“生粋の商売人”倉橋純一。全国21店舗展開中の遊べるリユースショップ『万代』を始め、農機具販売事業『農家さんの味方』、オークション事業『杜の都オークション』など、次々に新しいビジネスを考え出す倉橋さんの“売り方”を探ります。
第78回 「繫盛研究家」から見たロピアの行列の秘密
倉橋さんは「繫盛研究家」だそうですね。いつ頃から名乗ってらっしゃるんですか?
ええと、1年前くらいですかね。安田さんがずっと「境目研究家」として活動されているのを見て、僕も何か研究したいなと(笑)。
なるほど(笑)。それで繫盛店を研究しようと考えたわけですね。でも手前味噌ながら、そういう別の肩書を持っておくのはいいですよ。万代の社長を誰かに譲っても「繫盛研究家」は一生続けられるわけで。
そうそう。それもいいなぁと思っていて。実際これは生涯をかけて研究し続けたいテーマですので。
私も死ぬ前の日まで「境目研究」をしようと思ってます(笑)。ちなみに「繫盛研究家」としての活動はどのような?
まぁ、「活動」と呼べるほどカッチリしたものではないんですが(笑)。例えば街なかで行列があったら、とりあえず並んでみるとか。行列の先には必ず繁盛店があるのでね。…そういえば先日も、札幌に新しくオープンしたスーパーマーケットのロピアの行列に並びました。
ちょっと待ってください、スーパーに行列ができるんですか?
そうなんです。待望の札幌1号店で、なんと90分待ちでした。
なんと! ディズニーランドのアトラクション並みじゃないですか。ちなみに待っている間何をしてるんですか? ぼんやり待ってるってことはなさそうですけど。
同じように並んでる人たちをひたすら観察してましたね。なぜ並んでいるのか、何を目的に来たのかを想像しながら。
ああ、なるほど。ということは、インタビューしたりもするんですか? 「今日は何を買いに来たんですか?」なんて。
いやいや、それだとちょっと怪しい人になってしまうので(笑)、あくまで「聞き耳を立てる」にとどめます。それに重要なのは、どちらかというと「スーパー側の意向」なんですよね。並んでいる人たちの話、それから服装や年齢などから「そもそもどういうペルソナを設定しているのか」を想像するんです。
ははぁ、なるほど。事業者側の視点で、どういうターゲット設定をしているのかを考えるわけですね。ちなみにそのロピアというスーパー、札幌では1号店ということですけど、本社はどちらなんですか?
本社は川崎です。今イトーヨーカドーが東北・北海道エリアで次々閉店してるところに、ロピアが攻めてきているんです。
ふ〜む。それにしてもオープンで90分の行列ができるってすごいですね。他のスーパーと何が違うんです?
価格がとにかく安いんです。コストコとドン・キホーテを足して2で割った感じというか。もともと精肉店からスタートしたこともあって、いろいろなネットワークを持っているんでしょう。
ああ、なるほど。じゃあお肉系が強いわけですか。
ええ。安い上にボリュームがあってお得感があるんです。お惣菜もすごく人気ですね。ただちょっと面白いのは、支払いは現金のみなんですよ。「クレジットカードの手数料分まで価格を頑張ります」ということなんだと思いますけど。
ははぁ、なるほど。ある意味一貫していて気持ちがいいですね。…でもこのご時世、現金だけでやっていけるんですかね。いまは電子マネーしか持ち歩かない人も多いでしょうし。
まぁロピアはその事をきちんと謳っているので、多くのお客さんは理解の上だと思いますけどね。あ、でも近くにATMの機械もありましたよ。
なるほど〜。うっかり現金を持ってなくてもその場で下ろせるわけですね。しっかりしてるなぁ(笑)。ちなみに「繫盛研究家」の分析としては、ロピアの集客力はどこにあるんでしょうか? やっぱりお肉やお惣菜の安さですか?
安さも魅力の一つではあるんですが、なんていうんでしょう、独特の「高揚感」があるんですよ。お店に入ると、とにかく気分が上がって買い物したくなる。これは実際に体験してみないとなかなかわからない感覚だとは思いますけど。
「高揚感」ですか。あまりスーパーでは感じたことがないですね。もう少し具体的に言うとどういうことなんでしょうか。
そうですねぇ。これはスーパーに限らないんですが、お客様ってある一定の「ゾーン」に入ると、脳のスイッチが切り替わるように「急に買いたくなる」んです。ロピアはおそらく、そのスイッチをいれるために様々な仕掛けをしているんだと思いますね。商品設計もそうだし、あとは店内の動線の使い方もすごく工夫されていて。
ああ、なるほど。それがドン・キホーテ的なところだと。
そうそう。自分も長いこと小売のプロをやってきましたが、ロピアの売り場からは勉強することだらけです。いったいどんな人がマーケティングを担当してるんだろうと興味が湧いて、タイミーでアルバイトしようかと考えてるくらい(笑)。
そこまでですか(笑)。それよりもマーケティング担当の人と友達になった方が早そうですけど(笑)。この対談を読んでいる方のお知り合いの中にいるかもしれませんし。
おお、本当ですね(笑)。それでお友達になれたら嬉しいです。賞金を出してもいいくらい。
いいですね。じゃあ「ロピアのマーケティング担当の方が知り合いにいるよ」という方はぜひご連絡いただけると。結果は「繫盛研究家」第2弾で聞かせてください。
対談している二人
倉橋 純一(くらはし じゅんいち)
株式会社万代 代表
株式会社万代 代表|25歳に起業→北海道・東北エリア中心に20店舗 地域密着型で展開中|日本のサブカルチャーを世界に届けるため取り組み中|Reuse × Amusement リユースとアミューズの融合が強み|変わり続ける売り場やサービスを日々改善中|「私たちの仕事、それはお客様働く人に感動を創ること」をモットーに活動中
安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。