第277回 「昔はこうだった」の呪い

 このコラムについて 

「担当者は売り上げや組織の変革より、社内での自分の評価を最も気にしている」「夜の世界では、配慮と遠慮の絶妙なバランスが必要」「本音でぶつかる義理と人情の営業スタイルだけでは絶対に通用しない」
設立5年にして大手企業向け研修を多数手がけるたかまり株式会社。中小企業出身者をはじめフリーランスのネットワークで構成される同社は、いかにして大手のフトコロに飛び込み、ココロをつかんでいったのか。代表の高松秀樹が、大手企業とつきあう作法を具体的なエピソードを通して伝授します。

本日のお作法/「昔はこうだった」の呪い

 

某鉄道会社さんでは、「仕事からの気づき・学び」をまとめた文集のようなものを「4年に1度」作成しています。

「大手の作法」なる本コラムを続けている私からすれば、「ネタの宝庫や!」ということで、拝見させていただいたのです。

「昔はこうだった」の呪い、とタイトルされた文章には、以下のようなエピソードが書かれていました。

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「昔はさ、FAXでやり取りしてたんだよ」「若手なんて、最初の3年は電話番だったよ」「新人は議事録とって、資料作ってナンボやからね」

入社して3ヶ月後に「本配属」になって以降、こんなコメントを毎日のように耳にします。

そのように語るベテランの先輩方の口調は、「懐かしさと誇らしさ」が入り混じったように感じます。。

ですが、その言葉が「若手のやる気」をそっと削っていることには、気づいていないのでしょう。

◆新入社員:Kくんの場合

配属初日、同期のKくんは張り切っていました。「大学時代に学んだITスキルを活かして、業務フローの効率化を提案したい!」 ExcelマクロやNotionでの情報整理が得意なKくんは「先輩たちのご負担を減らせたらうれしいです!」と、さっそく先輩たちに声をかけていました。

ところが、返ってきたのは、笑顔まじりのこんな言葉。。

「えらいね。でもまぁ、昔はそんなのなくても、全部手書きでやってたからね」、、

その後も「思い出語り」は繰り返されたようで、、

「この会議資料も、全部ワード手打ちだったんだよ」「いまの新人さんたちは、環境が恵まれすぎてるよね」「俺らの頃は、朝7時に来てコピー取ってたんだよ」

悪気はない。。きっと、ないのでしょう。。

ですが、Kくんの中では、何かが静かに冷えていったようでした。

「『今の自分のアイデア』なんて、『先輩たちの昔話』に勝てないのかもしれない、、」

同期会で話していた彼の表情は暗く、乾いた笑い声が印象に残っています。

気づけば、同期たちの積極的な発言は減ってきています。提案も、アイデアの数も減っています。

「きっとまた『昔』で片づけられる」と思ってしまったから。

「口にしなければ否定もされないし、傷つかない」

私はそんな職場のムードを変えていきたいと思っています。

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「新入社員さんの苦悩」が生々しく掲載されていました。

ベテランさんたちとは同世代のタカマツですが、

「昔はこうだった」を語る時があったなら、「何かを変容させる時に使おう」と思ったのであります。。
 

 

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高松 秀樹(たかまつ ひでき)

たかまり株式会社 代表取締役
株式会社BFI 取締役委託副社長

1973年生まれ。川崎育ち。
1997年より、小さな会社にて中小・ベンチャー企業様の採用・育成支援事業に従事。
2002年よりスポーツバー、スイーツショップを営むも5年で終える。。
2007年以降、大手の作法を嗜み、業界・規模を問わず人材育成、組織開発、教育研修事業に携わり、多くの企業や団体、研修講師のサポートに勤しむ。

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