第139回 とある男性の「育休・時短勤務」

 このコラムについて 

「担当者は売り上げや組織の変革より、社内での自分の評価を最も気にしている」「夜の世界では、配慮と遠慮の絶妙なバランスが必要」「本音でぶつかる義理と人情の営業スタイルだけでは絶対に通用しない」
設立5年にして大手企業向け研修を多数手がけるたかまり株式会社。中小企業出身者をはじめフリーランスのネットワークで構成される同社は、いかにして大手のフトコロに飛び込み、ココロをつかんでいったのか。代表の高松秀樹が、大手企業とつきあう作法を具体的なエピソードを通して伝授します。

本日のお作法/とある男性の「育休・時短勤務」

先日、某大手メーカーを「一年ほど前に退職したTさん」とプライベートで再会しました。

元人事部門のTさんには、様々なプロジェクトにてご一緒したことがあり、当時のことなどを懐かしく思い出しながら、しばしの談笑を楽しみました。

30代半ばの彼は、某大企業の「最大拠点の現場人事」として活躍していたのですが、数千人が働く、その現場で「初めて育児休暇を活用した男性社員(3年前)」としても有名でした。

猛暑、極寒の環境の中、埃と汗に塗れながらの三交代勤務が当たり前の職場では、「男性が育休を取得する」などということは、これまでの常識では「あり得ない!」ことで、世の中の変化と共に、制度に組み込まれるようになったとは言え、申請までの過程は「簡単ではなかった」ようです。

「一応、権利はあるけどさ、奥さんいるんだから、任せればいいじゃん」

「今、お前にとって大事な時なんだから、考え直した方が良いと思うよ」

「みんな大変な中、頑張っているんだから、仕事に穴を開けるなよ」

これらは、実際に上司や同僚に言われた言葉。

しかしながら、共働きの奥様と幾度もの対話を重ねた上で「育休を決断した」のだそうです。

わずか3ヶ月(感じ方は人によりますが、)の育休を明けての復帰後にも様々な反応があったようで、

「長いこと休んでたんだから、これからは気持ちを切り替えて頑張ってくれよな」

「仕事に全集中して、遅れた分を取り戻せよ」

などの反応がほとんどの中、、

「えっ!!完全復帰じゃなくて、時短なの??」

そうなのです。

彼は、フルタイムではなく、復帰後に「時短勤務」を選んだのでした。

時短が始まってすぐに、

・お子さんの急な体調不良などで、半休を取らざるを得ない状況になったり、、

・夕方以降の会議には、当然参加できなかったり、、

・出張など、容易には入れられない状況だったり、、

と。

覚悟はしていたけれど、「簡単ではない現実」に直面することになり、

・同僚や後輩たちの活躍が眩しく見え、羨んだり、、

・こんな仕事ぶりだと、自分の評価って、どうなるんやろ、、

と。

「周囲への引け目」と「自身のキャリアへの焦り」も募り、、ネガティブな感情に押し潰されそうになったと話していました。。

そんな中、助けになったのは、育児経験のある先輩や同僚。育休明けの同僚や後輩。

「いずれも女性」のみなさんからの温かい言葉に救われたようです。

・1歳なんて、目が離せなくて大変でしょw

・夫婦の食事なんて、冷食で十分よw

・仕事はもちろん大切だけど、何よりお子さん優先でやってごらんよw

「『手伝ってほしい』って、なかなか言いづらいだろうけど、わたしたちには、ほんと気軽に言ってねw」

みなさん、ことさら楽しそうに、笑いながら声がけしてくれたのだそうです。

「いつの時代の話よ?時代遅れも甚だしいわ」

「いまだに、そんな上司がいるの??」

「ハラスメントだと駆け込めばいいのに」

「これだから、歴史の古い日系企業は、、」

などの感想を抱いた方は、比較的、働きやすい職場にお勤めなのかもしれません。

一方。

「これが、メーカー現場の現実です。。」と話したTさんは、今は、なんと、保育園で働いているのだとか!

「世の中の、育児家庭に少しでも協力したい」との思いが湧いてきたことによる転職だったようです。

働く人、どなたにとっても、豊かな時間が過ごせるような会社や組織が生まれると良いですね。

 

 

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高松 秀樹(たかまつ ひでき)

たかまり株式会社 代表取締役
株式会社BFI 取締役委託副社長

1973年生まれ。川崎育ち。
1997年より、小さな会社にて中小・ベンチャー企業様の採用・育成支援事業に従事。
2002年よりスポーツバー、スイーツショップを営むも5年で終える。。
2007年以降、大手の作法を嗜み、業界・規模を問わず人材育成、組織開発、教育研修事業に携わり、多くの企業や団体、研修講師のサポートに勤しむ。

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