父の事業を承継する気はなく、まったく別分野ですでに起業し、軌道に乗っております。そんななかM&Aを進めたのですが、「みっともないからやめなさい」と母に言われたそうで、論理的に説得できるすべがなく、どのように協力してよいものか、頭を悩ませております。父は一代で70億まで成長させた、なかなかの敏腕社長でもあります。よろしくお願いいたします。
おお。なかなか。
そういうケースもある……そりゃあるか。
あるよねえ。「M&Aを知らないから後継者問題が解決しない」みたいな話するやん。
はいはい。
でも、M&A知らない経営者って、もう経営やめたほうがいいよね。どんだけ情報取ってないんだよって話じゃない?
あ~。
知ってなきゃポンコツだよ、もう。
まあ、でも、70億ぐらいまで一代でされててM&A知らないって、なかなかなさそうですよね。
そんなわけない。ない。絶対ない。
うん。
まあ、でも、悪くないのかどうかはちょっとわかんないけど、でも、敏腕なんだから……
奥さんのほうってことですよね、「みっともないからやめなさい」って言ったのは。
ああ、そうだね。でも、社長もそう思ってんじゃないの?
あ、そっか。そうだよね。
だって、創業で70億までやるのは、だいたいワンマンやん。
……(笑)
え?違う?なに?(笑)
いや、ちょっと…「ですね」って言いそうになったけど、それはさあ(笑)
(笑)。だいたいワンマン。
ちょっと面白い。
だいたいそうなんだよ。70ぐらいのデューデリするときは。「べつに売んなくてもいいんだけど」みたいな感じだもんね。「俺はやってきたあれがあるから。おまえらできんの?」みたいな。
それは大久保先生が付き合ってる一部の経営者ね(笑)
いやいや、違うよ。結構そうよ、高齢者のM&A行くと。
まあそうか(笑)
そういうところに行って、どんだけほめるか。
ほめるの意外とうまいからね。
キャバ嬢みたいなもんだからね。銀座の……
自分がね。
そうそう、俺がね。まだ50代とか、ちょっと頭回って、先のこと考えられてM&Aとか言う人はそんなにね、もう売ろうとしてるからいいんだけど、売るしかないのに、考えずに70歳とかになってるじゃん。言い方は悪いけど。
はい。
それと同じよね。まあ、「みっともない」って思ってんだろうからね、それを受け入れるしかないよね。
「みっともない」って……
「身売りするなんて」ってことでしょ。
あ~、「身売り」って感覚なんですね。
うん。
なるほどね。日本でのM&Aは「身売り」ね。
その世代はその感覚があるよね。あと、創業でそこまでずっとやってると、後継者いないわけだろうから。いてもこの質問者さんのように承継する気がない。いないんだよね~。
ですね。たしかに。「軌道に乗っちゃってる」って言ってるんでね。
そう。だから、できんのよ仕事は。
なるほど。
だから、そこを手放すことへの抵抗感とかさ、やっぱ、そのへんをいかに心を通わせて口説くかだよね。
でも、本人たちのためになるなら、ってことですよね。こういうケースはなることが多いんですかね。
だって、このぐらいやられてたら残るもんね。一族の繁栄を考えたら、もう継げないんだから、お金に変える……まあ、それがやっぱあれなんだろうな、発想だからチープだから通じないんだろうな。
あ~、はいはいはいはい。
そういうのは通じないよね。「みっともない」まではないけど、まあ、でも、近しいケースは結構あるからね。「なんで売らないんでしたっけ?」みたいな、「は?売るの!?」みたいな、結構バチバチになるやつ。
「そんなみっともないことを」って。
いや、だから「あなたはすごすぎた」という話じゃない?まずは。
一代で?
そう。お父さんを労わないといけないね。
「カリスマですね」と。
いや、「カリスマですね」までは……(笑)。「お父さんみたいにできない」と。だから、論理的に説得するというよりは、たぶん感情的に「ああ、それだったらこうよね」っていうのを積み重ねていくしかないと思うけどね。
あ~。
そんなすぐにはむずかしいよね、身売りからM&Aに持っていくのは。論理的には説得するすべはあると思うんだよね。だって、M&Aしかないんだから。そこに行き着くと……俺もそういうクライアントあるけど、論理ではたぶん心が動かないよね。
あ~。
「だって、死ぬんだから売るしかねーじゃん」って思ってるわけだよ(笑)
はいはい。
死なないと思ってるから。人間ね、70を超えると「死なない」と思ってる。わかんないけど(笑)
謎の現場からの……(笑)
全体が与太話みたいになってきた(笑)。いや、そうよ、やっぱ。
そう思うと、税理士事務所、会計事務所が顧問でずっと2・30年とか付き合ってたりすることが、きっと多いわけじゃないですか。
うん。
言うタイミングって20年前とかにあったりしたはずだよね、みたいなところは……べつに税理士の先生に文句言うつもりはないですけど(笑)
いや、同じように「死なない」と思ってるから。顧問税理士も同じような年代じゃん。
はいはい。一緒に育っていきますからね。
そうそうそうそう。だから、まあ考えないよね、その頃は、だって、経済成長もしてるなかでね。
そうかあ。でも、そういう意味でいうと、大久保先生たちは結構ちゃんと提案を早めにするようにしてるじゃないですか。
うん。やっぱ俺もそういう老害になるからね、絶対。
そうですね。もう始まってますもんね。
うるせーな(笑)。そうよ。ほんとに、この記憶力のなさはどうしたらいいかわかんない。
それは会ったときから大丈夫です。
ほんと?(笑)
うん。会ったときからです。大丈夫です。
ちょっと心配されるよね、最近。
社員たちにですか?
お客さんにも(笑)
お客さんにも?(笑)
「いいましたよね?」みたいな、「そうでしたっけ?」みたいな。そうなのよ。
なるほどね。ま、ということ……というか。
……そうね、答えになってるのかむずかしいところだけど、これは日本中が向き合ってる問題だよね。
たしかに。
日本中にある問題で、身売りというところから、どう、その価値観を変えれんのかみたいな。
そうですよねえ。それは税理士がやるのか、こういう息子さんという立場がやるのか。
まあ、息子さんがやるしかないんじゃないのかなあ。ね。
1世代の次の会社やってる経営者はどうしてもあるので、そのへんの話は、ある程度言葉としては持ってるでしょうからね、会話できるために。
まあね。継げるなら継いでもいいと思うけどね。
うん。
なかなか「俺は継げません」って言われんのもショックだろうしね、子どもに。
たしかにね。
うん。そういうときは、もしかしたら第三者かもね。税理士さんがね。
なるほどな。
質問くれてる方がどんな能力があるか知らないで言うのもあれだけど(笑)。「あの息子さんじゃ無理じゃないですか?」って言うときあるもんね、俺も(笑)
(笑)
結構「そうよな」ってなるんだよね。
なるほど。
まあ、そうなんで、こっちの常識をぶつけないってことだろうね。
うん。
うん。で、対応するしかないと思いますよ。
なるほどですね。このへんは日本が抱えている共通の課題だなというところで、ぜひ、みなさんもうまく、何か情報ありましたら、そして質問ありましたら、またお寄せいただけたらと思います。ということで、今日のとこは終わりたいと思います。大久保先生、ありがとうございました。
ありがとうございまーす。