第111回 進むも地獄、留まるも地獄

 このコラムについて 

「担当者は売り上げや組織の変革より、社内での自分の評価を最も気にしている」「夜の世界では、配慮と遠慮の絶妙なバランスが必要」「本音でぶつかる義理と人情の営業スタイルだけでは絶対に通用しない」
設立5年にして大手企業向け研修を多数手がけるたかまり株式会社。中小企業出身者をはじめフリーランスのネットワークで構成される同社は、いかにして大手のフトコロに飛び込み、ココロをつかんでいったのか。代表の高松秀樹が、大手企業とつきあう作法を具体的なエピソードを通して伝授します。

本日のお作法/ 進むも地獄、留まるも地獄

「若手の“定着率向上”と“即戦力化”」をテーマにした某鉄道系「グループ人事勉強会」なるものに同席させていただきました。

本体の鉄道会社も、他の多くのグループ会社でも、上記テーマが組織課題の大きなひとつとして取り上げられ、「採用、教育、制度運用」など様々な視点での見直し、改善について意見交換する場でした。

近年、多くの大手企業が「新卒、中途」共に採用に苦しんでいるようですが、こちらでも同様とのこと。

採用活動について、印象に残ったことを記載しますと。

・準備期間も人事の人手も足りない。。
・求める人材像が不明瞭、、
・採用困難なレベルの方を追いかけすぎ。。
・育成との連携が不足している、、

などなど。

およそ、定着率向上や早期戦力化には、時間がかかりそうです。

そんななか、お一方が、「最近は新卒だけに限らず、中途採用にも注力している」と、話したことで、「ウチは新卒派」「いや、ウチは中途派」と二分された対話が続きました。

新卒派の言い分は、

「中途人材は、、」

・自社の色に染めづらい。。
・入社数ヶ月でも、条件の良い別へ転職してしまった。。
・周囲と馴染めず孤立してしまった。。

一方、

中途派の言い分は、

「新卒は、、」

・手取り、足取り、時間がかかりすぎる。。
・自分で考えず、指示待ちになってしまう。。
・打たれ弱い人が多過ぎて、本音の指導ができづらい。。

と。

どちらも、およそ、改善にチャレンジする、というよりは、不平不満のぶつけ合いにも感じてしまうやり取りが、しばらく続いていました。

すると、とある中途の方が。

「入社時の期待では、『ガンガン変えてほしい!』なんて言ってくれたけど、実際は、『比較ばかりして、前職のやり方から抜け出せていない』と言われるし、今のやり方を優先していると『染まりすぎちゃったよね、、前の勢いはどうしたの??』なんて言われるんだよ」

「“進むも地獄、留まるも地獄”って、このことよな、、」とため息交じりにポツリともらしました。。

一部の大手さんでは、「比較しすぎず、順応しすぎず」くらいでないとやっていけないのでしょうか?

芥川先生の「蜘蛛の糸」でも読み返してみようかな、と思った高松でした。

 

著者の他の記事を見る


 

高松 秀樹(たかまつ ひでき)

たかまり株式会社 代表取締役
株式会社BFI 取締役委託副社長

1973年生まれ。川崎育ち。
1997年より、小さな会社にて中小・ベンチャー企業様の採用・育成支援事業に従事。
2002年よりスポーツバー、スイーツショップを営むも5年で終える。。
2007年以降、大手の作法を嗜み、業界・規模を問わず人材育成、組織開発、教育研修事業に携わり、多くの企業や団体、研修講師のサポートに勤しむ。

感想・著者への質問はこちらから