第322回 大手社員が「起業前」に目指すべき場所

 このコラムについて 

「担当者は売り上げや組織の変革より、社内での自分の評価を最も気にしている」「夜の世界では、配慮と遠慮の絶妙なバランスが必要」「本音でぶつかる義理と人情の営業スタイルだけでは絶対に通用しない」
設立5年にして大手企業向け研修を多数手がけるたかまり株式会社。中小企業出身者をはじめフリーランスのネットワークで構成される同社は、いかにして大手のフトコロに飛び込み、ココロをつかんでいったのか。代表の高松秀樹が、大手企業とつきあう作法を具体的なエピソードを通して伝授します。

本日のお作法/大手社員が「起業前」に目指すべき場所

 

某大手企業の「有志メンバー」が集まり、「今後のキャリアを考える」という社内ワークショップにお声がけいただきました。

副業、複業、将来的な起業。

話題はとても前向きで、会場の空気もどこかワクワクしています。 ただ、議論を聞いていると、ある“共通点”に気づきます。

多くの人が「起業してみたい!」と言うものの、具体的に動いている人は、実はそれほど多くない。

理由はだいたい同じです。

・理想と現実のギャップが怖い
・失敗したときのリスクが大きい
・正解が分からない

大手社員の方々は普段、“評価基準や役割”が、比較的、“明確な世界”にいらっしゃいます。 ところが起業や副業は、何を目標にするかも自分で決める世界。

この切り替えは、「想像以上に難しそう…」と捉える方がたくさん。

さらに情報が多い時代。成功体験やノウハウを集めるほど、「もっと正解があるのでは?」と手が止まります。

結果として、“考える → 調べる → でも動かない”というループに入る。

これは能力の問題ではなく、むしろ多くの大手社員さんが辿る自然な心理プロセスなのかなと感じました。

そんな話を聞いているうちに、ワークショップの議論は、“意外な方向”に落ち着きました。

「起業は確かに魅力だけど、リスクも高い」

「だったらまず、“会社の中枢“”を目指した方がいいのでは?」

つまり、「本社勤務」です。

本社は経営に近く、情報が集まり、人脈も広がる。

役員や部長クラスの意思決定が、日常の仕事の中で見えてくる場所です。現場では“決まったことを実行する側”になりがちですが、本社にいると「なぜその方針になったのか」という背景まで触れる機会が増える。

さらに、本社には全部署の情報が集まるため、自然と“社内のキーパーソンとの接点”も増えていきます。

新規事業やDX推進など、会社の“最先端のプロジェクト”も、多くの場合は本社から動き始めます。

そして何より、会議で出てくる言葉が少しずつ変わってきます。

「この案件、部長決裁かな?」から、「これは役員報告ラインだね」などと自然に口にするようになる。

つまり、会社の中で働きながら、“視座・人脈・経験”の3つを一気に引き上げられる場所でもあるようなのです。

会社を辞めて外に出る前に、会社の中をもっと使い倒す。

大手企業のキャリア戦略として、これは案外“王道”なのかも?と。遠回りに見えて、実は一番リスクの低い「起業準備」なのかもしれませんね。

 

 

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高松 秀樹(たかまつ ひでき)

たかまり株式会社 代表取締役
株式会社BFI 取締役委託副社長

1973年生まれ。川崎育ち。
1997年より、小さな会社にて中小・ベンチャー企業様の採用・育成支援事業に従事。
2002年よりスポーツバー、スイーツショップを営むも5年で終える。。
2007年以降、大手の作法を嗜み、業界・規模を問わず人材育成、組織開発、教育研修事業に携わり、多くの企業や団体、研修講師のサポートに勤しむ。

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