日本人は中東を「イスラム教の国々」と一括りにしてしまいがち。でも中国・北朝鮮・日本がまったく違う価値観で成り立っているように、中東の国だって様々です。このコンテンツではアラブ首長国連邦(ドバイ)・サウジアラビア・パキスタンという、似て非なる中東の3国でビジネスを行ってきた大西啓介が、ここにしかない「小さなブルーオーシャン」を紹介します。
質問
「中東のトイレはどんな感じなのですか?」
回答
中東のトイレは日本とは少し違います。
一番特徴的なのは、便器の横に必ずと言っていいほどハンドシャワーが備え付けられていることです。
水道管から直接伸びているホースの先にレバー付きのシャワーがついているのですが、これがあるのは後処理の方法が日本と異なるからです。
日本では紙で拭くのが当たり前です。
ウォシュレットがあるとはいえ、紙を使わず水だけで済ます人は稀でしょう。(※ウォシュレットはTOTOの商標名ですが、一般名詞化しているのでこのまま使います)
一方、現地では水で洗うのが基本です。
ほとんどのトイレにはトイレットペーパーが備え付けられていますが、メインの処理のためというわけではありません。
あくまでも水でキレイにしてから、その水気を取るための用途として置かれています。
紙がメイン処理に使われないのは、文化的、習慣的要因もありますが、流す際に日本ほど水量や水圧が安定しない、水に溶けにくい紙を使っている、といった理由もあります。
(↑サウジアラビアのカフェで見たトイレ。トイレットペーパーの左にシャワーが見える。タイルがおしゃれ)
ちなみに、このサイトによれば紙をメインで使うのは世界的に見ればむしろ少数派で、世界人口のうち7割以上、実に40億人以上がトイレットペーパーを使わないそうです。
水で処理する人々の中には、「乾いた紙で拭いて終わりなんて不潔極まりない」と考える人もいるようです。
ウォシュレットが普及するまで紙オンリーだった日本人にとっては驚きですが、「皿を洗うときに紙で拭くのと水で洗うのと、どちらが衛生的だと思うか」と言われてみれば、たしかにわかる気もします。
【伝統スタイルの便器】
基本的には洋式トイレが多いですが、和式のような見た目をした伝統的なトイレも存在します。
これは日本人にとっても馴染み深いスタイルですが、しゃがむ方向が日本とは逆です。
日本の和式トイレとは異なり、入ってきたドアの方を向いて座ります。
なぜ?
私もはっきりとした理由を聞いたことがないのですが、扉の方を向くことで、的(便器穴)に直接落とすか、少なくとも的に近づけることができるからではないかと考えています。
これは、水量や水圧が不安定な場所のトイレに行くときには極めて重要なことで、「流さないままトイレを後にする」という最悪の事態を回避するためにも覚えておきたいTipsです。
ちなみに、このスタイルのトイレにもハンドシャワーはついています。
(↑日本の和式トイレに比べて平面的である。スクワット式ともいう。
https://www.amazon.sa/-/en/Toilet-Arabic-Yoser-Casavia-Ceramic/dp/B081VHPLBD)
【ビジネスチャンス……?】
アラブには手動ウォシュレットとでも言うべきハンドシャワーが既に存在している。
ただ、日本のウォシュレットは有名セレブも惚れ込むなど海外での評価が高い。
手を使わずに洗えるし、水も飛び散らないので、便利で衛生的。
アラブでもきっとウケるだろうと紹介したことがありますが、さほど目ぼしい反応はありませんでした。
この連載では何度か「常識が違うところでは思いがけないものがウケる」と書かせていただいていますが、逆に「ウケると思っていたのに全然思ったような手応えがない」というケースもあります。
トイレがその例でした。
後編へ続きます。
この記事を書いた人
大西 啓介(おおにし けいすけ)
大阪外国語大学(現・大阪大学)卒業。在学中はスペイン語専攻。
サウジアラビアやパキスタンといった、どちらかと言えばイスラム感の濃い地域への出張が多い。
ビビりながらイスラム圏ビジネスの世界に足を踏み入れるも、現地の人間と文化の面白さにすっかりやられてしまった。
海外進出を考える企業へは、現地コネクションを用いた一次情報の獲得・提供、および市場参入のアドバイスを行っている。
現在はおもに日本製品の輸出販売を行っているが、そろそろ輸入も本格的に始めたい。大阪在住。
写真はサウジアラビアのカフェにて。
1件のコメントがあります
トイレの方法が意外すぎる