安田

なるほど。「個人の成績」と考えるとそうでしょうね。


倉橋

そうなんです。個人の数字を追わせると、例えば「自分の店の在庫を他店に渡したくない」みたいなことが起きるんです。全体で見れば売れる店に移動させたほうがいいのに、自分の成績が下がるからって囲い込んでしまう。

安田

ああ、そうか。視野が狭くなってしまうと。


倉橋

ええ。だから「個人じゃなくて全体で勝とう」と言っています。会社全体の粗利というパイを大きくして、それを皆で分け合いましょうというスタンスですね。

安田

なるほど。ちなみにちょっと視点を変えて、「1000人で100億円稼ぐ会社」と「1万人で100億円稼ぐ会社」、経営者として見た時にどっちがすごいと思いますか?

倉橋

ああ、それならやっぱり……1000人で100億のほうでしょうね。やっぱり1人当たりの分配が大きくなるほうが、働く側としては絶対いいですからね。

安田

私もそう思うんです。少ない人数で同じ利益なら、1人当たりの収益が大きいから給料もたくさん払えるし。でもそういう会社が拡大路線を取って、社員を10倍の1万人にして、その結果利益が110億になりました、みたいなケースもあるじゃないですか。確かに10億も利益は増えたけど、社員を10倍にしてまでそうする必要があったのかと思うわけですよ。

倉橋

いやぁ、それは大きくしないほうが良かったんじゃないですかね。

安田

そうなんですよ。実際社員からしたらたまったもんじゃないと思うんです。忙しくなったのに取り分は減ってるわけですから。でも経営者からすると「利益が成長したぞ!」って評価されたりする。

倉橋

うーん、僕はあんまりそういう価値観ではないですね。薄利多売で何百万人もの従業員で作ってる利益より、少数精鋭で稼いでる会社のほうが優秀だと感じます。

安田

そうですよね。ちなみに先ほど「1人当たり」より「会社全体」で考えると仰ってましたが、「1人当たりいくら稼いでるか」みたいな数字も出さないわけですか?

倉橋

ああ、それはまた話が別で、ちゃんと数字は出しますよ。そこを見ないと、人を増やすべきか外注すべきかの判断もつかないですから。

安田

なるほど、そこはシビアに見ているんですね。チームで目標を追いかけるけど、結果として1人当たりの利益もついてくる状態を作るのが大事だと。

倉橋

仰る通り、本当に大事なんです。でもそこを重視しない経営者さんも多いですよね。とにかく人を増やして、薄利のままで規模だけ大きくする。

安田

そうなんですよ。人手不足の時代に、利益が分配できないモデルで拡大しても成り立たないと思うんですけど。でも実際はそういう会社がまだまだ多い気がします。

倉橋

いずれ成り立たなくなると思いますよ。そもそも本来は、事業としてしっかり利益が出る仕組みがあって、そこに人を投入するからさらに利益が大きくなるわけじゃないですか。人を採用することで利益率が薄くなるなら、それは増やす意味がない。

安田

スケールメリットが効いてないってことですよね。本当は人が増えたら、相乗効果で利益が増えていかないとおかしい。でも現実は、100人の時のほうが1人当たりは儲かってた、みたいな会社がたくさんある。会社全体の利益を伸ばすのと、1人当たりの利益を伸ばすのって、どっちが難しいんでしょうか。

倉橋

どうでしょう……やっぱり「1人当たりの利益」を伸ばし続けることのほうが難しいんじゃないですかね。

安田

そうですよね。1人当たりを伸ばせれば、結果的に会社全体も伸びますから。給料を5%上げようと思えば、絶対に5%以上の利益成長を出していかないといけない。

倉橋

収益性を高めていかないと、どこかで行き詰まりますよ。その時は従業員に「ごめんなさい」って言うか、採用を減らすしかなくなる。

安田

規模は拡大したけど1人当たりは貧しくなってる会社は、やっぱり「増やしちゃいけないところまで増やしすぎた」ってことなんでしょうね。

倉橋

そう思います。1人当たりの収益が最大化するところで維持するのが、一番健全なんでしょうね。

安田

豊臣秀吉も恩賞をあげすぎて、日本の土地がなくなったなんて話もありますし(笑)。

倉橋

あれはもう、人が驚くほど分配したからこそ、天下統一という成果に一番早く結びついたんでしょうね。給与マネジメントとしては正解だったと思いますよ。

安田

「増収増益だ!」と言いながら、それ以上のペースで社員が増えてる会社は要注意ってことですね。

倉橋

……と思うんですけどね(笑)。僕もそんなに偉そうなことを言える立場ではないので、自戒を込めて。


対談している二人

倉橋 純一(くらはし じゅんいち)
株式会社万代 代表

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株式会社万代 代表|25歳に起業→北海道・東北エリア中心に20店舗 地域密着型で展開中|日本のサブカルチャーを世界に届けるため取り組み中|Reuse × Amusement リユースとアミューズの融合が強み|変わり続ける売り場やサービスを日々改善中|「私たちの仕事、それはお客様働く人に感動を創ること」をモットーに活動中

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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