第170回 戦略的無能のススメ?

 このコラムについて 

「担当者は売り上げや組織の変革より、社内での自分の評価を最も気にしている」「夜の世界では、配慮と遠慮の絶妙なバランスが必要」「本音でぶつかる義理と人情の営業スタイルだけでは絶対に通用しない」
設立5年にして大手企業向け研修を多数手がけるたかまり株式会社。中小企業出身者をはじめフリーランスのネットワークで構成される同社は、いかにして大手のフトコロに飛び込み、ココロをつかんでいったのか。代表の高松秀樹が、大手企業とつきあう作法を具体的なエピソードを通して伝授します。

本日のお作法/戦略的無能のススメ?

「戦略的無能(Strategic incompetence)」なる言葉をご存知ですか?

近年、海外ビジネスシーンでも使われているようで、「できないフリをして、気の進まない仕事を避けるテクニック」のことだそう。

某大手さん「5年目社員(Aくん)」に教えていただきました。

まあ、このようなことは昔々から実行している人もいるのかなとは思いますが、堂々と語る人にお目にかかることはワタクシ、初めてかと。

Aくん曰く、

「ウチの会社って、仕事は割とハードなのに、給料は低いじゃないですか」

「まあ、休みはしっかり取れたり、福利厚生が充実しているし、社員も穏やかで良い人たちが多いから、比較的、居心地は良いんですよ」

「だから、短絡的にすぐに辞めるっていう選択はしないんですけどね」

「でも、戦略的無能に生きるって、効率的じゃないですか?」

なぜなら、、、

①無駄な敵対関係を作らずにすむでしょ?

同期や近しい先輩・後輩って、ライバル関係って思っている人多いでしょ。できないフリをすることで、同僚からのやっかみや敵意から逃れることができる

②失敗した時のダメージを減らせるでしょ?

日頃から、「アイツはあまり仕事ができないよな」とか周囲に思わせておけば、いざ失敗した時に、「まあ、しょうがないか、、」との印象を与えることができ、大きな減点には繋がらない

③余計な仕事が増えなくて良いでしょ?

周囲に、「仕事ができないヤツだ」と思い込ませておけば、急な仕事なども頼まれることが少なく、定時に上がれる確率が高まる。ハードに働いて体を壊したって、会社は面倒を見てはくれないでしょ?

「効率的に、長くのんびり働けるじゃないですかw」

彼なりのロジックなのでしょうが、自信満々に語るのです。。

隣で聞いていた「同期のBくん」が口を開いたのですが、

「Weaponized incompetence (無能の武器化)とも言うよね?」

「実際は、デキるんだけど、わざと無能かのように振る舞って、労働負担を軽減させ、かつ、将来的に、他者が求めるハードルも下げられる。まあ、少ない努力で褒められる的な行動のことだよね」

「企業が顧客関係を維持するためにやっている『期待マネジメント』の個人版みたいなもんだよね」

「ウチの会社って、いわゆる『良い人中毒(toxic niceness)』的に、『人によく思われたい』みたいな人が多いじゃないですか。そんなの気にしてたら、『戦略的無能』なんて演じられないよね。いや、Aくんはすごいですよ!!」

ワタクシが先天的にも、後天的にも無能だからなのでしょうか、、Aくんのすごさを理解するには至らず、、

ただただ横文字のオンパレードに圧倒された時間でしたとさ。

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高松 秀樹(たかまつ ひでき)

たかまり株式会社 代表取締役
株式会社BFI 取締役委託副社長

1973年生まれ。川崎育ち。
1997年より、小さな会社にて中小・ベンチャー企業様の採用・育成支援事業に従事。
2002年よりスポーツバー、スイーツショップを営むも5年で終える。。
2007年以降、大手の作法を嗜み、業界・規模を問わず人材育成、組織開発、教育研修事業に携わり、多くの企業や団体、研修講師のサポートに勤しむ。

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